キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

カレー沢薫のワクワクお悩み相談室 ブック・カバー
バックナンバー  1...1718192021 

カレー沢先生、恋愛に「隙」は必須アイテムなのでしょうか?

2019.04.05 更新

彼氏がすぐ出来る人が羨ましいです。私は初めて付き合った人と結婚しましたが5年で離婚、その後は誰かを好きになっても傷つくのが怖くて積極的になれず片思いばかり。しかも好きになった人は全員既婚者なので、積極的もクソもなく何も出来ませんでしたが。男性からアプローチされたこともありません。長年の友人には「あなたには隙がないから、男が近づくことができないのでは?」と言われます。先生、隙がないってどういうことだと思いますか?

「隙あり!」
世が戦国なら、今頃この掛け声とともに、心臓を抉られたり、胴と首が破局したりしています。そんなものない方が良いに決まっているのです。

もしあなたが、水龍敬ランドの人ぐらい隙だらけになり、今までモテなかったのが嘘のように大勢の男から猛アプローチを受けるようになったとしても、それは「隙がある女しか狙わない男」が群がっているにしかすぎません。おそらく、それはあなたの求めている状態ではないでしょう。

それに、今の日本は、水龍敬ランドの人みたいな格好をしている女を襲った男より、水龍敬ランドみたいな格好をしていた女を責める声の方がデカいのです。

例えが全然わからないという場合は、後で「水龍敬ランド」を人のいないところでググっていただくとして、わかりやすく言えば、鍵がかかってない家に入った泥棒より、鍵をかけ忘れた奴の方が悪いと言われがちなのです。

ご友人に悪気はないとは思いますが「男にモテたきゃ隙を作れ」というアドバイスは女性にとって非常に危険なものです。それを真に受けて隙を見せて、何か被害に遭ったとしても「隙を見せたお前が悪い」と言われるだけです。
よって、あなたに隙がないとしたら、むしろそれは良いことですので、無理に隙を作ることはありません。

しかし、隙がある人が悪いわけでもないのです。
日本は比較的平和な国であり、ゲリラ部隊に育てられたという人は少数派ですので、どちらかというと隙がある人の方が多く、「そんな酷いことをする人が自分の近く、まして知り合いにいるはずがない」という他人を信頼する人が多い国なのです。
「人を見たら呂布と思え」みたいな猜疑心しか育たない国より、隙があるのはよほど良いことであり、悪いのは、その信頼につけこみ悪いことをする人間なのです。

しかし、世の中では「悪いことをする奴がいるんだから、お前が気をつけるべき。さもなくばやられても文句は言えぬぞ」という弱い側に対して、乱世かよという、要求ばかりが叫ばれています。
気をつけることも大事ですが、「鍵が開いてても他人の家には入るな」「水龍敬ランドみたいな女がいても襲うな」と全員に教えるのが先なのではないでしょうか。

隙というのは、ないならなくて結構、ある奴を見てもつけ込むな、隙を突かれてしまった人間がいても責めるな、というものです。

つまり「とりあえずウイルスソフトを全部切ってみる」みたいな隙の作り方は危険でしかありません。
しかしあなたの場合、ソフトのフィルター設定が「全部シャットダウンする」になっているため、良いなと思った相手すら遠ざけてしまっているのではないでしょうか。

仲良くなりたいと思っていても、心を閉ざしていては、自分は招かれざる客だと思って相手は去ってしまいます。
よって誰彼構わず隙を作る必要はありませんが、意中の相手に対しては心を開く必要はあると思います。

しかし、あなたはおそらく「こいつに心を開いて大丈夫か?」というゴールからほど遠い地点から慎重になっているのだと思います。
確かに我々は夏休み中の高校二年生ではないので、恋愛で痛手を負った翌日でも、会社に行ったり、ゴミを8時までに出さなければいけなかったりします、むやみやたらに傷ついていては部屋で生ゴミが腐ってさらに生活が荒みます。
「恋愛したいなら傷つくことを恐れるな」などと言う奴は、おそらく召使でもいるんでしょう。

よって「出来るだけ傷つかない相手と恋愛したい」と思うのは当然です。
しかし、そこを吟味し過ぎると、どいつもこいつも呂布に見えてしまい、あなたのウイルスバスターが強化されるだけです。
よってまず「今見えていない地雷のことを考えるのはやめる」ことからはじめてはどうでしょうか。

「既婚者」というのは見えている地雷です。それに近づかないのは正しいです。

しかし「こいつ、付き合っている内は良いが、結婚した途端、私のことをサッカーボールと呼びだすのでは?」は、埋まっているかどうかさえわからない地雷であり、そこまで気にしていたら、誰にも心を開けません。

よって、現時点で、肉眼で見える地雷がないと判断した相手なら、多少心を開いても良いのではないでしょうか。

そしてその時も「私の脇腹あいてますよ」という隙を見せるのではなく、「自分、あなたと話すのが楽しい」という「好意」を見せる方が良いでしょう。
隙に近づいて来る人間より、好意を素直に受け取って近づいて来てくれる人の方が遥かに健全と言えます。

バックナンバー  1...1718192021 

作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

ページトップへ