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女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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第5回

2016.09.14 更新

今回のテーマは「サブカル系」である。
この「○○系女シリーズ」思った以上にバリエーションがなく、すでに次回書くことがない。よって次は、彗星のごとく現れ、一瞬でスターダストになった「マシュマロ系女子」の話を「黙れデブ」の一行で終わらせ、あとは満を持しておキャット様とからあげの話をしたいと思う。

そうと決まれば、もう今回はここで終わって、早く次回の原稿が書きたい。そもそもみんな、サブカル女の話など聞きたくないだろう、好きか嫌いかと言われたら嫌いなはずである。
このように、サバサバやゆるふわより、さらに実態がはっきりしないのに、理由もなく好感度が低いのがサブカル系女である。

そもそもサブカル系女とは何か、実は私もよくわかっていない、とりあえず黒髪公然猥褻カットにデカい黒縁メガネ、ヘッドフォンか一眼レフをぶら下げている女、と言う漠然としたイメージしかない。
そこで、このコラムを書くにあたり、改めてサブカル系女がどんなものか調べてみたところ、本当に男性器ヘッドで、ヘッドフォンや一眼レフを首にかけてないとまっすぐ歩けないのがサブカル女らしい。

サブカルとはサブカルチャーの略で、王道や、流行り、売れ線からは外れた文化のことを指し、それらを好むのがサブカル系である。
売れ線じゃないという点で言えば、私の漫画もサブカル系になるのではと思ったが、サブカルというのは、売れすぎていてはダメだが、全く売れていないのもダメらしく「わかる人にはわかる」ものでなくてはならないようだ。私のように「誰もわからない」ではサブカル系とは言えないのである。
つまり流行を追う没個性的モテ系女と対極をなす、個性的で玄人好み、自分の世界を持っているのがサブカル系女ということになる。
しかし個性的と言いながら「単館ものの映画を観てる」とか「香を焚いてる」等、ある意味モテ系女よりはっきりとしたテンプレが出来上がってしまっているような気もする。
しかし、個性というものは極めると「変態」になるため、個性的であれば人生の大半を、職質か、身元引受人待ちの時間に費やすことになってしまう。日常生活を支障なく過ごすためには「どこかで見たことがある個性」ぐらいにとどめておかなければいけないのである。

おそらくこの「個性」とか「自分の世界」「わかる人だけがわかる」というようなワードが鼻につくため、サブカル系女は何となく嫌われているのだと思う。

しかし、思い返すと、私は若いころ、このサブカル系になりたかったのだと思う。
もちろん、空の写真にポエムつけてえ、足元の写真撮りてえ、隙あらば日常を切りとりてえ、と思っていたわけではない。
普通とは違う、かつ、オシャレな人間になりたかったのだ。
私のようなオタク系がデビューしようとするとき、素直にモテ系に行く者もいるが、彼岸(個性的)の方へ行ってしまう者も多い。
なぜなら、オタク系はモテ系の女にバカにされてきたか、もしくはオタク系自身がモテ系の女をバカにしてきたため、いざデビューする時になっても「あいつら(モテ系)と同じになってたまるか」と言う意識が働く上「むしろあいつらの上を行く」と思ってしまいがちなのである。
そして、何で上を行こうとするかというと「個性」だ。その結果、モテ系の大きく下をくぐることになるのである。ちなみに、奇抜な恰好が「個性的」と見られるか「仮装大賞」と言われるか、どこで決まるかというと、センスではない、着ている奴の顔だ、この時点で御察しくださいであり、きゃりーぱみゅぱみゅと同じ格好をしているブスがいたらとりあえずその頭部についている、謎の魚類オブジェをちぎって隅田川に放流してやりたくなるのと同じだ。

個性的ファッションはブスの逃げ道と言うが、大体逃げれていないし、むしろ奇抜な服という名のガソリンをかぶって、火柱につっこんで行っているケースの方が多い。
もちろん二十歳前後の私も、甘めのワンピースなど着ずに、派手なデザイナーズブランドを着ていたところ、私の中学生時代の体操服を着た祖母に「そんな恰好で外に出るのか」と言われた次第である。
さらに、大人しくタートルヘッドにしておけば良いものを、そういったサブカル女さえ凌駕したかったらしく、その上にキツイパーマをかけていた。真珠入りである。
しばらく、そんな女泣かせ(主に母親)なスタイルをしていたが、その後、普通の会社に就職したため、その明らかに公序良俗に反している頭だけはストレートに戻した。
すると、会社の男性に「ストレートにしたんだ。ところで前の頭はなんのつもりだったの?」と言われた。どうやら正気を疑われるレベルだったらしい。
その後「どういう理由であの頭だったのか」とも、問われた。どうやら、罰ゲームか宗教上の理由で、やむにやまれずあの頭にしていると思われていたようだ。
このように、個性的ファッションを勘違いすると、モテ系を失敗するより遥かに深く石板に刻まれる黒歴史が誕生するのである。

こうして私はサブカル系にはなれなかったのだが、よく考えてみたら、本当に個性的でおしゃれで自分の世界がある人は「サブカル系」などとは言われず、単にオシャレな人、カッコイイ人、センスのある人、と呼ばれている気がする。サブカル系というのは、それらを目指そうとして、痛くなっている人の総称なのかもしれない。
だとしたら、あの時の私は立派なサブカル系だった。奇しくも目標を軽くクリアしていたのである。

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著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

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