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女って何だ?

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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第11回

2016.12.07 更新

担当がやる気を出すほど私の元気がなくなることでおなじみの当コラムだが、前回担当の目的が「女性が生きづらい現代社会において、女性が楽になれる道を示したい」ということだとわかって度肝を抜かれた次第である。おそらく楽にするというのは息の根を止めるという意味であろう。

それとも、一旦人類を根絶やしにして、そこに新しい国を建てる、スクラップ&ビルド方式、もしくは焼畑か、とにかくRPGの魔王の発想である。

ともかくそういうテーマだと判明してしまったのだから、今回は「○○系女シリーズ」はお休みして(疲れるから)その「現代社会における女性の生きづらさ」について考えていきたいと思う。

現代社会は女性にとって生きづらい。だとしたら、昔は生きやすかったのかというと、そんなことはないだろう。それに女ばかりがキツイみたいな言い方だが、男だって常に厳しかったはずだ。
そもそも、この世界が人間にとって快適だったことが未だかつてあっただろうか。
昔だったら、玄関出てすぐ、マンモスと遭遇、とかあったはずだ。これは相当生きづらい、というかリアルに死ぬ。
そこから衣食住が確保できるようになると今度は「豊かに生きるべき」みたいな要らんことをいう奴が現れ、それが「他人より豊かに生きるべき」となった時点で地獄の幕開けである。

女が世間から求められてきたものは長らく「結婚し、男に付き従い、子供を産み育てる」だった。
もちろんいつの世にも、毎晩マーシャルの匂いで絶頂に達してあたしをグレッチで殴ってみつを。とそういう風潮に全然従わない奔放な女というのもいただろうが、それでも現代の女よりは従っていただろうし、それでいいのだ、と女自身も思っていたのかもしれない。

では現代、その生きづらさはどう変化したのだろうか。

・求められるものが超増えた
「結婚し男に付き従い子供を産み育てろ」という求めが変わらないまま、さらに「経済のために働け、男に頼るな」という価値観までログインしてきた状態である。

会社で仕事や人間関係に悩み、家では家事、子育て、姑とかとの関係に悩まなければいけないのだ、これは生きづらい。
それにマンモスだったら、石器とかで殴っていいだろうが、上司や夫、姑をグレッチで殴ると罪に問われてしまうのだ。これは理不尽、もはや法律が間違っているとしか言いようがない。

・自由すぎてヤバイ
それでも昔に比べれば「結婚し子供を産むのが女の人生」という価値観は多少なりとも減り「お前の人生だ好きにしろ」と言われている女もいるだろう。
選択肢が多ければ迷うのは当たり前だ、そしてどの道を選んでも「自分は間違った道を選んだ気がする」という気持ちが拭えない。そして「自分探し女」の誕生である。

・何がサクセスかわからない
昔なら「ハイスペックな男と結婚」が女のサクセスだった。今でもそれは女のサクセスの1位かもしれないが、今では男に頼らず、自分自身がサクセスするのが渋いという考え方も強いし、サクセスするにも起業するとか、芸術や芸能とか種類はいっぱいある。
さらにそこに「社会的成功だけがサクセスではない、自分らしくありのままにやりがいを感じて生きることが真のサクセスだ」と言い出す奴が現れる。
一体誰がそんなことを言い出したのか、松たか子か、ともかく「ありのままに」はエルサを救ったかもしれないが、逆にその言葉のおかげで迷走している女もたくさんいるのだ。
せっかく、そこそこ上手くやっていたのに「これありのままでなくね?」みたいな疑問がかすめたが最後、またしても「自分探し女」の爆誕だ。

つまり「生きづらさ」自体は変わっていない。時代に合わせて質が変わるだけであり、特に現代では生きづらさの種類が増えたのだ。

つまり「当地獄では今まで血の池地獄のみでしたが、皆様のご要望にお答えして地獄ラインナップを充実させました」ということである。
そしてその地獄は、全国から地獄るるぶ片手に「自分探し女」が訪れ巡っていくという一大テーマパークになっているのだ。ディズニー超えも遠くない、USJは多分もう超えている。

このままでは「イカれた地獄を紹介するぜ!」というメンバー紹介だけで終わってしまい、そこから出る方法が書かれていないという、ただのヘルコラムになってしまうのだが、もちろん私自身もそんな方法知らない。
ただ、言えるのはみんな「自分と世界に期待しすぎ」なのではないだろうか。
一人暮らしのいいところは、とにかく自由で快適なところだ。
それを考えると、我々は地球という一戸建てに60億人で暮らしているのだから、この時点で快適なはずはない、さらに日本なんて、便所の個室に1億2千万人が暮らしているようなものだ、たこ部屋とかそういう騒ぎではない。
しょせん自分の住む世界は便所で、自分はそれを1億2千万人とルームシェアしてる人と思えば、少しは楽になるのではないだろうか。

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著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。OL兼漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。自身2作目となる『アンモラル・カスタマイズZ』(太田出版)は、第17回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選出。ジャンルを問わず幅広く活躍しており、主な作品に、漫画『ヤリへん』(小学館)『やわらかい。課長 起田総司』(講談社)『ねこもくわない』(日本文芸社)、コミックエッセイ『ナゾ野菜』(小学館)、コラム集『負ける技術』『もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃』(講談社)などがある。

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