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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第4回 運は数学により制御できる

2015.02.26 更新

「運が悪かった」という言葉があります。
望まない結果が出た時に使う言葉です。

私たちの毎日には“運”が絡んでいます。街に出て事故に遭う確率も一定割合存在しますし、天災によって命を落とす可能性もあります。もしかすると隕石に当たって死んでしまうかもしれません。ですが、運よく生き延びて今日も暮らしているわけです。

私たちは“運”という言葉を、3つの場合について混同して使っているようです。3つそれぞれについて例を挙げましょう。
例1) 大学受験に失敗した
私は大学受験に失敗し浪人しました。浪人中の私は「運が悪かったのだ」と言っていましたが、単に実力が足りなかっただけでした。成績を上げれば合格します。運のせいにしていただけですね。このような場合は、努力によって成功する事が可能です。運は関係ありません。
例2) 宝くじに外れた
宝くじは、一定数ある当たりくじを引けばお金がもらえるものです。これは努力によって当選するかどうか変えることができる性質のものではありません。完全に確率によって結果が決まる事柄です。参拝したから当たったとか、祈祷してもらったから当たったとか、そんな話もありますが、まぁ、科学的ではありません。自然災害に遭遇するか否かもこれと同じでしょう。
例3) 不幸にも交通事故に巻き込まれた
自然災害とは違い、交通事故は努力することで巻き込まれる可能性を下げることができます。例えば、道路を渡るときには左右を確認する、信号無視はしない、制限速度は守る、こういった事柄だけで交通事故に合う確率は下がっていきます。もちろん、なにも考えていなくても事故に遭わないこともありますが、努力によって事故に遭わない確率を確実に上昇させることができる点で例2とは違います。

さて、今回は『運は数学により制御できる』というお話です。この3つの例のうち、数学により制御できるのは、2と3です。1は努力ですから運は関係ありません。

私のおこなっている風船による宇宙撮影も、装置や予測方法の改良により成功率を上げることができますが、どうしても運任せの部分が出てきます。自然の力に大きく左右され、想定外の出来事が起こり得ます。装置の誤作動もあります。また、空に飛ばした風船は必ず地球に戻ってくるので、着陸した先で迷惑をかけてはなりません。これも努力により最小限に抑えることができますが、最終的には運が絡んできます。ですから例3にとても良く似ています。

けれど、運は制御できます。私の宇宙撮影も運が絡み続けてきましたが、すべて制御してきました。テレビの企画などで撮影の協力をする場合、確実に成功させなくてはなりませんが、運を制御することで成功させてきました。そう、運は操作することができるのです。『運悪く』は、単なるマネジメント能力の欠如です。この運の操作は、オカルトでもなんでもありません。数学の話です。

さて、ちょっとした問題を考えてみましょう。

Q あなたはロケット技師です。あなたの作った新型ロケットの打ち上げ成功確率は30%です。しかしこのロケットの打上げを絶対に成功させなくてはなりません。では、どうすればよいでしょうか?

成功率30%と聞くと、随分と確率が低く頼りない印象ですよね。しかしながら、このような低い確率でも成功させる方法があります。きっと皆さんも直感的に答えが分かっているかと思います。その答えは、成功するまで何回も実施する、です。
「成功するまで諦めるな!」というのは、なんとも精神論臭い言葉のように聞こえますが、これは精神論ではなく、数学的には正しい答えです。では、何回実施すれば成功率は何%になるのか、見積もってみましょう。

成功率は以下の式で表すことが出来ます。xは1回実施した時の成功率、nは実施回数です。
math01
今、成功率30%のロケットについて考えていますから、
x=30
です。1回しか実施しない場合、n=1ですから、
math02
です。2回実施した場合にはどうなるでしょうか。n=2とした場合、
math03
となります。では実施回数を増やし10回の時と20回の時を考えてみましょう。n=10ならば、
math04
n=20ならば、
math05
となります。この通り、繰り返すほど、成功できる確率は100%に近くなっていきます。

このように、実施回数を増やすだけで運要素はなくなり、確実なものに変わっていきます。数学的な発想で運は制御することができるのです。運が数学によって制御できるという事実自体は数式で表すことができる普遍的で当然な事実ですがから、この事実自体は重要な事ではありません。重要なのは自らの求めるリターンに対し、どの程度の努力を必要とするか見積もることが出来ることです。
どの程繰り返す必要があり、そのためにコスト(労力・お金・人手等)がどれだけ必要で、それが見合うリターンであるかの見積りが出来るようになります。すると、挑戦する事自体を設計し監理することができるので、成功するまで持続できる体制を作り上げることが出来るのです。これが成功への礎です。

なお、「成功するまで諦めるな!」という言葉は精神論の域を出ません。その答えは先程の確率の式が教えてくれます。身近な例として宝くじを出しましょうか。クジが当たるまで諦めない精神で100万回購入したとしましょう。1等当選する確率は1000 万分のですから、x=0.00001, n=1000000ですから、以下のようになります。
math06
100万回も挑戦して、成功する率はたったの9.5%です。99.9%まで確率を上昇させるためには7000万回挑戦する必要があります。ジャンボ宝くじは年5回実施していますから、ほぼ確実に当選するまでは1400万年程度挑戦し続ければよいことになります。これは土台無理な滑稽なお話です。見積もりのない精神論で実施してしまうと破滅に繋がる恐れもあります。ですので、数学的に運を管理することはとても重要なのです。

神様は運を与えてサイコロを振るようですから、ちょっと意地悪です。けれども、運悪く失敗してしまっても気にすることはありません。成功する確率を冷静に分析し、何度も挑戦してみればいいのです。成功率が低い場合は何度挑戦しても成功しないので、試行回数を増やすか成功確率を上昇させる努力をしましょう。それを繰り返せば必ず成功させることができるのです。運は確かに存在します。これはどうすることもできません。しかし、神様はイカサマまではできません。運は制御できる性質を持っているのです。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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