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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

手を伸ばせば届く宇宙の話 ブック・カバー
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第16回 生命、地球、そして宇宙の繋がり

2016.03.08 更新

突然ですが、昨日は何を食べましたか?
ゆで卵? 牛丼? ハンバーグ? 寒い時期ですからお鍋でしょうか。
今回は食事を通して、生命と地球と宇宙の繋がりについてお話ししたいと思います。

私たちは毎日ご飯を食べます。食べない日もあるかもしれませんが、一カ月間何も口にしなければ死んでしまうように体ができています。
人間が一生を終えるまでに摂取する食料の量は50,000kg、そして水分の量は60,000kgと言われています。合計して110,000kg、つまり110tもの物質が体を通過しているのです。
ちなみにとても大きな旅客機の総重量が110tです。わずか60kg程度の人間が生涯飲み食いする量が旅客機1台分と同じと考えると、驚異的ではありませんか?
私たち生物は、体の外から物質を取り入れ、新たな組織を作り、古いものを廃棄し、外の物質とうちの物質を交換し続けることで、体を維持しています。普段の生活をしていると意識することはありませんが、私たちの体を構成する物質はわずか数年ですべて入れ替わってしまいます。これはとても不思議なことです。
自分は自分だと信じて毎日学校に行き、会社に行き、仲間たちと行動していますが、自分が自分だと、そして仲間があなただと認めているだけで、体を作る物質は全く別の物に入れ替わっているのですから。
体を作る細胞は時間が経つと劣化して死んでいくので、大量の物質を取り入れることで、体の外に出していきます。垢だったり、排泄物だったり、吐息の中の水分など色々な形になって体から離れて外の世界に戻ります。

今、世界には70億人が住んでいるそうです。仮にそれぞれが110tもの排泄物を出していたら、地球は排泄物の星になってしまうのではないかと心配になるかもしれません。
しかし、生物が出したものは別の生物の養分になり、分解され、その生物が死んだり食べられたりすることで再び自らの元に戻ってきます。このように、生命は地球と自然と切り離すことのできない密着な関係にあります。
実は私たちは死ぬまで、そして死んでからも、地球とつながっているのです。死んでからのことは目に見えないので、何とも想像しにくいことです。しかし、これは宗教的な話でもなく、オカルトの話でもありません。科学のお話なのです。

仮に私が死んだとしましょう。日本では火葬することが多いので、私も火葬されたとしましょう。
人ひとりの体を焼却することで放出される原子の数は、1兆の1兆倍以上の数です。そして放出される分子は主に二酸化炭素や水蒸気、二酸化窒素です。これらは地球の大気中に放出され、拡散されて地球を巡ります。
これらが地球全体にまんべんなく散りばめられたとしたら、朝飲むコップ1杯の水のうち、約240万個は私の出身の水分子ということになります。この約240万個というのは特定のコップ1杯だけではなく、世界中のコップ1杯にまんべんなく約240万個なのです。
コップの水だけではありません。世界中どこの海の水をすくっても、池や沼の水をすくっても、約240万個の私出身の水分子があります。
もちろん、水分子を作る水素原子や酸素原子は世界中どこにあっても違いはありませんし目じるしをつけることもできませんから、適当に検査した原子が、私出身かもしくは別の人出身かの区別をつけることはできません。そして水分子はどんな由来があろうとも、性質になんの違いもありません。ですから、誰出身の原子だろうと、水分子に変わりはないのです。
一例として水分子だけに注目しましたが、体を構成するほかの原子も、水分子と同じく自然界に拡散して溶け込んでいきます。二酸化炭素になった原子は植物や海洋に吸収され、食物や藻類になり、酸素に変換されて、生物の代謝に利用されることでしょう。その他の元素も同様です。

生きていても死んでいても、私たちを形作る原子は地球中を回り続けています。この循環は今日までずっと行われてきました。
コップ1杯の水の中には、数億年前に死に絶えた、とある1匹の恐竜が飲んでいた水に含まれていた原子が、何千万個も含まれています。コップ1杯の水の中には、1匹のマンモスの体から放出された原子も、縄文人や私たちの先祖の体だったものも数千万個含まれているのです。
それら原子は再び私たちの体になったり、稲になったり、鳥になったり、雲になったりして地球の中を循環し続けています。これまで数十億年、そして、これから数十億年、そして地球が消滅するまで地球上をずっと循環します。

私たちは自分自身で自分と外の世界を分けていますが、物質の循環の視点から見てみると、外の世界と自分自身は連続していて、繫がっています。
生命はちょうど川に似ています。誰が見ても隅田川は隅田川ですが、昨日流れていた水と今日の水は異なります。川も生命も、地球上をめぐる物質が流れているという意味でそっくりなのです。
生命は存在することそのものが地球の一部なのです。そして、それを構成するすべては過去と未来に繫がり、受け継がれ続けます。生命そして宇宙の本質はもしかすると、この”繫がり”なのかもしれません。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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