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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢“持ち家”薫先生、“賃貸派”夫をカンオチさせる方法を教えてください!

2018.07.20 更新

夫婦と子の3人で賃貸物件に住んでいます。私は家を建てるかマンションを買うかしたいのですが、夫が渋ります。注文住宅を建てられた先生、夫を説得するためのアドバイスをお願いします。

もし旦那さんが大して自我のないタイプなら、住宅展示場とかハウスメーカーがやっているイベントに連れて行くことをお勧めします。
あのような場所で、塵一つない、テーブルにフルーツ盛りなんかが置いてあるモデルルームを見てしまうと、人はIQが2ぐらいになってしまうので「このフルーツ盛りは自動で置かれるものではない」ということすらわからなくなってしまいます。

また、そこには必ず「営業」がいます。
冷静に考えれば、明日をも知れぬ世の中で、数千万円の代物を何十年ものローンで購入するなんて正気の沙汰ではありません。
つまり、ハウスメーカーの営業は「人間を正気じゃなくさせるのが仕事」という、営業の中でも特に強い部類、ドラクエでいえば「エビルマージ」みたいなのが出てくると思った方がいいでしょう。住宅展示場はバラモス城なのです。

私たち夫婦が何故家を買ったかというと、自我のない二人が、布の服にひのきの棒でこのバラモス城に挑んだ結果に他なりません。
よって、素人のあなたがどれだけ熱心に説得に当たるより、モデルルームに連れて行って「上質な暮らし」を見せながら、悪魔の手先みたいな営業を味方につけて説得した方が効果的です。

賃貸VS持家

しかし、旦那さんが渋るのにも相応の理由があります。
実際、マンションや家を買うのが必ずしも正しいとは限りません。
旦那さんにアイマスクとヘッドフォンを装着させ住宅展示場に連行する前に、今一度メリット、デメリットを考えましょう。

まずデメリットは、いろんな意味で「大きな買い物」というところです。
金額も、それを支払う年月も実に壮大で、スケールがでかすぎます。つまり、何かあった時、凄まじい重荷になるのです。
例えば離婚。もちろんそんなことはないと信じたいところですが、我々の人生一寸先はダンサーインザダークです。離婚という大きなもめ事の中に、「家をどうするか」というさらに巨大なもめ事がログインすると、面倒くさくなって「もうこのままズルズル結婚生活を続けようか」となってしまいかねません。
つまり、持ち家を持つと「全体的にフットワークが重くなる」のです。

これは、離婚に関してだけではありません。
私の知人の話なのですが、という体(テイ)のモロ私の話なのですが、私の家は夫との共同名義です。買った当時は私も会社員をしておりまして、当然ローンの支払い計画もその当時の二人の収入から計算されています。
ローン年数は確か27年ぐらいだったのですが、5年払ったところで、私が会社を辞め無職になってしまいました。

つまり、Right now、持ち家が寝起きのラーメン二郎ぐらい重くなっています。前述の通り、今の世の中、何十年も何事もない、という方がレアケースです。
何かあった時、賃貸なら家賃の安い所に移るなど、小回りが利きますが、持ち家だとそうはいきません。むしろ「せっかく建てた家だから」と「絶対持ち家死守太郎」になってしまい、他全てを失って、最終的に家も失うという事態になりかねません。
夢のマイホームは、有事の際には大きな悩みの種となり、家を買ったことによって夫婦仲が悪くなり、だが離婚するにも家が重荷、という無限ループになることすらあるのです。

もちろん、メリットもあります。
まず、お子さんの存在が大きいと思います。賃貸だと狭いというのもありますし、子どもというのは全員フリースタイルのラッパーなので、突然思いついたリリックを、クレヨンで壁に刻んでしまったりします。
私の家には、子どもはいません。というか、子どもを持つ予定もなかったのに、二階建ての注文住宅を建て「子ども部屋」という名目の巨大なデッドスペースを5年保有しているという「貴様らは自分の人生を何だと思っているんだ」という状態なのですが、子どもがいない代わりに「私」がいるため、先日自室の床を腐らせました。
これが賃貸だったら、敷金とかかなり厄介なことになりますが、持ち家でしたら、腐らそうが壁を破壊しようがある程度自由です。
ただ、賃貸だと無限に家賃を払わなければいけないが、持ち家だとローンを払い終わればあとは安心だとは思わない方が良いです。マンションなら共益費などは永遠に払わないといけませんし、一軒家でもローンが終わるころには修繕が必要になっていますから、改修費のローンを新しく組むことにもなりかねません。居住費に関してはどちらを選んでも「エターナル」だと思った方が良いでしょう。

重要なのは、ネガティブだと「どちらを選んでも絶対後悔する」ということです。
私が今、家を買わずに賃貸に住んでいたら安穏な生活をしているかというと「もっと若いうちに家を買っておけば良かった。今から買うことはできない。もうおしまいだ」と後悔しているに決まっています。

こういう奴は、どちらを選ぼうが、自分の選んだ道のデメリットばかり見て後悔するように出来ているのです。
「賃貸VS持ち家」論争が今も続いているのは、確実な正解が存在しないからです。

だとしたら、大切なのはどちらを選んだかではなく、選んだ後「こちらが圧倒的正解だった。逆を選んでいたら、今頃村ごと燃やされて一家全滅だった」と思うことではないでしょうか。

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著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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