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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、セフレ断ちの方法を教えてください!

2018.11.16 更新

相談なのですが、相性が良いうえにお互い特定の人がいないために、5年ほどずるずると関係を続けてしまっているセックスフレンドがいます。そろそろ三十路に突入しますし、ちゃんとした彼氏を作りたいので、離れなくてはと思っているのですが、今の状態が気楽なこともあり踏ん切りがつきません。どうすればいいでしょうか?

セフレ

むしろこちらが、セックスフレンド同士ってどういう雰囲気なのか、何を話すのか、むしろ話さないのか、アポを取る時は最初から「一本ヤッとく?」とはっきり言うのか、小動物が何かの穴に入っているスタンプ一つで全てが伝わってしまうのか、などセフレという関係について質問攻めにしたいところです。

「セフレなる存在を作り、ダラダラと5年もつきあった、だらしない女が今更“ちゃんとした彼氏”など片腹痛い」などと言う人もいるかもしれませんが、セフレというものに縁がない人生だった私から見ても、あなたはかなり真面目なタイプだな、と思います。

本当にだらしない奴は、彼氏が出来てから「そういやセフレって切っとかないとまずいヤツ?」と質問するでしょう。仮にそこまででなくても、彼氏になりそうな雰囲気の男が現れてから初めて「今のうちにセフレを片づけておかねば」と考える人も多いでしょう。

片やあなたは、まだ影も形もない“ちゃんとした彼氏”のために身ギレイにしておこうというのですから、将来の旦那様のために花嫁修業をする昔のお嬢さんのごとく真面目であり、逆に「古風」と言っていいかもしれません。

このようにセフレを切りたい理由が「できるかどうかわからない、非実在の“ちゃんとした彼氏”のため」という、神経質な推理小説ファンなら激怒するような「動機弱すぎ」なため、今のように「気楽な関係も捨てがたい」と考えている状態では絶対に切れないと思います。

よって、「“ちゃんとした彼氏”を作りたい」というあなたの意志が、「絶対“ちゃんとした彼氏”作るマン」ぐらいに固まるまで、下手にセフレを切ろうとしない方がいいような気もします。

意志がフニャフニャなまま、相手に「“ちゃんとした彼氏”作りたい的な今日この頃だから、そろそろあなたと離れた方がいんじゃねみたいな?」とクッタクタな提案したところで、「“ちゃんとした彼氏”の当てはあるのか?」→「特にない」→「じゃあそういう男が現れるまで今のままで良くね?」→「せやな」となるだけでしょう。さらに、5年も良い関係だったセフレとの空気がピリッとしてしまう、という意図しない事態に発展しかねません。
そのあいまいな提案に対し、「じゃあお前に彼氏ができたら俺は身を引くよ」という話になると、いざ彼氏ができたときに相手がグズり、彼氏とセフレの並走時間ができてしまう恐れもあります。
その並走事実が後々バレると、ちゃんとした彼氏とも別れることになりかねません。

一方で、5年間もセフレと良い関係を築いてきたとのことですので、あなたにとって男性との距離感はセフレぐらいがベストという可能性があります。

それは別に悪いことではなく、誰しも向き不向きがあるので、「ちゃんとした交際に絶望的に向いてない人」ももちろん存在するのです。
よって、5年つきあったセフレを切って得た“ちゃんとした彼氏”との関係が、セフレよりも良いものになる保証はありません。
あなたが「セフレの方が良かったわー」と額を叩くだけならいいですが、同時に、あなたの“ちゃんとした彼氏”が「ちゃんとした交際に絶望的に向いてない人と交際してしまった人」となり、不幸が一つ増えるということも忘れてはいけません。
“ちゃんとした彼氏”が欲しい理由が、「いい年なんだから」とか「セフレは不純」というような一般論に押されてのことなら、もう一回それが「あなたにとって正しいことなのか」を考え直してもいいかもしれません。

もちろんあなたは、いもしない本命彼氏に義理を通そうとするぐらい真面目な人なので、本当はセフレより“ちゃんとした彼氏”を持つ方が向いている可能性は大いにあります。

それに、「深淵をのぞくとき、深淵もこちらをのぞいている」のと同じように、あなたが「“ちゃんとした彼氏”作らないと」と思っている間に、相手も「本命彼女を作らねば」と思っているかもしれません。深淵の方は、あなたがアホ面をして「でも今の関係も捨てがたいし~」とずっと同じ地点を凝視している間に、すでに行動を起こしているかもしれません。

つまり、突然「俺、彼女出来たから」と切られる恐れも十分あるということです。そうなったら「損した気分」になってしまいますし、どうせ離れるとしても「切られた」より「自分から切った」方が自我を守れます。

よってまず、何故“ちゃんとした彼氏”を作りたいのか今一度考え、その上で“ちゃんとした彼氏”を作りたい気持ちをもっと固めるのが、急務ではないでしょうか。
そこがガチガチになれば、すぐに行動を起こす気になるでしょうし、セフレとの別れ話もグダグダにならず、セフレに対しても、今はどこに存在するかもわからない“ちゃんとした彼氏”にも筋が通せるというものです。

逆に、どれだけ考えても気持ちがフルーチェより固まらないという場合は、「今はステイ」でいいのではないでしょうか。フルーチェを全身に塗りたくって動くと部屋が汚れるように、気持ちが固まらないまま動いても、セフレとの関係が悪くなっただけなど「身辺整理のつもりが、かえって散らかる」という事態になりかねません。

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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