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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、アンチあんこがあんこ大戦に巻き込まれたときの処世術を教えてください。

2019.09.20 更新

私はあんこが食べられません。食べられなくても困ることはないので、克服したいという気持ちもまったくないのです。ところが、こしあんVSつぶあん戦争に巻き込まれると、いがみ合っていたはずの両者が結託して、食べられない私を責めてきたり、可哀想な目で見てきたりします。納得できません。もしまた巻き込まれたら、どうにか一泡吹かせたいのです。よい策を御教示ください。

このワクワク相談室もこれで最終回。
最後に随分スケールの小さい話を持って来たなと思われたかもしれませんが、私に言わせれば「ついにラスボスが来やがった」という感じです。

この相談は「世界平和」にすら通ずるワールドワイドな問題と言えます。

この世にはさまざまな「意見の違い」があります。
意見が違えば、それは話し合い、そして言い争いに発展し、どれだけ言論を戦わせても両者が譲らなければ「武力行使」となります。

そうやって起こるのが「戦争」です。

意見の中でも「好み」というのは特に変え難いものなので、話し合いでどうにかなることは稀です。
よって「こしあんVSつぶあん」や「きのこVSたけのこ」などは、戦争になるべくしてなっていると言えます。

話は変わりますが、映画に「エイリアンVSアバター」というのがあります。
おそらく内容は「エイリアンVSプレデター」と「アバター」の良いところを殺し合ったB級映画なのでしょう。
ですが、唯一キャッチコピーだけは「勝手に戦え!」という非常に秀逸なものがつけられています。

あんこが嫌いなあなたにしてみれば「こしあんVSつぶあん」も「勝手に戦え!」としか言いようがないのに、何故かエイリアンとアバターが手を組んで自分を襲い出すという展開に、理不尽さを感じるのは当然ですし、両方駆逐してやりたいと思うのも仕方ありません。

しかし、相手に自分があんこが嫌いな理由を理解させようとしたら、「あんこはウンコと一字違い、つまり実質ウンコ」というような、相手の好きなものを否定することになってしまうでしょう。

これでは、エイリアンとアバターが「あんこが食べられない」というあなたの好みを否定し攻撃してきたのと同じであり、エイリアンVSアバターVSシャークネードになるだけです。

つまり、攻撃に対し「一泡吹かせたい」と応戦姿勢を取れば、戦争の規模が広がるだけで世界平和が遠のきます。
あなたが戦争反対派で世界平和を望むなら、クソあん野郎たちをぎゃふんと言わせたいという考えは捨てましょう。

他人の嗜好を否定する連中の同類にならないためには、どれだけ挑発されても「勝手に戦え!」という名コピーを忘れないことが大切なのです。

よって、戦うのではなく、まず巻き込まれないことを考えましょう。

おそらく、あんこ好きな人間の前であんこが嫌い、食べられない、と言ったらほぼ100%責める感じで「なんで!?」と言われると思います。

私だって目の前で「猫をカワイイと思えない」と言われたら「世の中には色んな考えの人がいる」などとは思えず、脊髄反射で「なんで?」「大丈夫?」「……(無言で刺す)」などやってしまうと思います。

このように、人は自分の好きなものを否定されるとつい冷静さを欠いてしまい、条件反射のように攻撃的になってしまうのです。

よって、巻き込まれないためには「身分を明かさない」ことが大事です。

好きなものに関しては「拙者アニメの男子小学生キャラ大好き侍と申す」といくらでも名乗りをあげても良いのですが、嫌いなものに関しては「それがし名乗るほどの者ではござらぬ」という姿勢を貫いた方がよいのです。

よって、あんこの話題になったら、下手に「嫌い」とか「食べられない」とか己の立場を表明せず、「黙る」もしくは「濁す」ようにしましょう。
嫌いとか不味いとか、ネガティブなことを言うからスマブラみたいに「参戦!」と思われてしまうのです。

このように嫌いなものに対して「黙る」というのは、非常に大事なことです。
嫌いなものをイチイチ嫌いと言わないと気が済まない人間がいるから、好きな人間に攻撃をしかけられたり、逆にそれを好きな人を傷つけてしまったりするのです。

「つぶあん派か? こしあん派か?」と「薩摩か? 長州か?」みたいな詰問をされても「どっちかというとウンコ派ですね」と、あくまで「自分は無関係の者です」という態度を取るようにしましょう。

たとえば国同士の諍いでも、一番平和的なのは、お互いの意見を汲んだ折衷案がなされることです。
よって、あなたの前であんこの話が始まったら「それより麩の話でもしないか」と、瞬時に三者とも特に興味がない話に転換させるようにしましょう。

同じキャラが好きなオタク同士でも、一方は生粋の夢女子、一方は強火の固定カプ腐女子とわかっているなら、あえてそのキャラの話はしません。
そういう話は同好の者と話すべきだからです。

それと同じように、食べ物の好みだって、戦わせるものではなく、好物が一致する同志が集まって語り合うべきであり、意見が違う時は「別の話をする」のが一番なのです。

全く意図しない戦に巻き込まれて憤る気持ちはわかりますが、殴り返したら「あんこ食えない派」として参戦したことになってしまいます。

平和主義国家の一員として、戦に対してはあくまで無関係を貫き、出来れば始まるのを防ぎ、始まったら早めに終わらせるように努めましょう。

そういう姿勢の人間が一人でも増えることが、世界平和につながるのです。

こしあんつぶあん

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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