キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

カレー沢薫のワクワクお悩み相談室 ブック・カバー
バックナンバー  1...1213141516...28 

カレー沢先生、整理できない人間の動かし方を教えてください!

2018.12.21 更新

カレー沢先生、こんにちは。
庭の草むしりを望む旦那さんにコンクリ固めを提案し返す先生にお伺いします。
夫婦の話です。私「夕食を自炊して家で食べよう、あなたが料理したくないなら私がするが、皿くらい洗ってくれないか」→夫「コンビニごはんでよい」、私「ある程度部屋を片付けよう」→夫「散らかっててよい」、私「トイレをやるから風呂をあらってくれないか」→夫「シャワーでいい」など、ことごとく対案を示され、結局私がやっていたのですが、そろそろ堪忍袋の緒がキレそうです。どうしたらいいでしょうか。
ぜひ宜しくお願いいたします!
あむぴの女より

一瞬、相談すること自体がフェイクであり、安室透の女であるという意志表明こそが主旨ではと思いましたが、相談内容が影武者にしては本物感がありすぎます。

私も完全に安室透大好きっ子さんの旦那さん側の人間なので、実に耳が痛い相談です。痛いどころか読んだ瞬間耳が爆発したので、夫の「草をむしってくれ」という小言が聞こえなくなって快適なぐらいです。

おそらくあむぴLOVEさんは旦那さんに対し「その神経がわからない」と思っていることでしょう。何故そんな汚い部屋で生きていられるのか、三食ななチキで平気なのかと。

しかし、同じように我々もこう思っています、「神経質な奴だな」と。

つまり、これは「神経構造が違う生き物同士が結婚してしまった」という、かなり深刻な失敗例と言えます。

ですが、「失敗だった」と感じるのは、「繊細な神経」を持った側です。
私のように神経が「眠い」「腹が減った」「ウンコ出そう」の3本しかない人間側からすると、神経が細かい、つまり几帳面なタイプと結婚すると、自分が汚した部屋を片付けてもらえたりするため、むしろ「成功」です。
ただ、相手が我慢して一人でやってくれているうちはいいのですが、「あなたも私と同じようにやってよ」と言われ出すと、「なんだこいつ、神経質な奴だな、そんなこと気にするなよ、小うるせえ」と面倒がったりするのです。

このように、耳どころか全身爆破してやるしかない我々なのですが、私たちはムツゴロウのように泥の中で生きているのがデフォルトな生き物なので、「もっとキレイな水の中で生活した方がいいでしょ?」と言われても「え? なんで?」としか思わないのです。

よって、あなたがどれだけ小言を言っても、旦那さんに響くことはないと思います。むしろ、草をむしれと言われて、その必要がなくなるように庭をコンクリで埋めようとした私と同じように、掃除の必要をなくすために、家の物を全部捨てるという「池の水ぜんぶ抜く」ような極端な行動をとられる恐れがあります。
どちらにしても、夫婦関係は良くならず、むしろ悪化します。

しかし、旦那さんが「別にこのままでいいじゃん」と思っている「このまま」というのは「あなたが色々やっている状態」を指す可能性はあります。
「家は何もしなくてもこの状態なんだ」と勘違いして、「特別変える必要はない」と思っているのです。

よって、あなたも一度、何もしなくなってみてはどうでしょうか。

聞いた話ですが、旦那さんが突然仕事を辞めて「絶対働きたくないでござる」状態になったご夫婦がいました。奥さんの方は「じゃあ自分の収入でなんとか…」とはせず「自分も仕事を辞める」という方法を取ったそうです。「絶対に働きたくないでござるレース」の開幕です。
当然、金はない、腹は減るですが、奥さんは「お金ないね」「お腹減ったね」と言うだけで、絶対に自分が働いてなんとかしようとはしませんでした。そして結局、旦那さんの方が負けて、働きはじめたそうです。

あなたも旦那さんと「絶対に片づけないレース」を開催してみてはどうでしょうか。
もちろん、向こうの方が神経が雑なので、厳しい戦いになるでしょうが、さすがのムツゴロウも周りの環境が泥を越えて肥溜めになったら、動くでしょう。
一度、あなたが動かなければ、どれだけ生活が荒廃するかを見せることが重要です。それで向こうが「部屋汚くない?」などと言ってきたら、「そうだね、汚いね」とだけ言うか、「私は気にならない」と言ってやれば良いのです。

しかし、どれだけレースを続けても、一向に旦那さんが折れることなく、家ばかりがマッドマックスみたいに荒廃していくという場合は、潔く「諦める」という決断も必要です。

ムツゴロウと金魚が結婚してしまったのですから、お互い歩み寄るにも限界があります。

そんな「諦めの家」である我が家で取られている方法は、「ムツゴロウを隔離」です。

私の部屋は3分の2がゴミで、ゴミさんたちに「ちょっとすみません」と言って仕事をしている状態なのですが、その部屋が快適すぎるため、他の部屋に行くことがあまりなく、結果他の部屋が汚れません。
そして、片づけにうるさい夫も私の部屋に関しては「治外法権」として、ノータッチで入りもしません。

よって、あなたも旦那さんに好きにしていい「ムツゴロウスペース」を一つ与えてみてはどうでしょうか。

相手をどうにかしたいのはわかりますが、「生息可能環境が違う生き物と結婚してしまった」のですから、ある程度諦めていただきたい、とムツゴロウ側としては思います。
片づけ夫婦

バックナンバー  1...1213141516...28 

作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

ページトップへ