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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、他人と比較して自己嫌悪に陥ってしまう癖をどうしたらいいでしょうか?

2019.07.19 更新

カレー沢先生に相談です。私は会社の同期や友人と自分を比べてしまい、「こんな事も自分はできないのか」と自己嫌悪に陥ってしまうことが多々あります。延々自分を責めてしまい、新社会人になって早々メンタルがヘラってきています。カレー沢先生、この地獄のスパイラルから抜け出すにはどうすればいいですか?

人と接するから人と比べて凹むのです、といつもの「部屋から出ない最強論」を説きたいところなのですが「他人との比較」というのはなんと、他人と一切関わらなくても出来てしまうのです。
インターネットを開けば、赤の他人の作品がアニメ化したとかで凹めますし、通信機器を全て爆破しても「自分が部屋で1人破壊行動をしている間にも、他の人は立派な社会の一員として生産的なことをしているに違いない」と思えば、いくらでも落ち込めてしまいます。

よって「絶望から自分以外の人類滅ぼす」というRPGのナーバスな悪役みたいなことをしない限りは「人と比べる」という行為は止められませんし、仮にそんな能力があるなら劣等感など感じる必要はないと思います。

この劣等感や自己嫌悪を払拭する一番てっとり早い方法は、自分より下を見て「この人よりはマシ」と思うことです。
すでに「そんな人はいない」というレベルまで落ち込んでしまっているのかもしれませんが、それでも大きめの石の裏や、洗ってない水槽など、探せば2、3匹くらいは見つかるものです。
しかし、「自分より下を見て安心感を得る」という行為はおシャブはんと一緒で、一時的に良い気分にはなれますが、すぐ効果が切れる上に、使う度に大人の階段下る、逆思い出がいっぱい状態になるので「もっと下を、もっと下を」とやっている内に、己が石の裏や洗ってない水槽の住人になってしまいます。
よって、この方法は、そうでもしないとリアルおシャブはんに手を出してしまう、という時の「切り札」として大切にとっておきましょう。

では、やはり上を見た方が良いのかと言うと、これは上を見てどう思うかによります。
自分よりデキる人を見て「自分もああなりたい」「いつか、おまんの席にワイが座ったる。それまでせいぜいキラついとけや」という向上心が湧くなら、上を見る意味はあります。

しかし、ただ自分と比べて凹むだけで、そこから特に何もしない、というなら無意味ですし、落ち込むだけ損です。

一旦、上下の他人を見るのはやめて、まずは己の事を再度見つめ直してみてはどうでしょうか。

あなたは今自己嫌悪のあまり「ここまでダメな人間は俺様ぐらいのものだろう」と、ある意味自分を「特別視」してしまい、特別な自分の気持ちなんて誰にもわからない、と孤立感を深めているのではないでしょうか。

実際は、オンリーワンかつナンバーワンな悩みを持っている人なんて少数派であり、どんな悩みでも口にしてみれば、必ず「わかり哲也」と言う人が荒波をバックに現れるものです。

よって、あなたも抱えている自己嫌悪や悩みを「人面瘡が出来てしゃべり始めた」というような特別なものとは思わず、軽い感じで良いので、まず他人に言ってみましょう。

そうすれば自分より上だと思っている同期や友人だって、意外と同じようなことを考えていたということが判明したりするのです。
友人知人に言うのが憚られるという場合は最悪インターネットとかでも構いません。
重要なのはまず「わかりみ」をもらい「私が特別ダメなわけではない」という、良い意味で「自分は選ばれし者ではない」ことを知ることが、スパイラルを抜け出す第一歩です。

もう一つ、単純に今いる職場が、自己嫌悪や劣等感を感じやすい環境なのではないでしょうか。つまり「向いていない仕事をしている」可能性があります。

苦手なことをやれば、周りと差がついて劣等感を感じるのは当たり前です。
魚が酸素ボンベを背負って陸で暮らすより、水の中で暮らした方が手っ取り早いように、仕事は苦手なことを頑張って出来るようにするより、最初から自分に向いていることをする方が重要と言えます。

私は、「社会に向いていない」という結果を受けて、今「無職」という向いている仕事に就いています。というより、追いやられてここに来た、という感じなのですが、あなたはまだお若いと思いますので、自分の特性を理解し向いている仕事に就くことは十分可能だと思います。

何せ今、絶賛自己嫌悪中なので「自分に向いていることなんてない」と思っているかもしれませんが、前の職場では爆笑された真っ赤なお鼻が、次の職場では「暗い夜道でメチャ役立つ」と重宝された、という例もあります。

速さが求められる仕事では、慎重すぎる性格は欠点となりますが、正確さが求められる仕事では利点になります。
あなたが今の仕事で感じている短所も、仕事によっては長所かもしれないのです。

長所を新しく見つけるのではなく、「私、真正面から見ると奇岩だけど、この角度からだと玉城ティナじゃん?」という風に、今の仕事で感じている苦手なことを「別の角度で見てみる」ことで、自分の得意なこともわかってくるのではないでしょうか。

それと、自分を無能と思いこむと、逆に周りを万能視してしまい、この人たちは私と違って、こんなことでは悩んだり傷ついたりしないのだ、と他人の痛みに対し無神経になってしまうことがあります。
あなたが出来ないことを平然とやってのけているように見える人も、ものすごい努力と無理、そしてストロングゼロで何とかやっているのかもしれないのです。

「自分は特別無能ではない」とセットで、「他人は万能ではない」ということも覚えておきましょう。

他人と比較

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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