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女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

女って何だ? ブック・カバー
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カレー沢先生、趣味の段階的カミングアウト方法を教えてください!

2018.05.25 更新

カレー沢先生、いつも単行本から二次創作まで著書は全て買わせて頂いています。
さて、今でこそ旦那さんには漫画家である事は勿論、二次元の男性キャラを愛してやまな
い事も完全にバレていると思いますが、お付き合いしたての頃はどの様に段階を踏んでカ
ミングアウトされていったのでしょうか? 私(既婚)も今では完全開示していますが、当初は夫に隠していたので気になりました。これからも応援しています!

古(いにしえ)より「旦那の鉄道模型を勝手に捨てる嫁」や「結婚したら二次元趣味(BLである場合が多い)は止めろと迫る彼氏」というのは、発言小町界のスター選手として常に会場を沸かせてきましたし、この両選手がリングに上がると必ず場外乱闘になって流血沙汰になることでも有名です。

つまり「自分の趣味に理解がないパートナー」というのは、「孫はよ」とせがむ姑級に厄介な存在かつ、終わりのない議論に発展しがち、ということです。

そこで、ご質問の答えですが、夫は私が二次元の男を愛してやまないクソ萌え豚(KMB)であることを知っているとは思います。
しかし私から「実はKMBなんだ」と夫にカミングアウトしたことは一度もありません。

まず「カミングアウト」の意味ですが、ウィキペディアによると「これまで公にしていなかった自らの出生や病状、性的指向等を表明すること」とあります。

「出生や病状、性的指向等」は、めちゃくちゃ
デリケートかつプライバシーの根幹に関わる話です。
つまりそれらは「本人が言いたくなきゃ一生言わなくていい」ことなのです。
よって私がKMBなことも、別に言いたくないから言っていません。
自分がどんな趣味を持っていようが「彼氏には言わなきゃ!」などと思う必要自体ないのです。

ただ、それが「相手に関係があり、重大な影響を及ぼす」場合は、言いたくなくても言う必要があります。
私が夫に言わないのは、私が「ノマカプ厨夢おばさん」であることが夫と夫の生活に一切関係ないからです。
ただし、「毎年冬と夏、何故か作家でもないのに『原稿』を書くため、家事などがおろそかになり、盆と年末、数日家を空ける」という場合は別です。

しかしそこで必要なのは、「許可」を得るための「事情説明」であり、「今年は○○×△△のS字結腸責め本で参戦でごさる」等、性癖の詳細ではありません。

では、私の夫が、なぜカミングアウトされたわけでもないのに、私がKMBであると知っている(と思われる)かと言うと「一緒に生活しているうちに気づいた」からです。

改まって告白はしていませんが、そこまで隠す必要もないと思っているので、へし切長谷部のフィギュアを飾ったり、クローゼットにDB(ドスケベブック)をしこたま貯蔵したりしています。

二次元趣味でなくても、一緒に過ごしていれば、よほど死ぬ気で隠してないかぎりは、相手の趣味嗜好というのは段々わかってくるものです。
つまり、夫は私と生活するうちに「こいつは目玉焼きにしょうゆかけるんだな」と同じノリで「二次元の男が大好きなんだな」と気づいたのです。
そのことについて夫からの言及は全くありません。目玉焼きにしょうゆかけてる奴に「なんでしょうゆかけんの?」と聞いても無意味ですし、まして「ソースをかけろ」と強要するのはモラハラだからです。

よって趣味なんて、かしこまって「実は目玉焼きにしょうゆかけるんだ」と告白しないのと同じように「そのうち気づいてもらう」程度でよいのではないでしょうか。

では冒頭で言った、鉄道模型を無断で捨てる発言小町のスターたちは、全員しょうゆ派のパートナーにヌスラト・ガネーシュばりに問答無用で塩を振る、クレイジーモラハラ野郎かというと、それらの暴挙は「鉄道模型」という「趣味」に対してではなく「その趣味のために働かれた悪行」に対して執行された場合も多くあります。

具体的には、学資保険がキハ82系になっていたとか、コレクションが居住スペースを圧迫し、家族は靴箱に住んでいる、という所業を何度言っても改めない、などが挙げられます。

それらの過程に触れず、「勝手に捨てた」だけを書けば「鬼の所業」となってしまいますが、鬼になるだけの理由がある場合もあるのです。

趣味は許される、というか、そもそも他人に許してもらうようなものでもないですが、それを「趣味に、金、時間、場所、全てを自由に使うことが許されている」と勘違いすると、趣味自体にはノータッチだったパートナーを鬼に変えてしまうことがあります。

つまり、私はこれからも夫に何の説明もなく、二次元の男のケツを追いますし、もし「いい年して立体感のない男のことで騒ぐな」と言われたら「なんだァ? てめェ…」と瞬時に愚地独歩(おろち どっぽ)の顔になり「カレー沢、キレた!!」とキャプションがつくところですが、「あなたのDB(ドスケベブック)で部屋が狭い」と言われたら襟を正す必要があると思っています。

女0525

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

作品概要

女の敵は女!……なのか? 嫁姑、毒母、ママ友やマウンティングと、ややこしい女の世界。「女だけど女が苦手」はどうして起きるのだろう? 女同士が傷つけず傷つかない関係性は築けないのか? コミュ障のカレー沢薫が本気で考える、女ってなんだろう?

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