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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、SNSでの幸せアピールに辟易している私はどうしたらいいでしょうか?

2019.01.18 更新

カレー沢先生にお悩みです。 20代半ばを越え、SNSには結婚、出産の話題が増えました。なんとか流れに乗らねばと焦ってしまいます。SNSを見ないようにしても、幸せアピール合戦が激しいとどうしても目に入ってきます。幸せアピールだと思ってしまう自分が卑屈なのかとも思いますが、旦那や子供といった幸せ自慢への対処法と心持ちを教えてほしいです。

おキャット様でさえ、捕った獲物を人に見せに持ってくるのです。それより遥かに劣った下等生物である人間が同じことをやらないはずがありません。
敵将を討ち取ったら、その首を持ち帰って他の武将に「この首エモいっしょ」と自慢するなど、昔から人間は手柄を立てたり、何か良い事があったりすると、それを誰かに見せずにいられないのです。

むしろ、手柄や幸福は他人に披露してはじめて「完パケで納品」であり、どれだけ大きな吉事があっても「一生誰にも言うな」と言われたら、嬉しさも半減なのです。

しかし、常に「すごいっす」と自慢話を聞いてくれる舎弟を連れている人も少ないでしょうし、戦国時代でもないので手柄披露のために一席設けるのも難しいです。
そのため、自慢したいことがあっても自慢する場がないということが昔はよくありました。

しかし、今はインターネット、そしてSNSがあります。
SNSなら、わざわざ自慢話を聞いてくれる人間を集める手間もなく、ただドヤりたいことを書きこめば、あとは勝手に不特定多数の人間が、あなたのように羨ましがってくれるという寸法です。

つまりSNSは「敵将の首置き場」として最適なのです。
しかし、その首は置いた人間にとっては手柄や幸福でも、関係ない人間から見たらただの生首ですので、あなたが生首という名の他人の結婚出産報告を見て「グ、グロい…」と嫌な気分になるのは当然です。
よってまず、「友達の幸福を妬むなんて自分はなんて小さい人間なのか」などと思うのはやめましょう。
むしろ、生首を見て平然としている方がサイコパスっぽくて怖いです。少なくとも「人として当然」と思ってください。
SNS疲れ
このように、SNSが敵将の首を置くために作られたとしか思えない構造をしている以上、SNSをやっていて、生首という名の他人の自慢や幸福を目に入れないようにするというのは不可能です。

しかし「極力目に入らないようにする」ということは出来ます。
たとえリアル友達でも「こいつ首しか並べねえな」と思ったら遠慮なくミュートなどすればいいのです。
相手に気取られず相手を視界から消せるというがSNSの利点なのですから利用しない手はないでしょう。
私もSNSで同業者の成功などを目にすると全身から血を噴き出して死ぬので、「アニメ化」とか「重版」などのワードは最初からNGにしていますし、フォローしている同業者もサクセスした者から順次ミュートです。その結果私のタイムラインはかなり閑散としてしまいましたが、とにかく平和です。

そんなみみっちいことをしたくないと思うかもしれませんが、自慢話や幸せアピールをインターネットに書くこと自体、割と小さめな行為なので、そこはイーブンです。
そもそもSNSというのは自分の国なのですから、国王である、あなたの興を削いだ奴は追放で当たり前なのです。
SNSを見るのをやめられないなら、少しでも目と心に優しいタイムラインを自分で構築しましょう。

しかし、人間には「怖いもの見たさ」という、下等生物ならではの無駄な機能が備わっているので、台風の日に田んぼや海を見に行ってしまうように、よせばいいのに調子が良さそうな友人のSNSを見に行って、見事鬱の波に飲まれるという不可解な行動をとってしまうことがあります。

よってどれだけ自分のタイムラインをユートピアにしても、何故かわざわざそこから出て、地雷が埋まっている敵国の様子を見に行って爆死してしまうことがこれからもあるでしょう。

しかし、あなたが主に羨望と焦りを感じている、結婚や出産というのは言い方を変えれば、配偶者と子どもができることであり、この両者は「悩みの種」としても常に上位に挙がってくる代物です。

結婚や出産で幸せになることもありますが、それが原因で不幸になることもあります。
よって「結婚しました」「出産しました」という報告だけを見て「こいつ全クリしやがった」などと羨んだり焦ったりする必要はありません。

逆に彼女ら彼らは、新しい試練の入り口に立ったにすぎず「スタート地点が絶頂だった」ということもありえます。

それにSNSで幸せアピールしている人間も、実は内心不安で、自らの選択が正しかったと信じたいがために、SNSに載せて「いいね」という後押しを求めているとも言えます。

ここはひとつ、まだ「悩みの種」を持っていない身軽な者として、相手を崖から突き落とすつもりで「いいね」を押してあげる余裕を持っても良いのではないでしょうか。

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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