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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第1回 宇宙に触れたくて手を伸ばしてみた

2015.01.21 更新

私は北海道の広大な大地で宇宙開発をしています。宇宙開発と聞くと国家事業で大規模なものを想像しますよね。膨大な費用がかかり、優秀で選ばれた人間だけが携われるものと思われていますが、私の宇宙開発は違います。たった一人から始まった、個人による宇宙開発です。設計から開発、実験器具の制作から打上・運営まで、すべて一人。資金だって個人です。企業から大金をもらって運営しているのではありません。独力で宇宙開発ができるということは、よほどの大富豪なのでは? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、まったくもってそんなことはありません。出身も裕福でもありませんし、むしろ貧しい部類です。そんな私が、どのようにして宇宙開発を可能にしたのでしょうか。
皆さん、こんな疑問を抱いたことはありませんか?

「空に飛ばした風船はどこまで上がるのだろう?」

私たちが普段手にする大きさの風船は、空に放つとおおよそ富士山程度の高さまで上昇したあと、破裂して落下してきます。あの小さな風船が随分と高く上がるものだな、と意外に思われませんか? でも本当です。より大きな風船を飛ばせば高くまで上げることができるようになります。では、もっともっと大きい風船を飛ばしたらどうでしょう?
そうです。私の宇宙開発は風船によって実現されているのです。とてつもなく巨大な風船を空に放つと、なんと上空30000mより遥かに高い高度まで上昇していきます。

こんなに大きな風船を使用しています

こんなに大きな風船を使用しています

そこは空気のない、ほぼ真空の世界です。私たちの住む地上とはまったく違う世界です。そこでは昼間でも肉眼で星々が見え、水は常温で沸騰し、凍っていきます。人間はもちろん宇宙服を着ていないと死んでしまいます。見下ろすと地球が丸く見える、そんな場所です。ここでJAXAやNASAも超巨大な高高度気球による宇宙開発を行っています。それを私も行っているのです。私の宇宙開発は、恐らく世界一小さい宇宙開発でしょう。
私は大学在学中から研究と実験を繰り返し、数年の歳月をかけ、風船を使った宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を確立しました。風船を使った宇宙開発を日本で初めて成功させた個人でもあります。昨今でこそ高高度気球による宇宙開発や宇宙撮影の知名度が上がってきましたが、私が初めた頃はまったくと言っていい程知られていませんでした。
誰も知らないこと、誰も実現していないことへの挑戦でしたので周囲の人々から一切の理解を得られませんでした。風当りは強かったです。周囲の人々は口をそろえて言いました。「そんなことをして何になるの?」「時間も労力もお金もかかって、しかも得るものもないんじゃないの?」「誰もやっていないのだから無理に決まっている」
そんなことを言われながら、実際に私は何度も失敗を繰り返しました。けれど、失敗は悪いものではありません。なぜなら、新しい事を沢山教えてくれるからです。失敗のたびに新しい実験器具や装置を作り、様々な発明品を考案し、改良を繰り返すことで困難を乗り越えようとしてきました。個人の限られた資金の中で挑戦をするのですから、大変な道のりでした。すべてがゼロからの挑戦だったのです。
そうして個人による宇宙開発は実現されました。私が信じてやり続けた風船を使った宇宙開発によって、もはや宇宙は一部の国家やお金持ちのものではなくなりました。誰でも宇宙に触れることができるのです。夏休みの自由研究で宇宙開発をするという日もそれほど遠くないでしょう。
『ふうせん宇宙撮影』は、風船をつかった超高高度からの地球と宇宙の観測です。普段私たちが入ることのできない世界から地球を見ることで、科学と自然の本来の形を教えてくれます。そして、ロケットや宇宙船とはまた違う宇宙開発です。そのため、私たちが宇宙の常識と思っている事実が、実は大きな誤解であるということを教えてくれます。
風船を通して、私たちが触れられるようになった宇宙、身近な宇宙、自然の不思議な世界のお話をしていきたいな、と思っています。
私は子供のころから自然や理科が大好きで、そのまま大人になりました。科学を学び、科学の世界で育ってきました。そんな私が、『ふうせん宇宙撮影』の挑戦を通して、科学とは何か、自然とは何であるのか、何度も考えさせられるようになりました。
科学はどこから来たのでしょう? 本の中でしょうか? 教科書の知識こそが科学であると習います。しかし、科学は本の中にはないのです。科学は自然を観察し、それを理解するために整理したものです。それゆえ、科学とは自然の中にあるのです。自然の側から科学を捉え直すことで、本来の形を知り、科学への理解をより深めることができるのです。
私はそれを宇宙への挑戦を通して学びました。そんな視点のお話も挟んでいきたいですね。
宇宙と、地球と、科学の不思議な真実のお話を連載していきます。どうぞお楽しみに。

※ 連載内容で数値のミスや誤解を招くような表現がありましたら、訂正いたしますので、ぜひとも教えて頂けると嬉しいです。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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