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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第5回 空はどこから宇宙になるの?

2015.03.12 更新

私たちは空の下で暮らしています。そして空の上に宇宙があるのは、現代では誰もが知る事実です。
空の上に宇宙があるということは、どこかの高さで空から宇宙に変わるということですよね。

では、ここで問題です! 宇宙は高度何キロメートルからでしょう?
1.10,000km
2.100km
3.80km

わかりましたか?

答えを発表しましょう! 
正解は、1・2・3全部です。「そんなばかな!」「問題になっていないじゃないか!」「地球も宇宙の一部だから高度何キロメートルでも宇宙ということ?」などの感想をいただけるかもしれません。
でもどれも正解なんです。
それぞれ解説させてください。

1.10,000km 地球大気の限界からを宇宙とする
地球の大気は高さによって性質が違うので、高さごとにいくつかの層に分けられています。地球大気の一番外側の層のことを外気圏と言います。緯度や大気の状態によって高度は変化しますが、高度800~10,000kmが外気圏と呼ばれています。そして、外気圏のさらに外側、10,000kmより先を宇宙空間と呼んでいます。ここまでくると地球の大気も非常に少なくなりますが、存在はしています。ちなみに、国際宇宙ステーションは高度400kmほどの高さを飛んでいるので、この考えだと国際宇宙ステーションは地球の大気の中にあることになります。

2.100km 宇宙と地球の境界線カーマンライン
高度100kmでは地球の大気を構成する分子(窒素、酸素など)がほとんどありません。そのため、大気による影響をほぼ受けない空間となります。地球圏内ではありますが、実態としては宇宙とほとんど変わらないのですね。
そこで国際航空連盟という組織が、カーマンラインという境界線を定義しました。宇宙開発においては、カーマラインを超えるかが宇宙飛行とする目安であり、JAXAやNASAも100kmから上空を宇宙としています。

3.80km 米国空軍の定義
アメリカ空軍も宇宙開発を行っていますが、アメリカ空軍では高度80kmから上空を宇宙と定義しています。地球大気の層でいうと、高度80kmまでは中間圏という場所で、そこから先、熱圏より上を宇宙と定義しているのですね。

5回目 1

3つとも正解では、明確な答えが出ないままなので、モヤモヤしますね。
このモヤモヤの原因は、地上から上空に向かうにつれ空気が徐々に薄くなっていくことにあるのです。
例えば、下の図を見て下さい。

5回目 2
白                                             黒

左側が白で、右側が黒です。グレーとすることが許されない場合、どこまでを白と呼び、どこからを黒と呼びますか? 白と黒とを分けるためには、どこかに「えいやっ!」と線を引かなくてはなりません。人によって、線の位置はまちまちになることでしょう。

「海と空の境界線はどこでしょう」という質問には明確な答えを出すことができます。液体の塩水があるところが海で、ない場所が空です。

しかし宇宙がどこからかというは、上図のグラデーションと全く同じなのです。どこまでも空気があるけれど、それはどんどん薄くなっていく。明確な境界線はありませんが、宇宙と地球大気のどちらかに決めなくてはならないので、人間が勝手に決めてしまっているのですね。
そういうわけで、3つの答えの説明の際、「呼んでいる」「定義している」という言葉で説明していたのです。
どこに線を引くのかは、その線を引く人の立場によって異なります。例えば地球大気の研究をしている学者さんであれば、高度10,000kmから先を宇宙とするでしょう。宇宙開発をしている学者さんにとっては、わずかに大気が存在していても、その大気によって空気抵抗などの問題が発生しないのであれば、空気は無いものとして扱っても問題ありません。それは宇宙と同義なのですから、100kmから先を宇宙と定義するのです。
ちなみに、人の目で宇宙の景色を見ることができる高さは30km以上になってからです。30kmまで上昇すればほとんど空気がありませんので、真っ暗になり、昼間でも星が見え、地球の輪郭や丸みも感じることもできます。
誰もが宇宙に行けるようになり、誰もが宇宙から景色を見られるようになったら、一体どのあたりの高さから宇宙と言われるようになるのでしょうね。

上空30㎞バルーンから撮影した宇宙と地球

上空30㎞バルーンから撮影した宇宙と地球

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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