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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、「友達の友達は友達」が正直しんどくて、どうしたらいいのでしょう?

2019.03.01 更新

住み心地の良い沼を見つけかれこれ5年程住んでいるのですが、沼で出会った友人関係で悩んでいます。それは「友達の友達は友達」制度です。
当方コミュニケーションに支障をきたしている為、友達の連れてきた友達とはうまく仲良
くできず、でも友人の顔に泥を塗っては……と、心地いいはずの沼で溺れかけています。
沼ごと引っ越したほうがいいのでしょうか。
カレー沢先生、ご回答よろしくお願いします。

コミュ障にとって「友達の友達」は鬼門中の鬼。三人でいるときはまだ良いですが、「共通の友達がトイレに行き、二人きりにされる10分」の間にコミュ障は30歳老けると言われていますし、そのまま老衰で寿命を迎えるコミュ障もいます。

つまり、あなたが今そのような状況に頻繁に曝されているとしたら、それは「命の危機」です。

沼での死因は「推しが尊すぎた」以外あってはなりません。
他の理由で死者が出たら、沼の質が下がります。自分のためにもそのジャンルのためにも、あなたのおっしゃる通り「沼から出る」ことも視野にいれて良いかもしれません。

ただこれは、趣味から卒業しろという意味ではなく、周りには「しばらく忙しい」とでも言って「一旦離れる」ということです。

何事も上手くいかなくなったら「離れてみる」ことが大事です。
仕事だったら「仕事なんだから我慢」することもあるでしょうが、「趣味なんだから我慢」などという事はないでしょう。趣味に「我慢」が必要になってきたら離れどきです。

離れたことにより気持ちが楽になり、他に良さげな沼を見つけられたならそれで良いですし、そうではなく手の震えや幻覚などの禁断症状が出たら、また沼の水を静脈に打ちに戻れば良いでしょう。

突然絶縁するのではなく、熱くなってきたからサウナを出て水風呂に入るぐらいの軽い感覚で良いのです。まずは「クールダウン」が大切であり、そこからまたサウナに戻るか、そのまま銭湯から出るか決めればよいのです。

おそらく、あなたは5年もその沼に浸かっているので、沼に対する義理や義務、また「多少居心地は悪くなってきてるけど、新しい沼を探すのも、なあ?」という倦怠期カップルのような情を感じていると思います。
しかし沼というのは本来懐が深いものであり、沼を窮屈にするのはいつもそこに浸かっている人間たちです。
沼自体は出て行くあなたを「勝手にしやがれ」と止めもしませんが、「戻る気になれば、いつでもおいで」と言ってくれる「作詞・阿久悠」のような奴なのです。

「離れて大切さに気づく」ということはありますが、相手が人間の場合、こちらの都合だけでは元鞘には戻れません。ですが、そんなわがままを快く受け入れてくれるのが沼なのです。

よって、去るのではなく、より深く沼に沈むための「助走」として沼から離れるぐらいの気持ちで良いのです。
また「行ったきりなら、幸せになれ」と阿久悠も言っています。

しかし、あなたが今の沼に疲れを感じているのは、沼自体ではなく、やはり同じ沼に浸かっている人間との関係です。
それが理由で、沼を離れるのは少し惜しい気がします。

なぜなら「1人でも楽しいのが沼」だからです。

あなたの浸かっている沼が何なのかわからないので断言はできないのですが、「長縄跳び沼」など、絶対に1人では無理な沼でないかぎり、仲間がいないと楽しくない沼など滅多にありません。

私も口を開けばソシャゲの推しの話ばかりしていますが、実はその界隈で密につきあっている友達など1人もいません。

そんな仲間ゼロの状態でも沼が楽しいのかというと、「楽しい」のです。

確かに推しが尊すぎる時、肩を支え合いながら帰路につける仲間がいれば、と思う時もありますが、支えなく顔面から地面に激突しても、誰も助け起こしてくれる人間がいないのもまた一興なのです。
同じ沼の人間とケンカするのは良くありませんが、特に仲良くしなくたって、沼とは楽しいものなのです。

つまり、あなたが距離をおくべきなのは、沼自体ではなく、沼の人間なのではないでしょうか。「友達の友達は友達」制度はあなたの好きな沼にはなく、沼の人間が作り出したただのドロ沼であり、そこにまで浸かる必要はないのです。

人間、背負う荷物が増えれば動きが鈍くなります。友達だってある意味、荷物の一つです。増えすぎると重くなります。
そんな荷物を背負っていては、沼という時間、体力、金、全てを使うトライアスロン競技で戦えなくなるのは当たり前です。
せっかく5年も戦ったのですから、いきなりリタイアではなく、まず荷物を減らしてみることを考えてみてはいかがでしょう。

職場や学校ではないのですから、趣味の世界で1人になることを恐れてはいけません。
5年もあなたを楽しませてくれた沼なのですから、「今日は1人で来たんだけど」とドアをあけても快く受け入れ「いつもの」尊さをあなたの前に出してくれるでしょう。

もっと自分の沼の実力を信じていきましょう。

友達の友達は友達

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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