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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、ルール違反の人間にイラついて仕方ない私はどうしたらいいでしょう?

2019.06.21 更新

ルールを守らない人に対するイライラが止まりません。列への横入り、提出物の期限を守らない、駅の階段での逆走、靴を履いたまま椅子の上で遊んでいる子供と、それを注意しない保護者などなどあげるとキリがないです。他人がルールを守ってないことで自分に実害がなくても、見ていてイライラしてしまいます。かと言って、逆ギレされたくないので直接的な注意もできません。もっと寛容になるにはどうしたらいいでしょうか。

一番の解決策は「外に出ない」ことです。
公共に出るから、公共のルールがあり、それを犯す連中が視界に入って、イライラしてしまうのです。
よって、「国民総数俺1名」でお馴染みの独立国家「部屋」から出なければ、ルールを犯す奴が視界に入ることはありません。

しかしこれは、私のような選ばれしジョブ「無」を手に入れた人間のみに出来ることなので、多くの方には少し敷居が高いかと思います。

そこでまず、このような「モラルのない人間への怒り」を成分分析してみると、半分はモラルファッカーたちへの怒りなのですが、もう半分は、明らかに相手が悪く、正義はこちらにある状態なのに、それでも注意できない自分への苛立ちなのではないでしょうか。また「いじめは傍観も同罪論」があるように、モラルがファックされるのを見ているだけの自分も同罪なのではという自己嫌悪だったりします。

よって「自分への苛立ち」からなくしてみてはどうでしょうか。
そもそも、公共の治安を守らなければいけない人というのは、駅なら駅員などその施設の管理者、または警察、仮面ライダー、などが挙げられます。

よってあなたがその場の関係者や警察、ジオウ、ウォズじゃなければ、ルールブレイカーへの注意は「業務外」です。
レジ係として雇われた人間が鮮魚をさばけなかったからといって落ち込む必要があるのかという話であり、注意しない、出来ないのは「それ俺の仕事じゃないから」当然と思いましょう。

また「逆ギレされたくないから注意できない」という気持ちは大事です。
何せ、相手はすでにルールを犯している人間なので、注意したらノーモーションで刃物が飛んでくるなど、法までファックしてくる可能性は大いにあります。
つまり二次被害を防ぐためにも「注意しないのが最善」であり、注意しない自分に苛立つ必要はありません。

どうしても気になるという場合は、本人ではなく、その場の管理者や、ジオウに言ってみてはどうでしょうか。
適切に処されるかどうかは置いておいて「告げてやった」という行動実績が、もやもやを大分軽減してくれるのではないでしょうか。

またあなたが、そのようなことに苛立ってしまうのは、あなたが高いモラルを持っているからであって、決して心が狭いとも、寛容になるべきだとも思いませんが、どうにも出来ないあらゆることにムカついていたら身が持たないとは思います。

よって、自然界に近い方から諦めてみる、というのはどうでしょうか。

災害に怒っても仕方ないのと同じように、子どもが泣いたり高齢者が鹿みたいに道路を横切ろうとしたりする、自然に近い存在が起こす大自然極まる行いは、「突風で飛ばされたピンサロのチラシが顔面にヒットした」のだと思って諦めることも時には必要だと思います。

また「苛立ち」の中には「妄想」が含まれていることも多分にあります。

例えば、公共の場で騒ぐ子供と放置する母がいたら、最初はその行為に苛立っていたものが、だんだんガキの顔つきや母親の服装や化粧センスなどへの苛立ちへ変わり「この女の一人称は『ウチ』または『あーし』に違いねえ…」という、どうでもいい上に事実無根なことへの怒りに変わっていくのです。

よって、イラッときても、目にした以上のことは考えない努力をするか、どうせ妄想するなら「この母親は子供を注意出来ないほど疲れているのだ」という優しい妄想か「※この母子はこのあとスタッフにより処されました」というハッピーエンドを想像してみてはどうでしょう。

また、あなたが何かとイライラしてしまうのは、「怒る準備は出来ている」状態で公共の場に飛び出している可能性があります。

私のような選ばれしジョブ「無」を手に入れたものでも、今ではネットがあるため「今日こんなマナーファッカーがいた」という情報がツイッターなどに絶え間なく流れてくるため、実際目にしていなくてもムカつくことが出来るようになってしまいました。

そして、ごくたまに公共の場に出ると全員「そういう人間」なんじゃないか、と思えてしまいますし、いざちょっと「そういう人間」を見ると「インターネットで見た奴だー!」と100点満点でムカつけてしまうのです。
あなたの場合もそういった「世の中の負の部分に対するアンテナ」が立ちすぎている可能性があります。
まずは「腹の立ちそうなニュース」を徹底的にシャットダウンし、おキャット様動画、推しの顔など、好きなものだけ見てみるようにしてみてはどうでしょう。
そうすれば、公共の場でも嫌なものではなく、気分の良いものの方が先に目に入るようになるのではないでしょうか。

たとえ、ジジイに横入りされた瞬間も、おキャット様は可愛く、推しは尊いのです。それを差し置いて一日ジジイのことでムカつくというのはどう考えても不健康です。

目に映る悪を成敗できるのは、暴れん坊将軍や水戸黄門など、権力者そして若干の暴力を許された人たちだけです。
暴れん坊黄門でない人間は、成敗を考えるより、1秒でも早く忘れて、他の良いことに目を向けるよう努めた方が良いでしょう。

ルール違反

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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