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カレー沢薫のワクワクお悩み相談室

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

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カレー沢先生、「部屋と推しグッズと私」状態が寂しすぎてどうしたらいいでしょうか?

2018.07.06 更新

長く一人暮らしなのですが、最近寂しいです。同居できる家族はおらず、長年連れ添った猫は天に召され、新たにお迎えする気はありません。推しグッズを玄関に設置することも考えましたが、来客時を想像すると踏み切れず……。一人暮らしの寂しさをどう紛らわすべきか、ご助言をいただけたら幸いです。残業あがりが超絶虚しいのです……。

まずは、おキャット様のご冥福を祈り165時間の黙とうを捧げます。これは落ち込み不可避であり、精神的にもろくなるのも致し方ありません。

でも、落ち着きましょう。
統計上、人間寂しい時には「下手を打ちやすい」という傾向があります。
寂しさ故に、熟慮することなく恋愛や結婚をしてしまったり、元カレに「久しぶり? 何してた?」などという上目遣いアヒル口LINEを送ってしまったりするものです。
そういう行為は、寂しい女につけこむハゲタカ野郎や、喪黒福造を呼び寄せます。

よって、「ドーン!」となる前に、「まだあわてる時間じゃない」と自分の心に喪黒ではなく仙道を呼びましょう(最近この例が若者には通じないという驚愕の事実を知ったので、わからない場合はカスのようにググってください)。

人は孤独に苛まれると「孤独=一人でいるから」だと判断し、それを打破するために他者の存在を求めてしまいがちです。
しかし、あなたにはすでに「長く一人暮らしをした」という実績があります。
まず、ここをもっと評価しましょう。一人暮らしというのは、生活費の捻出から、家事雑事まで全て一人で行う、というかなりすごいことなのです。
ビンの蓋が固くて開かない時、男手がある家なら安易に開けてもらうことが可能ですが、女一人暮らしの場合は、開けられるようになるまで筋トレするか、逆にビンを破壊するかしかありません。

そんな、ガラスの破片まみれの「ごはんですよ」を食(は)んできた強い女なのですから、孤独も、開かないビンの蓋や点滅している蛍光灯の取り替えと同じように「やろうと思えば一人でなんとかできるもの」と考えましょう。

具体的に寂しさを紛らわす方法ですが、まず「人間の脳は割とちょろい」という事実を利用します。
私の知人女性も、暮らしている部屋が一人暮らしにはあまりにも広く、あなたと同じように会社から帰った時、凄まじい孤独を感じたそうです。
そこで彼女が何をしたかというと「Spotifyを爆音で鳴らし続けた」そうです。
それを続けていたら孤独感はなくなり、ついには音楽も鳴らさなくても平気になったそうです。

つまり、「誰かあたしを抱きしめて」みたいな気持ちになっていたとしても、脳みそ的には「何か音がしてりゃいいよ」程度のことだったりするのです。

よって、私の知人女性のように、部屋に音楽を絶やさないようにしてみる、とか、玄関に推しが置けないなら、シンバルやほら貝を置くなどし、帰宅した瞬間鳴らしてみてはどうでしょうか。スペースに余裕があるならドラがおすすめです、ドラを一発鳴らせば、寂しさなんて割とすぐに霧散します。

また、あなたには「推し」がいるという大きなアドバンテージがあります。
広辞苑の印刷ミスで書かれてはいませんが、「孤独」の対義語は実は「推し」なのです。
もちろん、人目もはばからず、推しを玄関に置けというわけではありません。平素は隠しておいてもOKです。ただ要所で取り出すのです。

その要所とは「食事」です。

「孤独のグルメ」は良いですが、一人暮らしの部屋で一人でご飯を食べる「孤食」は寂しさを加速させるものとして問題になっています。
その対策として「自分の対面に鏡を置いて自分の顔を見ながら食べる」という方法が提唱されています。
まさか、そこまで単純じゃねえよ、と思うかもしれませんが、実際鏡を置いた方が食事をおいしく感じたという結果が出ています。我々の脳は「まさかそこまで単純」なのです。

一人暮らし寂しさ

「自分(テメェ)のツラでも目の前に顔があれば飯がうまい」というシンプルヘッドな俺たちです。推しが目の前にいればおいしくないはずがありません。ぜひ食事の際には対面に推しグッズを置いてみるようにしましょう。数が多い場合はあなたを囲むように配置してもいいかもしれません。

それ以前にあなたは現在「ないもの」ばかりに目が行って孤独になっているのではないでしょうか。
あなたには一緒に暮らす家族はいないかもしれませんが、同居家族がいる人間は、家族を得た代わりに「自由」を失っていたりするものです。逆にあなたも孤独の代わりに何かを得ているはずであり「なにもない」なんてことはないでしょう。

全てを得るのは不可能なので、ないものの数を数えるよりは、今あるもの、むしろ一人だから出来ることに目を向けた方が建設的です。

とりあえず、休日を1日全裸で過ごしてみてはどうでしょう。これは同居家族がいるとなかなかできません。ついでに、尻太鼓にも挑戦すると、音も鳴らせて一石二鳥です。

今後一人じゃなくなる可能性もあるのですから、今の孤独を「チャンス」と捉え、いろいろと一人でトライしてみることをお勧めします。

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作品について

著者プロフィール

カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

1982年生まれ。漫画家・コラムニスト。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビュー。SNSでは“自虐の神"と崇められ、20本近くの連載を抱える人気作家。近刊はエッセイ『女って何だ?』(小社)。現在クラウドファンディングでコラボカフェの開店を企画中。

作品概要

人間関係、金銭問題、趣味沼……
読者から寄せられる様々なお悩みにカレー沢先生が答えます。

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