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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、元カレが私の悪口を投稿しているのをどうすべきでしょうか?

2019.08.02 更新

元カレがSNSに有ること無いこと私の悪口を書きまくっています。共通の知人が多いのでその投稿により私を貶めるためにやってると思うんですが、どうしたらいいでしょうか? 仲の良い友人は「アイツ最低だよね!」と言ってくれますが、頻繁に会わない知人などは元カレの投稿を鵜呑みにしてるんじゃないかと心配です。かと言って、SNS上で反論しても公開泥仕合になるのが目に見えていますし、元カレと同じ土俵に上がる事はしたくありません。

まず、そんな男と別れられて良かった。
それ自体がkiriクリームチーズを奮発していいぐらいの吉事です。

既にお察しのとおり、ネット喧嘩というのは、ルールがない、行司がいない、いるのは自称行司の野次馬だけ、という最も過酷な異種格闘技です。

ルールがないので、決着がつくことはありません。
しかも、気づいたら、あなた達の戦いを見ながら升席で弁当を食っている奴がいるという、疲れる上に見世物にまでなってしまう「損」でしかないのです。

「ネットの誹謗中傷は無視が一番」と多くの識者が言っているとおり、やはり「無視」を貫くのが最善です。

しかしあくまで「ネット上では」であり、事態を無視して何事もなかったかのように振舞うのが得策というわけでもありません。

ところで、諍いというのは、双方の言い分を聞いてみないと、どっちが良いのか悪いのか判断できません。
この相談も、あなたの言い分だけなので、もしかしたら元カレの書いていることは、有ること無いことではなく「ただの真実」「むしろソフトにしている」という可能性もあります。

それにしたってネットに書くなよという話なのですが、一方の話だけでは物事は正しく判断できません。

しかし「片方の言い分しかない」という場合は、人はそちらを信じてしまいがちです。
私も現時点ではあなたことを、クソ野郎に粘着されている被害者と思ってますし、多くの読者がそう思うでしょう。

ネットの悪口と言えば、我々漫画家も、担当編集がいかに残虐で、血が青色3号で着色されているかをよくネットで暴露します。

よって世間では「編集者というのは全員サイコパスで、今すぐメロスに除かれるべき邪知暴虐の王」と思われていることでしょう。
思っていないなら、今すぐ悔い改めて、そう思ってください。

そういうイメージになっているのは、編集者が本当に全員サイコパスだから、という事実もありますが、漫画家の暴露に対し、編集者があまり弁明をしないから、という理由もあります。

個である漫画家に対し、会社の名前を背負っている編集者はそうそう個として反論することはできないのです。

しかし、漫画家の言っていることが全て真実とも限りません。

漫画家が「俺の担当には漆黒の翼と4本のツノが生えている」とツイッターで暴露してても、本当は「8本」かもしれないのです。
しかし、担当が「12本だよ!」と言わない限り、半分ぐらいの人は「4本」という情報を鵜呑みにしてしまうでしょう。

「弁明しなくてもわかってくれる人はいる」と思いたいところですが、あなたの言い分がない以上、鵜呑みにしてしまい、あなたに悪印象を持ってしまう人もやはりいると思います。

よって共通の知人の中でも「この人には誤解されたくない」という人には、個別で「元カレに誹謗中傷されて困っている」ということを言った方が良いと思います。

あなたの味方ならあなたの言い分を信じてくれるでしょうし、逆にそれでも元カレの書き込みを信じるというなら、それは書き込みが原因ではなく「最初から元カレ側の人間だった」と思って諦めましょう。

また、ネット上の誹謗中傷に対する訴訟も増えていますし、罰則もだんだん厳しくなっています。
「訴えちまえ」というわけではありません。ただ「訴えるとしたらどうするか」というシミュレーションをしてみるのです。
最近そういう事件が増えているのでネットで検索すればSNSでの誹謗中傷を扱っている弁護士がたくさん出てきますし、訴える流れや料金なども載っています。

「辞表」を用意することにより、前より落ち着いて仕事が出来るようになった、という人もいるように、「いざとなったら」という「切り札」を用意することで、人の心は落ち着くものなのです。

あなたも「いざとなったらここに相談してみよう」という弁護士の目星をつけておくだけでも、大分安心できると思います。
何だったら、「あの野郎を訴えたつもり貯金」として訴訟費用を貯めてみましょう。使わなかったら別の楽しいことに使えば良いのです。

「準備」をすることで人は冷静になり、冷静になれば「無視」もしやすくなります。

やれることをやったら、後はネット上だけではなく、あらゆる意味で「無視」しましょう。元カレのことを考えること自体やめるのです。

嫌なヤツのことを考えている時間というのは、本当に無駄です。
考えた分だけ元カレの家が傾く、というなら考える価値がありますが、そうでないなら考えるだけ損なのです。

悩んでいる時間も、こうやって相談している時間も、貴重な人生を浪費していると言えますし、相談相手が私という点がさらに損を加速させています。

「愛の反対は憎しみではなく、無関心です」という、マザー・テレサが言ったかと思いきや、実はテレサは言ってなくて、結局誰が言ったのかよくわからない言葉がありますが、そこらへんのおっさんがホッピー片手に言った言葉であったとしても、これは名言です。

何故ならこの言葉は「そんな奴に『憎しみ』なんてもったいねえ、『無関心』でもくれてやれ」と教えてくれているからです。

元カレのことを考えたり、あまつさえ憎んだりするのは、あなたの貴重な時間と感情を元カレに「与えている」ということになります。

もったいないです。元カレの事を考えそうになったら、推しでも猫でもタピオカでも良いので、あなたが愛を与えたいと思うものの方を考えてみてください。

元彼トラブル

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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