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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第3回 月が地球にぶつからないのは、なぜ?

2015.02.12 更新

前回(第2回参照)宇宙ステーションが無重力である理由、そして宇宙は無重力ではないというお話をしました。宇宙は無重力ではありませんが、宇宙ステーションの中は無重力ということでしたね。これは重力とちょうど釣り合う遠心力があるからで、その遠心力は宇宙ステーションが速い速度で上空を飛んでいるから生まれているというお話でした。速度が速いと地球から離れていってしまい、遅いと地球に落っこちてきてしまうのです。
月も宇宙ステーションと同じです。月は約1カ月で地球のまわりを一周しています。月の距離は地球からおおよそ380,000km。地球1周が40,000kmですから、随分遠いですね。このくらい遠くに離れていると、地球からの重力もだいぶ小さくなります。宇宙ステーションの高度では地上の89%の重力でしたが、月では0.02%しかありません。たったこれだけしか地球から重力を受けないので、月は1カ月で地球を一周回る速度でも十分な遠心力を得られているのです。地球から受ける重力と月が回ることで生み出される遠心力が釣り合っているので、地球に引き寄せられて落ちてくることはないのですよ。

宇宙ステーションの中は、地球の重力と遠心力が釣り合って無重力になっていますし、月でも地球の重力と遠心力が釣り合っています。
では月の映像を思い浮かべてみましょう。宇宙服を着た人がポンポン飛び跳ねていますよね。実はあの宇宙服は重さ100kg以上あるんです。それを着て飛び跳ねているのですから月の重力って小さいのですね。
先程、宇宙ステーションと月は同じ理屈だと説明しましたが、月にだけ重力がある……これはどういうことでしょうか?

万有引力(ばんゆういんりょく)という言葉があります。これは言葉の通り、『万有=どんなものでも』『引力=引っ張る力』を持っているということです。この万有引力を持つのは、地球や太陽だけではありません。見渡す限りにある、人間、車、炬燵にみかん、そして丸まっている猫にいたるまで、重さのある物体は全て引力を持っているのです。
私達は普段、地球の重力に引っ張られながら生活しています。私達が立って歩いているのは、地球が私達を引っ張っているからです。しかし同時に、ごくごく僅かですが、私達人間も地球を引っ張っています。ただし、その力は非常に小さく、地球の重力の1000垓分の1(垓は京の1000倍、億の1000000倍)しかありません。 けれども確かに引き合っているのです。
それに私達が引っ張っているのは、地球だけではありません。非常に弱い力ですが、人間同士も引き合っています。恋人同士が引き合っているという話もありますが、これは物理学的には正しく、地球の1億分の1程度の引力ですが確かに引き合っています。
引力は、重たい物であればあるほど大きくなっていきます。人間は60kg程度しかないので、とても小さな引力しか持ちません。しかし、地球レベルになると、とてつもない重さですから、大きな引力を持つのです。太陽はもっと重たいので、もっともっと重力が大きくなります。月も同様に天体ですから、とても重たい。ですから、月自身の引力を見て感じることができるというわけです。
話を月の重力に戻します。宇宙ステーションも月も、地球からの引力と遠心力が釣り合っているので、無重力の状態になっているはずですよね。しかし人が立っている。
これは、月は月自身が重力を持っているからなのです。けれども月は地球ほど重くないので小さな重力しか生み出しません。月の持っている重力は地球の約17%です。だから人がポンポン跳ねるのですね。

では、宇宙ステーションはどうなるのでしょうか? それで言えば重力があるはずです。宇宙ステーションも、当然重さを持っています。が、地球や月のような天体と比較すればとても軽いです。もちろん、宇宙ステーション自身が持つ重力もごくごくわずかには存在するのですが、あまりに小さいので、見てもほとんどわかりません。ですから、宇宙ステーションの中では“ほぼ”無重力状態となり、人が空中を漂ってしまうのです。

ちなみに、月は落ちてこないということをお話しましたが、実は落ちるどころかちょっとずつ地球から離れていっています。月の速度は毎年速くなっていて、今は1年に3~4cmずつ離れています。たった3cm4cmか、と思われるかもしれませんが、長い時間の中では結構大事です。
大昔、月はずっと近くにありました。地球が生まれた45億5000万年前、地球は生物も存在しない赤く燃え盛る惑星でした。月が生まれたのもちょうどこのころ。
火星サイズの天体が地球に衝突し、双方から飛び散ったマグマが地球の軌道上で冷え固まり月が誕生したという“ジャイアント・インパクト説”が現在最も有力です。
月が誕生したばかりのころは、今と比べ遥かに近い距離、地球から20,000kmの位置を回っていました。これは19分の1の距離ですから、かなり近いです。当時の空には、今の月の直径19倍、面積にして361倍巨大な月が見えたことでしょう。この時代、地球の1日は4時間でした。
そして長い長い年月をかけて、月は地球から離れていってしまいました。月が離れてしまうことで、地球の自転も除々に遅くなっています。
ちなみに月が遠のくと地球の一日の時間が長くなっていく理由は、地球と月の角運動量の合計が保存されているからなんですよ。
現在は1日24時間です。しかし月がどんどん遠くに離れていくにつれて、地球の1日はどんどん長くなっていきます。数億年後の遠い未来では、1日30時間や40時間になっていることでしょう。そうすれば時間が伸びて、1日でたくさんやりたいことができるようになりますね。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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