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女って何だ?

カレー沢薫

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第2回

2016.07.20 更新

邪知暴虐の担当によりこのコラムのテーマは「女が苦手な女」もっと広く言うと「女」という私が最も避けたいテーマになってしまった。
何故避けたいかというと、まず女性にかかわらず、性というのはデリケートなテーマであり、炎上という意味でホットな話題なのだ。
よって、私のように公の場に文章を発表しておきながら、誰にも怒られたくないと思っている品性下劣な人間はまずこのようなテーマは選ばず、延々「からあげうめえ」みたいな話をしたがるのである。

こういう奴は来世で「からあげに親を殺された人だっているんですよ、謝ってください」というクソリプを24時間飛ばされ続ける罰を受ければいいと思うが、とにかく今の世の中で「女はこうだ」「男はああだ」という決めつけはご法度であり「女はキンタマがない」等の確実性のあることしか言えず、またそれも絶対確実とは言えないため「女はキンタマがない傾向にある(個人の感想です)」と言わなければならない。

しかしこれは、現代人、特に女性が過剰反応でヒステリックというわけではなく、今までそういったことに異議を唱えることさえできなかったポイズンな世の中が、やっと声を上げられるところまできたということなのだろう。

以上が作家としての女というテーマに触れたくない理由だが、私自身女が苦手かというと間違っても得意ではない、かといって「私、女といるより男といるほうが楽で、男友達のほうが多いんだよね」というタイプでもない。
そしてまず女はこういう事を自分で言う女が大嫌いである。この一言だけで「自称サバサバ系自慢」「男友達が多い=モテ自慢」「死ね」というところまでいけるのだ、もちろん本人にそんなつもりがあろうがなかろうが、だ。
たった一言でここまで嫌われることができるのだから、女が女の中で生きていくというのは、1メートル間隔で地雷が埋まっている平原をノーヒントで歩くに等しい。

では、女が苦手ならわざわざそんな危険なコミュニティに入らずいっそ一人でいればいいじゃないかと思われるだろうが、女が女の中に入らず一人でいるというのは地雷が埋まる平原以上にハードモードなのだ。

私も中学入学時、どこの女子グループにも入らず、というか入れず、教室に絶えず一人でいた。するとどうなったかというと、担任が抜き打ちで「お宅の娘さん友達いないみたいなんすけど」と家庭訪問に来たのである。

一人でいるのもそれなりに辛かったが、思春期に、親に友達がいないとバラされる辛さに比べたらどうということはない。女が女の中に入れないとこのような辱めと、生涯消えないトラウマを背負わされるのである。

さらに担任に「カレー沢は友達がいなくていつも一人でいる」と言ったのはクラスの女子である。小・中学校で女子が一人でいるというのはもはや通報案件なのだ。
大体、私に友達がいないのが心配なら、自分がなってあげればいいのに、それは嫌だったようだ。これぞ女子の恐ろしさである。

つまり、本人がどんなに一人がよくて一人でいても、教師から見れば「要注意生徒」であり、他の女子からは中途半端な同情、または好奇の目で見られるのである。
そんな目に遭うぐらいなら多少無理してでも、どこかのグループに所属した方が楽だと考えるだろう。
つまり、銃弾が飛び交う危険地帯から逃れるため女というシェルターに入ったら、シェルターの中にクソほど地雷が埋まっていた、という話なのである。

女はどれだけ女が苦手でも、その中に入らないとそれ以上に嫌な思いをすることがあるのだ。
正直、男が苦手なら、少なくとも学生時代なら全く関わらなければいい。私は女友達も少ないが男友達は皆無に等しい、しかし男友達がいなくて困った局面は一度もない。
逆に女友達がいないと、ジャージを忘れたといっては困り、体育で3人組を作れと言われては困るのである。「授業でどうしてもキンタマが必要になった」ということがあれば、男友達の必要性が出てくるかもしれないが、そういう場面はなかったし、それは親友クラスでも貸してくれるか疑問である。

それにただ男友達がいないだけだったら、担任だって家に来なかっただろう。
もし教師に「お宅の娘さん男友達が一人もいないみたいですが、大丈夫ですか」などと言われたら、モンスターじゃないペアレントでもモヒカンジープで学校を焼き討ちしに行くだろう。
そもそも女が「男に好かれない」という問題は「モテない」の一言で片付く場合が多いが、女が「女に好かれない」というのは「銃口がこっちを向いた」「ヒグマと目が合った」という意味になる。

よって女は、女が苦手、もしくは苦手な女がいる集団でも、そこに入ることを余儀なくされるし、さらにそこで上手くやっていかなければならないのだ。

危険から逃れるために土管の中に入ったら、そこにはハンマーを投げてくる亀とか、口から炎を吐いてくるデカい亀がいたという、女の人生はリアルスーパーマリオなのである。

次回からは、女の世界にはどういうクリボーやクッパがいて、マリオはどうそれをかわしたり倒したり、時にはぶっ殺されてるか、を話せたらいいと思う。

女02

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著者プロフィール

カレー沢薫

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

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