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女って何だ?

カレー沢薫

女って何だ? ブック・カバー
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第6回

2016.09.29 更新

○○系女子って言うほど種類ねえから、次はおキャット様とからあげの話をする、と言ったところ、担当から大量の○○系女子の資料が送られてきたのが約二週間前のことである。言うほどいたのだ。

しかし多くの○○系女子と、その説明を見てわかったことは、どれも全部肯定的な意味では使われていないということだ、むしろ「○○系女子」という言葉自体が半分悪口なのである。
おそらく、女が自己改革する時、最初から「私は○○系女子になる」と思ってやりはじめる奴は少ないはずだ。なりたい自分になる、少しでも自分を好きになりたい、そんな女のやる気が「○○系」でカテゴライズされ、その特徴、痛さを箇条書きにされてしまうのだ。
向上心が「痛い」「必死過ぎ」と言われてしまうのも、女の生きづらさの一つではないだろうか。

前置きが長くなったが、今回のテーマは「キラキラ系女子」だ。
「君をイラつかせるために 僕は生まれてきたんだ」と思わず最近解散を発表したグループの歌調で言いたくなるパワーワードだ。

しかし、このキラキラ系女子に関しては、イラッとするのは確かだが、そこまで腹は立たず、逆に半分は尊敬が入ってしまうのも事実だ。

まず私の周りにキラキラ系女子はいない、皆無だ。
まず地方にそれはいないのである、むしろ私が住んでいるような田舎では、キラキラしようとすればするほど「蛾」っぽさがでる。
つまりキラキラ女子になりたいなら「一刻も早くここを脱出する」のが急務なのだ。

なぜなら担当から送られてきた「キラキラ女子の特徴」にはこう書かれている。

【仕事も私生活も充実している(お嬢様系の女子大、都内私立大を出て、アメーバ、サマンサタバサなどに勤務)】

やはりキラキラ系といえばサマンサタバサらしい。確かにバイオゴリラがよく粉砕しているのもサマンサタバサのポーチだ。
念のため調べてみたが、わが県にはサマンサタバサの店舗はゼロである。勤務はおろか、買い物すらできないのだ。
車で三時間かけて隣県のパルコにあるサマンサタバサで買い物している女はキラキラじゃないだろうし、バイオゴリラもそんな女のポーチは粉砕しないはずである。

私がキラキラ系女子にあんまり腹が立たないのは、このようにあまりにも遠い存在だからだ。
近所の小金持ちの家に停まっているレクサスはストⅡのボーナスステージばりに破壊したくても、どこかの石油王が持ってる自家用ジェットは爆破する気にならないのと同じである。
私がバイオゴリラなら、サマンサタバサのポーチより、オタサーの姫が被っているアンクルージュのベレー帽を粉砕する。

他にもキラキラ系女子の特徴は、【朝ヨガをして髪を巻いて出社。広報やマーケティングなどの華やかな仕事をし、チームでやる仕事が得意。夜は女子会や、「パーティガール」と称して人の集まりに出没、その様子をSNSに載せることも忘れず、もちろん自撮りも得意、変顔にもキメがあり、自分を可愛いと思っている変顔だと仲間はずれにされるので、変顔は思い切りやる】そうである。

すげえなお前、としか思えない。妬ましいという感情よりも、無理だ、疲れそうという感想のほうが先に出てくる。

その名の通り、キラキラするには電力がいるのだ、並の女がキラキラしようとしたら、三日で電池が切れて、本屋で「スローな生き方」みたいな自己啓発本を山ほど買い込むに決まっている。

私は自らのことをキラキラ系女子の対極として「消灯おばさん」と自称したことがある。暗いところから出なければ、だらしない自分を人目にさらすこともないし、自分も自分の姿を見ずに済む、光というのはもはや恐怖でしかないのだ。
そういうタイプは、めったに明かりをつけないうえに、豆電球、電池は単四なので、キラキラ系女子と同じようなことをさせると、一瞬で電池切れどころか、電球自体が爆発四散して、二度と明かりがつかなくなる。
どちらが女として偉いかは一目瞭然であり、キラキラ系女子の電池は強力な充電式なうえ、LEDなのである。

しかし我々が一番目にする「SNS上のキラキラ系女子」というのは実は本物のキラキラ系ではない場合も多いそうだ。リアルの世界で本当に輝いているなら、わざわざネットで、自己顕示欲を満たしたりマウンティングをする必要はないからだそうだ。
確かに、ネットというのは自分を演出しやすい場である。意識が高い、思慮の深い人だと思われたかったらツイッターなどで「深そうで深くない、何か言ってそうでやっぱり何も言ってない」ラー油みたいな発言をしていれば、それとなくそう見えるものである。
よって、私もツイッターだけならキラキラ系女子になれるのかもしれない。
まずは車で3時間かけサマンサタバサのポーチを買い、それをバイオゴリラに破壊されたのち、パーティに出席する。ちなみにパーティとはどこの公民館でやっているのだろうか? はたまた商工会議所であろうか?

やはりSNS上だけでもキラキラするのは楽ではない。本物だろうが、なんちゃってだろうが、キラキラ系女子は偉い。

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著者プロフィール

カレー沢薫

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

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