キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

女って何だ?

カレー沢薫

女って何だ? ブック・カバー
バックナンバー  1...1011121314...18 

第12回

2016.12.22 更新

このコラム、いつも内容が暗くなるというが、それは私が絶対暗くなるテーマを選んでいるせいだ、ともいえるし、そもそも担当が暗くなるテーマしか送ってきていないというせいでもある。
つまり、担当を殺せば世界に平和が訪れる、つくづくラスボス的存在である。

確かに「自分探し女」なんて、明るくなる要素がない。どう考えてもこの女が何か見つけるという結末はないだろう。見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んで、何か見えた奴はシャブ中だ。ないものは見えないし、見つからない。自分探し女は、そのないものを発作的に「見つけなきゃ」と立ち上がり、望遠鏡の代わりにアルミホイルの芯とかを担いで、午前二時、家族の制止を振り切って外に出かけていくし、当然「君」も来ない。

そもそも「自分探し女」がテーマなんて、「お通夜」というタイトルで24時間テレビのテーマソングを書けというぐらい無理な話だったのだ。

よって、担当が送ってきた「○○系女」の中で、もっとも明るくなりそうな女をチョイスすることにした、今回のテーマは「ウェイ系」だ。

【ウェイ系】
・ハロウィン、花火、クラブなど人が集まり騒ぐ場所を好む
・飲み会がもうとにかく好きで、酒が好きというより集まって騒ぐことが好き
・肝心の飲み会する店を見つけるとき、「私は歩きながらお店見つければいいと思う!」と根拠のないことを自信満々でドヤるも、店が見つからず、結果中華定食屋などで飲み会することになるも、自分が悪いとは思わない
・声がデカイ、すごいと思われたい欲が強い
・EXILEが神
・「マジ」「ヤバイ」「それな」「ワンチャン」などといった言葉を多用
・私立高校、私立大学を出て、飲食系や、体育会系が重宝される営業職に多い
・集団の割合は男が多め
・「絆」という言葉が異様に好き

さすがリア充種の中でも最強といわれる「ウェイ系」だ。担当も悪口を言いあぐねている感じがとてもいい、このまま倒して世界に平和をもたらしてほしい。

コラムの趣旨が変わってしまったが、これがウェイ系だ。「ウェイ」の語源はこの種族が発する独特の鳴き声「ウェェーイ!」からきている。だがその声自体どこからきたのか調べたところ、検索履歴が「ウェェーイ」「ウェェェェェイ」「ウェーイ」「ウェェェェェイww」など、頭が悪いとかいう騒ぎではない文字列で埋め尽くされたうえに、結局語源もわからなかった。

ウェイ系の戦闘能力の高さは「集団を好む」「コミュ力が高い」という点にある。
学校でも社会でも「結局はコミュ力」という場面は非常に多い。クラスでも、決して可愛くはないのに、コミュ力だけで、イケてるグループに自分をねじ込んでいる女はいくらでもいた。
むしろ、能力は高くても、集団行動ができない、コミュ力がない奴の方が、冷や飯を食ったり、見えないものを見に行く羽目になっている場合が多い。

あと明るいという要素も強い。おそらく暗かったり「ゥェェェィ」と全部小文字のウェイ系はいないはずだ。どんな逆境でも本人が不幸だと思わなければ、それは不幸ではないのだ。
その点、暗い奴は、どんな些細なことでも不幸になれるため、逆にコスパがいいといえる。

ここまでだと「ウェイ系」最強説が成り立ちそうだが、ウェイ系にも弱点はある。「年齢制限」だ。

先日、知人女性が合コンに行ったそうだ。その女性は30代で、男の面子も全員30代だったという。それで首尾はどうであったか、と聞くと彼女はこう答えた。

「全員EXILEみたいだった」

この一言でその場にいた全員に伝わった、ハズレ合コンであると。
EXILEといえば前述の通りウェイ系の神である、もちろんEXILEは悪くない。しかし30過ぎて「EXILEみたい」というのは、ないのだ。しかもこれは田舎の話だ。「田舎で、30過ぎて、EXILEみたい」。役満である。
男でこれであるから、女のウェイ系が「いい年してそのノリはない」と言われる時期はもっと早いはずだ。
だがこれは加齢と共に「コミュ力や集団生活力を維持したままテンションを落として落ち着きを出す」ということで対処できるので、ウェイ系が社会において強いことは変わらない。

このようにウェイ系は強い、しかしその中に「無理してウェイ系にいる女」がいるとしたら相当キツイ。
そんなのただ「ウェェェーイ」って言ってればいいんだろうと思うかもしれないが、ウェイ系の「集団行動」は常人が考えるよりも遙かに「集団行動」なのだ。会ったらまず、次何するかが決まり、次いつ会うかが決まる、それを「おかしい」と思う人間はウェイ系の資質がない。
「休日にフットサル」と聞いて、びしょ濡れにならないようではウェイ系にはなれず、「ひとりでゆっくりしたい」などというのは、マグロが泳ぐのを止めると同意義であり、ウェイ系としては死を意味する。本当にマグロ(ウェイ系)ならいいが、無理して合わせているイワシ女がいたら死ぬに決まっている。

ウェイ系は「絆」「仲間(ファミリー)」という言葉が好き。
いかにも軽いノリで使われているように見えるが、その絆はマジでパねえ絆なのである。

%e5%a5%b312

バックナンバー  1...1011121314...18 

著者プロフィール

カレー沢薫

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

ページトップへ