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女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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第37回

2018.01.12 更新

このコラムも残すところあと2回だ。

私がそう言うと、全て打ち切りに聞こえてしまうが予定通りの終了だし、私の知る限りでは死者も出なかった。

そんなわけで、ラスト2回はこれまでの連載を振り返ってみよう。特に振り返りたくはないが、お前の人生を振り返れと言われるよりはマシなので消去法で振り返る。

前半は「○○女」というテーマで色々な「女」を紹介してきた。
この「○○女」というのは、今も増え続けており、毎年何かしら新種の「○○系女子」が発見されている。
まるで星のようと言いたいが、実際は深海魚みたいなものである。

世間はこの「○○系女子」という言葉を、ウザい女の自己主張と思うかもしれないが、そもそも「○○系女子」という言葉を作るのは世間である。本家は絶対に自分で「うちらオオグソク系女子!」とか言っていないのだ。

突然、メディアなどの世間に深海から引っ張りあげられ「よし、お前は今日からオオグソクムシだ」と言われたようなものなのだ。
だから深海魚と同じなのである。
そしてメディアが「今はオオグソク系女子がキテる」「もはや深海はオオグソクでいっぱい」「オオグソクガールファッション」とか報道し、アンテナが立っている、もしくはどこにも向かってない系女子が群がる。
結局「深海が、オオグソク女とかいうニワカでうぜー」と世間に言われてしまっているというありさまなのだ。

ようするに○○ガールや○○系女子という言葉が出て以来、日本は女をカテゴライズしないと沈没する病気に罹ったとみえる。

ただ本当に好きなものの話をしただけなのに「はいはい流行りの〇〇系女子ね」みたいな雑なくくりにされるのは遺憾である。
しかし、雑にまとめて、〇〇系になるための商品を売ろうとするメディアは置いておいて、そういったものを目指そうとする女が悪いかというとそうではない。

前半紹介した「〇〇女」は二つに分かれる。
何も意識してなかったら自然にそうなった女と、そうなろうとして、そうなった、というか、そう見えるように振る舞っている女である。

例えば、気づいたら干物女になっていたという女はいても、物心ついた時にはキラキラだったという玉虫みたいな女はそうそういないはずだ。
ただ天然ものの玉虫に誰かが「キラキラ女子」と名前を付け、その姿を真似するものが出てきた、ということだろう。

そして「○○女」というのは、割と反復横飛びだというのも、この連載をやってわかったことだ。
干物女が、これじゃダメだと思い、キラキラを目指したり、キラキラに疲れた女が干物になったり、やっぱり個性だと思ってサブカルに行ったりと、行ったり来たりなのである。
最終的に「ありのままの自分」とかなったりするが、そのありのまま思想だって、何かの模倣ではないか、と聞かれたら、遠くから松たか子の歌声が聞こえてきたりする。

私も、他とは違う個性的な人間になりたいと思った時期があった。
しかし、それでどうしたかというと、我々世代に良くも悪くも傷跡を残した伝説の雑誌「KERA」を買ってきた。
全然「他と違う自分」ではない、「KERA」に載っているような感じになりたかったのだ。

しかし、それの何が悪い、という話だ。
我々が、傍から見れば地獄の反復横飛びをしているのは、少なくとも今の自分より好きな自分になりたいからだ。

そもそも模倣というのは憧れだ。憧れというのは文化を発展、そして停滞させないために必要不可欠なものである。サッカー選手に憧れた少年が、次のさらに偉大なサッカー選手になっていくのだし、誰もアイドルに憧れなかったら、アイドルを目指す女子はいなくなり、今頃テレビに出ているアイドルは全員AKB60(年齢的な意味で)である。

つまり、俺様たちがこりもせず、今より素敵な自分になろうと自己啓発本を買ったりすることにより、経済どころか文化が発展していると言っても過言ではないのではないだろうか。

しかし、もちろん、永遠に同じ「○○女」に留まる女もいる。それが、文化を衰退させる悪しき存在かというと、そうではない。
ずっといるのは、それが合う場所だからだ。今、自分探しをしている女でも、合う場所を見つければそうなるだろう。
ただ、生まれながらにそこにいたものは良いが、探さなければ行けない者もいるということだ。傍から見れば滑稽かもしれないが、そういう奴ほど、小2のころ着てたパジャマを着て「これがぴったりなんだ」と言い張っているだけだったりする。

何でもかんでもカテゴライズしないでくれ、とも言える「○○女」だがモデルケース、指針が多く示されている世の中とも言える。

むしろ地図なき自分探しが、その後なんと言われるかというと「黒歴史」である。

女37

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著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

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