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女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、DB(ドスケベブック)の隠し方を教えてください!

2018.05.11 更新

中学1年生と小学4年生の息子がいるのですが、最近DB(ドスケベブック)の隠し場所に困っています。もちろんBLです。

一見ただのおもしろクエスチョンに見えますが、これはとても重要な話です。
私もこのお悩みを見て、強い衝撃を受け、そして猛省をいたしました。

何故なら「DB(ドスケベブック)を家族に発見される」と聞いたら、多くの人間が「思春期の息子が隠したエロ本をお母さんが発見する」という構図を想像するでしょう。
少なくとも私はそうでした。
ここで、娘を想像する人は息子よりは少数派でしょうし、まして「お母さんのDBを息子が発見する」というのを瞬時に想像するのは、息子にDBを発見されたことがあるお母さん以外いないのでは、とさえ思えます。

しかし、それこそが、ジェンダーによる偏見、何より「お母さんと言えど、一人の人間」ということを無視している、ということに気付きました。

特に日本は、家庭においてお母さんにお母さんであることしか認めず、夫や子供に尽くし、犠牲となる悲しきマシーンであることを要求しがちです。
そう言った現状に、私はお母さんでもないのに怒って、お母さんだって人間だよ、と言って来たのですが、「BLDB(ボーイズラブドスケベブック)を息子に見つけられたらどうしよう」と悩んでいるお母さんがいる、という発想がなかった時点で、「お母さんはお母さんなんだからDBなんか持っているはずない、お母さんはいつでもDBを発見する側だよ」と、母親に聖母マリアであることを要求していたということになります。

ドスケベブックぐらい持ってたっていいじゃない、人間だもの。

みつをはそんなことは言っていませんが、お母さんだって、ミミズだってオケラだってみんなみんな持っていて良いのです。

よって「息子のためにBL趣味を止める」などという自己犠牲的なことは考えなくていいでしょう。
しかし「堂々としろ」と言うわけでもありません、「俺は堂々と行く!」とレディ・プレーヤー1みたいな方針で行きたい、と自分が思っていても、性的なものは、家族間でなくても、目につかないところに置くのがエチケットです。
よって、今まで通り隠した方がいいですし、どうしても見つかりたくない場合は、貸倉庫やアパートを一室、BL小屋として借りるぐらいの徹底が必要です。

自宅に隠すというのなら、もう「見つかる覚悟」が必要となります。
子どもが「親はネットに疎いから大丈夫だろう」と思っていても、親は子どもの裏アカやポエムアカまで押さえているのと同じように、子どもだって親がどう隠しても、いつか見つけてしまうものです。

問題は見つかってしまった場合どうするかです。
もし、息子さんが母のBLDBを見つけても何も言わず、見て見ぬふりをしていてくれたなら「人の知られたくない秘密を知っても、そっとしておく」ということを学んでいる、ということです。素直に息子さんの成長を喜びましょう。

「そっとする」「何も言わない」というのは、「俺様は偏見とかないんで、お前の性癖とか認めてやるから安心してカミングアウトしろよ!さあ!」という上から目線より、よほど優しい行為です。息子さんは優しい子に育っているので、ここはひとつその優しさに甘えて「バレてない体」「上手く隠しているつもり」でこれからもBLDBをコレクトするといいでしょう。

もしここで「お母さんがこんな本持ってるなんておかしい」「気持ち悪い」などと言われてしまったら、辛いかもしれませんが、「再教育のチャンス」と思いましょう。

「気持ち悪い」など、趣味を否定されることを言われたら、「人に迷惑をかけていない人様の趣向を否定する権利は誰にもない」「自分が受け入れられないものを見てしまった時の正しい行動は『攻撃』ではない『無視』だ」とあなたと息子さんの間にBLDBを置いて滾々(こんこん)と説きましょう。

そして「お母さんのくせにDBを読んでるなんておかしい」という話をしてきたら、まずBLDBの攻めになった気持ちで、息子さんを壁ドンした後「読むんだよ」と森川智之の声で言いましょう。

もしそういうことを言うようであれば、残念ながら息子さんはまだお母さんを「お母さんという生き物」と思っているということです。
そのままだと、将来自分の嫁にも「お母さん」や「妻」という生き物であることを強要してしまう男になりかねません。それは母として親として現段階で食い止めるべきです。

「お母さんという生き物はいない。ただの、BLDB好きの一人の人間の女が、お母さんという役目もやっているにすぎないのだ」と教えましょう。

つまり、教育の正念場です。
いっそあえて、息子さんを偏見のない男にするためにも「うっかり」を装って食卓にBLDBを置いてもいいかもしれません。

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

作品概要

女の敵は女!……なのか? 嫁姑、毒母、ママ友やマウンティングと、ややこしい女の世界。「女だけど女が苦手」はどうして起きるのだろう? 女同士が傷つけず傷つかない関係性は築けないのか? コミュ障のカレー沢薫が本気で考える、女ってなんだろう?

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