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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

手を伸ばせば届く宇宙の話 ブック・カバー
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第15回 星々の子供たち

2016.02.11 更新

最近、理化学研究所が113番目の新しい原子(元素)を発見して話題になりましたね。
しかし原子ってなんでしょう。名前は知っていても、それを見たことがある人は稀なのではないでしょうか。
原子とは、物質の元となる、とてもとても小さな粒子です。世界中のすべての物質は、この原子でできています。スマートフォンも車も猫も、雲も太陽も、すべて原子でできているのです。
原子はとても小さいので、見るためにはものすごく拡大することができるルーペが必要です。それには、虫眼鏡では無理です。理科の実験で細胞を見た顕微鏡でも足りません。原子を見るためには、電子顕微鏡という特殊な顕微鏡が必要です。

地球上にはいろいろな元素があります。
水素や酸素、金(ゴールド)という身近なものから、フェルミウムやサマリウムという聞き慣れないものまで様々です。今のところ110種類以上の元素が発見されています。
原子はさらに小さな粒が集まって構成されています。電子と陽子と中性子です。すべての原子はこの3つの粒が集まってできています。粒の数が多かったり少なかったりすることで、違う原子になるのです。

15回目1

ホットケーキミックスと卵でホットケーキを作れます。また、みりんと醬油と砂糖と豚肉で豚丼を作れます。私たちの身の回りにある物は、いくつかを組み合わせることで、別の物を作り出すことができます。原子も同じことなのです。

金はとても貴重な金属で、人類を何千年も魅了してきました。古来より人は、新しい物を組み合わせて、人の手で金を作れないかと考えていたようです。中世ヨーロッパでは、金を作り出そうという試み、いわゆる錬金術という行為が貴族の間で大いに流行りました。万有引力の法則で有名なかのアイザック・ニュートンも錬金術に没頭していたそうです。錬金術は長きにわたり行われ続けましたが、結局金を作り出すことに成功した人は一人もいませんでした。
彼らの努力が足りなかったわけではなく、それには理由があるのです。原子と原子をくっつけ合わせて別の原子を作ることができません(※ 極めて特殊な環境でのみ可能 後述)。これは原子の基本的な性質です。中世の錬金術師たちは原子自体知りませんでしたし、その性質も当然知りませんでした。それゆえ錬金術は失敗に終わったのです。
ただし、錬金術師の名誉のため付け加えておくと、金を生み出すことはできませんでしたが、錬金術の試み自体すべてが徒労だったわけではありません。錬金術で試行錯誤したおかげで、さまざまな装置や化学実験の手法が発明されました。錬金術によって培われた知識は、後の科学の発展に大きく寄与し、お蔭で現在の科学技術があります。

話を原子に戻しましょう。
原子をくっつけ合わせて作ることはできません。しかしながら、世界には酸素や窒素など様々な原子があります。これは少し考えると不思議なことです。くっついて新しいものになるという性質をもたないのに、なぜこんなにたくさんの種類があるのでしょうか?

それにはわかりやすく、こう考えてみます。突然ですが、あなたは今日、水を飲みましたか? 人間の体の50%から70%は水分でできていて、人間は毎日なにかしらの形で水を摂取しています。水は液体ですが、これも例外ではなく原子からできています。水は水分子というものの集合体です。分子とは、何個かの原子が集まってできたものです。ですから、分子は何個かの原子に分けることができるのです。
化学記号で水を記すと、H_2 Oです。Hは水素原子を示し、小さな数字の2は、Hが2個含まれることを示しています。Oは酸素原子です。つまり水分子は3個の原子が集まってできているということがわかりますね。

15回目2

水分子に含まれる水素原子と酸素原子。これらの原子は、いったいいつ生まれたのでしょうか? これを語るためには、大分時間をさかのぼらなくてはなりません。

酸素原子の起源は、太陽が生まれる前までさかのぼります。
私たちが毎日見ている太陽は、ずっと昔から存在しています。人類が生まれるずっと前、恐竜の暮らしていた時代よりずっと前、地球が生まれるよりさらに前から存在しています。太陽は今47億歳ほどです。それより昔に太陽は存在しませんでした。
太陽が存在する前、太陽ではない別の大きな恒星(こうせい)がありました。その星は数十億年存在していたのですが、寿命が尽き、超新星爆発という大爆発を起こして星そのものが爆散し、消えてなくなりました。太陽はその星くずが集まって出来たのです。太陽系にある酸素原子は、太陽の元となった過去の大きな恒星の内部で何億年もかけて作られました。
太陽も同様ですが、恒星の内部では核融合反応が起こっています。先に「原子はくっつけ合わせられない」とお話ししましたが、恒星の内部などの超高温超高圧という特殊な環境だけは例外なのです。恒星の内部は、超重力によって高圧・高温になり、原子同士がくっつき合う核融合反応を起こし別の原子に変えることで、莫大なエネルギーを放出しています。核融合反応こそが太陽が輝いている理由です。
また、酸素だけでなく、鉄や窒素、カルシウムなどの原子のほとんどが恒星の内部で生まれたものです。
水素がどこからやってきたかを説明するためには、もっと歴史をさかのぼらなくてはなりません。さかのぼること138億年、宇宙の誕生後1万分の1秒の頃、水素原子が出来ました。
私たちの身のまわりにある物質を形作る原子。その起源は太陽系の誕生よりはるか昔です。日々の生活は、これら原子の動きに支えられています。私たち生命体や地球や太陽は皆、星々の子供たちなのです。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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