キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

女って何だ? ブック・カバー
バックナンバー  1...1415161718...21 

第16回

2017.02.22 更新

この生きづらい世の中において、現代の女がどう生きていくべきか、新しいライフスタイルを提唱する。

全然知らなかったが、当コラムはそういうコンセプトのもとに開始した。

しかし気づけば、「あなたの隣にいる痛い女特集」みたいな、どこに需要があるのかわからないが、確実に誰かが買っている、新幹線に乗ると同時に買われて、降りたと同時に捨てられてる系の漫画雑誌みたいな様相を呈している。
おそらくこのコラムを読んで「俺も自分探し女になって、読書メーターやアマゾンでポエトリーなレビュー書いて“4いいね”くらいもらいてえ!」と強く思った女はいないだろう、逆に「こうはなりたくない」「わが身を振り返る」という点で有益なコラムになってしまっている。

それはよくない、このコラムのコンセプトに立ち返らなくてはならない。よって今回は担当が送ってきた○○女メモ(別名:炭素菌)の中でも「こういう女にならなってみたい」と思った女を紹介したい。

【かまいたち女】
・悪魔、じじいころがし、などと呼ばれている
・夜の街にいそうな雰囲気で、昼の職場にいると影があるので営業職だとギョッとされる
・顔がかわいい、スタイルがいいだけではない、何か人を引き付けるものがある
・メンヘラの場合もあるが、上昇志向のかたまり、あるいは「男に仕返ししたい!」など人生に何か暗い目的がある。最終地は破滅願望のほうが多い
・アイドルグループの場合、センターではないものの一部に熱狂的なファンをもつタイプ。ギャルゲーだと5人いるヒロインのうちメインヒロインではないバッドエンドに導くヒロインだが、やはり一部に熱狂的ファンをもつ。100人のファンのうち8人くらいが生涯好きというくらいで、この8人は人生を狂わされる
・おっとりした喋り、抜けている性格など、天然を装うが、目が笑っていない
・自分の「駄目エピソード」を話して隙をつくるのがうまい
・男好きだが、付き合いたいというより言いなりになる男を見たいという感じで、支配欲がある
・ロッキング・オン・ジャパン出てくるバンドが好き、思い出の曲は日本のロック
・ストール、とろみ素材など、一箇所ゆるませた服装をしている
・ビッチ感は出さないが処女ではないな感も出す。ビッチじゃない男経験が多そうな女、ということで落ち着く
・話がうまい、一芸がある、お土産を買ってくるなど、じじいを飽きさせないテクニックがある
・年齢は問わないし、在住地も問わない
・「この人がなぜこの店を?」と疑問に感じたのなら、その女がそれ

いつもながら担当のメモの方が長くてすまない。しかし本当に長い上に捨てるところも特にないし、すでに当連載「2017年もっともライターが要らないコラム大賞」間違いなしと言われているので、ここで油断して受賞を逃すわけにはいかないのだ。

それにしても開口一番「悪魔」である。もはや女とか関係ない。

だが、みなさん、胸に手を当てて、乳首以外にしこりがあったらすぐ病院に行ってほしいが、なかったら考えてみてほしい。過去または現在進行形で「悪魔」と呼ばれたいと思ったことはないだろうか。

この「かまいたち女」は、「女の中二病患者」が夢想する「私が考えた最強の私」そのものである。
中二病とは主に中学二年生ごろに発症する、自意識がスパークして「自分は特別な存在」「他人とは違う」「風の音(コエ)が煩(うるさ)く感じる」「気を抜くとアイツが目を覚ます」等の症状をきたす蕁麻疹のような病気である。

この中二病は、個人差はあれ、男女ともに大体罹るものだが、思春期以降の女が罹る中二病というものがある。
もちろん「邪気眼に目覚めてえ」と思っているわけではない。むしろ二十歳過ぎて女がそう思っていたら、逆にその後も明るい人生が送れると思う。いわば勝ち(相手不在の不戦勝という意味で)組だ。

ではそういう女の中二病思考とは何かというと「私はパッと見、モテ系ではない(むしろダサめ)が、何か不思議な抗えない魅力を持った女」なのである。

「何か不思議な抗えない魅力」とは何かというと、「邪気眼」や「右腕に封印されたヤツ」と全く同じで、つまり「ない」のである。何か不思議な力をもっているのは群馬県人だけだ。

こういうタイプは「表では冴えない女だが裏では魔性の女」という設定にも憧れているが、大体、表では冴えない女は裏ではさらに冴えない。

それをさらにこじらせると「私には私ですら気づかない不思議な魅力があり、それをいつか誰か(モテるが女に興味を示さない、なのに何故か自分にはちょっかいをかけてくるイケメン)が気づいてくれる、かもしれない」という遙か遠いところに行ってしまう。

見えない物を見ようとして深夜二時、望遠鏡を覗きこむのは、迷走女がよくやることだが、さらに「存在しないものを鍾乳洞の中でお前がオペラグラスで見つけろ(そして見つけたら教えろ)」という、新しい惑星よりも見つからないものを、あると信じて一生を終えることになるのである。

多分この「かまいたち女」のような「説明できない魅力で他人を惹きつける女」というのは存在する。だがそれは本当に「特別な女」である。
むしろ「自分は特別じゃない女」という事実こそ、どんな望遠鏡を使ってでもいち早く見つけ出し、認めるべきことで、そうすればその後の人生は好転するのかもしれない。

女16

バックナンバー  1...1415161718...21 

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

ページトップへ