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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、義両親がしんどすぎる私はどうしたらいいんでしょうか?

2018.10.19 更新

カレー沢先生に相談です。義両親が黒案件のため縁を切りたいです。義両親の土地資産処分により夫にも金が入りましたが、その夫の金を義母宛に毎年数百万、15年間振り込むよう要求してきました。義両親は資産家です。どうやって縁切りしたら良いでしょうか?なお別居です。

私は実の両親が毒親というわけではなく、義両親が黒いというわけでもありません。どこの一族にも必ず一人はいるという「職業がトレジャーハンター」のおじさんも私の親戚には知っている限りではおらず、どちらかというと自分がトレジャーハンターと言われている側なので、身内にヤバいのがいる、という悩みには「大変だなあ」と一種他人事のような感想を抱いてしまいますが、どんなにデキた親や義両親でも「必ず死ぬ」ことは決まっていますし、その前後でゴタゴタすることもあるでしょう。親や義両親との関係というのは、部屋の隅にたまっているホコリから生まれたというのでなければ、大体の人に関係ある話です。

まず土地資産処分のお金に関しては、一度専門家を挟んだ方が良いのではないかと思います。
費用はかかってしまいますが、散髪代をケチってセルフカットをしたら、いつの間にか前髪が消滅していた、ということもよくあります。
土地とか金の難しい問題ならなおさらで、素人が動いて前髪という名の大金を失うリスクを負うよりはプロに任せた方が間違いがないでしょう。
さらに、愚痴も含む話を聞いてもらえる相手も出来て一石二鳥です。
「わかる」しか言わない友人に相談しても話は進みませんし、タダで愚痴られる友人も不幸でしょう。
むしろ、この問題については私に相談すること自体最大の無意味です。

「縁を切りたい」に関しては義両親に対し、息子である旦那さんがどういう考えかによって、対処法は大きく異なりますが、やはり「縁を切る」というのは簡単なことではないと思います。

よって、絶縁状を矢文で送るなど、縁を切るための攻勢にでるのではなく、まずは相手の電話、メール、訪問など全て無視という「徹底的な逃げ」をやってみる方が良いのではないでしょうか。

「逃げる」というと問題から目を逸らしていると思われがちですが、例えば道に犬のフンが落ちていたとして、そいつと「真っ向から勝負しなければいけない」「逃げたツケがいつかやってくる」ということがあるでしょうか。避けるのが一番でしょう。
このように相手によっては「逃げる」「避ける」が最善の場合だってあるのです。

相手が家族だと「向き合って話し合うべき」みたいな結論になりがちですが、今では「毒親」という言葉も浸透し「実の親でも好きになる必要はない」「逃げて良い」という考えが広まりつつあります。
実親でもそうなのですから、義両親という、たまたまパートナーの製造元がそいつらだったというだけの相手とそこまで真剣に向き合って白黒つけなくてはいけないということはないでしょう。
ポテトチップスが好きなら、そのじゃがいもを作った農家のおっさんとも仲良くしなければいけないということはありません。

今すぐ完全に、何だったら法律上明確に義両親と縁を切りたいという気持ちもわかりますが、そうしようとしたら、まず向き合いたくない相手と向き合わなくてはなりません。さらに負けてダメージを負っただけ、という最悪な結果にもなり得ます。

よって、今は冒頭申し上げた通り「縁を切る」のではなく「逃げる=縁を見えなくなるまで薄くする」方に注力した方が良いのではないでしょうか。

それにこの問題は逃げ続けることによりいつかなくなることが決定しています。
最初言った通り、どんな親や義両親でも「いつか死ぬ」からです。
それが「よっ待ってました!」なあなたは、そう言った意味では恵まれているとも言えます。

つまり「K・O」ではなく「タイムアウトによる判定勝ち」を狙いましょう。
先のこと過ぎて気が遠くなるかもしれませんが、世の中には終わりが見えない問題も山ほどあるのですから「確実に終わりが来る」と思うだけでも多少は楽になるのではないでしょうか。

あとはあなたがどれだけ強い気持ちで逃げ続けるかです。
幸い別居なのですから、逃げようと思えば逃げられると思います。ですがそこで「そうは言うても夫の親やし」と中途半端にLINEに既読とかつけてはいけないのです。
「家族」というのは良いものでもありますが「親なんだから人に任すのではなく自分で介護しなければいけない」とか「子なんだからどんな悪事をしでかしても許してやらねばならない」など、人を自縄自縛に陥らせる関係でもあります。

何度も言いますが、相手は義両親というただの夫の製造元ですので、「作品は好きだけど、ツイッターでの作者の発言がどうにも好きになれないのでフォローをはずした」ぐらいの感覚で無視しましょう。

そんなあなたを見て、夫の親に対して、と白い目を向ける人もいるかもしれませんが、先のワールドカップ、日本対ポーランド戦を思い出してください。
私は見てないのですが、日本は確実に予選突破をするために、正面から戦うのではなく、時間いっぱいボールを回し続けたといいます。
その戦略は当時「セックスレス夫婦を見ているようだ」と揶揄もされました。しかしルール上許されていることですし、そこでそうしたからこそ、感動の本戦につながったのです。

正々堂々が信条のスポーツで許されていることが、義両親との戦いという凶器攻撃と場外乱闘ばかりの世界で許されないはずがありません。

今はまだ予選です。感動の本戦のため、まずは制限時間まで守りに徹しましょう。

義両親

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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