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手を伸ばせば届く宇宙の話

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

手を伸ばせば届く宇宙の話 ブック・カバー
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第12回 空や海は膜のようなもの

2015.06.25 更新

子どもの頃に「海」の歌を誰もが一度は歌ったことがあるのではないでしょうか。海は大きいものというのは、誰もが持つ共通認識です。
現実として、とてつもなく大きくて果てしない海は、まだまだ未知の世界。とりわけ深海の探査は強烈な水圧が人間の進出を拒んでいるため、ほとんど進んでおらず、人類未踏の地の方が圧倒的に広いのです。
大空も海と同様に、果てなく大きいものであるというのが、共通認識でしょう。科学技術の進歩により、飛行機によって空を飛びまわることも出来るようになりましたし、空を飛び越え宇宙まで行けるようになりましたが、やはり空は大きく果てしないものです。
人類にとって、とてつもなく広く大きいと信じて疑わない、空と海。今回はその常識を覆してみましょう。

まずは空から。
「空はどこまで?」という疑問に正確に答えるのはなかなか難しいのですが、おおよそ高度25km程度までが空といえるでしょう。なぜ25kmまでを空としたか、その根拠はジェットエンジンで飛べる飛行機の限界高度だからです。ジェットエンジンは空気がないと飛べません。空気のない場所は空ではないと判断し、25kmまでを空としました。
一般的には高度100kmからが宇宙であるといわれています。が、100kmまでが空であるというのは適切ではありません。宇宙と空の境目はありません。空と宇宙の間がどうなっているのか、詳しくは第5回をご参照頂きたいのですが、簡単に言うと、空でも宇宙でもない、ほとんど宇宙の場所です。今回は空についてのお話をしますので、25kmまでを空とします。
さて、25kmという高さ。とても高いのは間違いありません。日本一高い山である富士山が3,776m。富士山頂上ですら人間が高山病になったりする高さですが、空の終わりは富士山の6.6倍近い高さです。
人間にとって高度25kmは果てしなく遠い場所ですが、地球という惑星からの視点で見るとまた違って見えてきます。
地球の半径は6,371km。これは私たちが毎日踏みしめている大地の厚さです。この外側を25kmの空気の層がおおっています。これは具体的にはどのようなものなのか、数字でいわれてもピンときませんね。下図をご覧下さい。

12回目 1

この図の青い膜が私たちが空と呼んでいる空間です。この図は誇張したものはなく、地球の厚みと空の厚みを正確な比で描いたものです。
大空だと私たちが感じていたものは、地球から見たらシャボン玉の膜のようなものにしか過ぎないのです。

続いて大海原。
地球の7割を占める海。私たち人類は残り3割の地表上で生活を送っています。海の中には深い場所も浅い場所もあります。陸の近くは浅く、陸から離れると、途端に深くなります。さらに深い海のことを「深海」といいます。
人間は陸の上に暮らし、陸に近い海にしか触れないので、実感はないのですが、実は海のほとんどが深海です。深海とは水深200m以下の海を指します。なぜ200mを深海としているかというと、200mも水中に潜ると太陽の光が全く届かなくなるからで、深海とは闇の世界なのです。
その深海の中にも、山脈があったり、谷があったりします。海の中にある山脈を海嶺(かいれい)、谷を海溝(かいこう)といいます。
日本の近くには日本海溝、千島海溝、伊豆小笠原海溝と、世界有数の海溝があります。日本海溝の最深部は水面下8,020m。この深さは世界一高いエベレストとほとんど同じです。見えない海の底にはこれほどの谷があるのですから驚きですよね。なお、世界一深い海溝は、グアムの近くにあるマリアナ海溝の最深部チャレンジャー海溝で、10,911mという深さです。
海は深いところも浅いところもあるので、深さを平均してみましょう。海の深さを平均すると、その深度は3,800m。先にも述べた通り、地球の半径は6,371km。再び図にしてみましょう。

12回目 2

空の25kmより海の3.8kmの方が小さな数字ですから、空以上に薄くなります。海は水たまりですらありません。サイズ感はオレンジの表面に塗られたワックス程度でしょうか。地球という惑星からの視点で見ると、海もたったこれだけの存在なのです。しかし、これだけの存在でしかない海で、生命が生まれ、地球を「水の惑星」たらしめているのです。

地球上には数多(あまた)の生き物が暮らしています。その生命活動は地球表面の、極めて薄い膜の中で行われている出来事です。膜の中での物質のやりとりによって、生物も世界も廻っています。空や海、大自然はとてつもなく大きな存在に感じてしまいますが、実は薄い膜の中の出来事であると知ることが、これからの世界のために必要なことなのかもしれませんね。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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