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名誉男性とよばないで

碧野圭(あおの・けい)

名誉男性とよばないで ブック・カバー
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第16回

2017.09.13 更新

 岡村が指定したのは、飯田橋駅の東口近くにある居酒屋。会社とは反対方向にあるので、あまり来ることがない。客席を半個室に区切っていて、密談には適している。長谷川と会った店と同じような内装だ。
 最近はどこの店も造りは似ているなあ、と駒子は思う。
「お待たせ」
 岡村は、五分ほど遅れてお店に現れた。
「いえ、私もいま来たところ。とりあえずはビールでいいかしら」
「ええ、それから、フードも適当に頼んで」
 注文が終わってビールが来るまで、なんとなくふたりは黙っている。その沈黙が気づまりで、ビールが運ばれてきたところで駒子が、
「じゃあ、乾杯しましょうか?」
 と、問うたが、
「べつにいいんじゃない? お祝いするわけでもないし」
 と、そっけない。それでふたり黙ってビールに口をつける。その後、お通しやら、注文した食べものがいくつか運ばれたところで、
「じゃあ、そろそろ本題に入りましょうか」
 と、岡村が話し出した。
「あなたの方にもすでに話はしたそうだけど、高橋くんが『俳句の景色』の編集長になりたいそうね。そちらも困っているから、渡りに船だそうだけど」
 いきなり切り込むところが岡村らしい。
「ええ、今日言われてびっくりしたのだけど、そちらの事情もおありでしょうから、簡単にはいかないだろう、と高橋くんには言ったのだけど……」
「で、彼が欲しいの? 欲しくないの?」
「そりゃ、欲しいわよ。こっちは人材不足で困っているんだから」
「だったら、最初からそう言えばいいじゃない。いい人ぶらないで」
「いい人ぶるなんて、そんな」
 岡村の言い方はこっちに喧嘩を吹っかけているみたいだ、と駒子は思う。
 岡村にとって面白くない話だとはいえ、ビジネスなんだからそんなに感情むき出しにしなくてもいいのに。
「まあ、こちらも高橋に対しては失望したのも事実だから。彼には電子書籍やHPの方の仕事をやってもらおうと思っていたのだけど、若いのにアナログな人間だったのよ。電子書籍とかネットビジネスについて、まるで知識がないの。だから、企画のひとつも上げられないし、どうしようか、と思っていたのよ」
「だけど、本人のやる気があれば、なんとかなるんじゃないの?」
「本人も勉強します、って言ってるけど、根っから好きな人間にはかなわないわね。高橋より彼の部下の栗原の方がいろいろ知ってるし、企画もどんどん出してくる。だから、栗原の方にまかせた方がやりやすいのよ。だから高橋をそっちが引き取ってくれるなら、それでもかまわないわ」
「だったら、そうさせてもらえると助かるわ。こっちはアナログな雑誌だから、むしろアナログな人間の方がやりやすいし」
 部下のことを未練なく切り捨てようとする岡村に、駒子はざわつくものを感じていた。いくらなんでも、異動して二カ月も経たないのに「見込み違いだった」と言われる高橋が可哀想だ。
「でも、ただで、とは言わないわ」
 岡村の目がきらりと光る。
「どういうこと?」
「そちらに高橋をあげるから、代わりに花村をこっちにもらえないかしら」
「えっ、花村を?」
「だって、花村自身が言っていたわよ。あなたは花村のことを信用してないんじゃないか、って」
 寝耳に水だった。むしろ、今の部署では花村をいちばん頼りにしているのに、どうして彼女はそんなことを考えたのだろう。行き場のない彼女を引き取った、そのことに感謝されても、不満に思われる筋合いはないのに。
「それは、ほんとに花村が言ってたことなの?」
 花村のことを一番信用していただけに、駒子はショックを隠せない。
「ええ、彼女はいろいろと話してくれるからね。あなたが長谷川さんのことをスカウトした話も、彼女から聞いたわ」
「えっ、そのことも」
 噂の出所は長谷川ではなく、花村だったのか。
 駒子の胸は重く沈む。
 どちらにしろ、嬉しくない事実だ。
「知らなかったみたいね。彼女は頼みもしないのに、そちらの状況を私に教えてくれるの。まるでスパイみたいにね」
「それは……なぜ」
「さあ。あなたの部署がダメになった時、私の方に鞍替えしたいからじゃないかな。私の覚えをめでたくしておきたいんでしょう。あの子なりの処世術よね」
「信じられない。あの子は、権藤さんに逆らっても自分を通そうとする芯の強い子だと思ってたのに」
 駒子はそこが気に入っていたのだ。長いものにも巻かれない、そういう強さ、自分を持っている子だと思っていたのに。
「ああ、あれね。権藤さんを嵌めようとして失敗したやつ」
 岡村がふっと鼻で笑った。
「えっ、どういうこと?」
「知らなかったの? まあ、あなたはあれよね。いろいろ世間に疎いから。煙草吸うわよ」
 そう言って、岡村はバッグから煙草を取り出した。そして、部屋の隅のカウンターに置かれている灰皿を取って自分の前に置いた。
「あのセクハラ事件はでっちあげってこと?」
「そうじゃないわ。権藤さんが花村にまとわりついたのは事実。花村の自宅まで押し掛けたのもね。彼女が困っていたのはほんとうの話。まあ、自分の部下にそういうことを平気でやる男だから、訴えられたのは自業自得。いつかは刺されると思っていたけど」
 岡村は煙草に火をつけた。赤いマニキュアの施された指に、細い煙草が決まっている。まるで古い映画のワンシーンのようだ。
「それを訴えるってことが、権藤さんを嵌めるってことになるの?」
「後ろで糸を引いていたのが、沢崎だからね」
「沢崎さん? どうして」
 思わず声が大きくなった。沢崎は花村のかつての上司だ。セクハラ事件の後、加害者で上司の権藤と被害者で部下の花村に挟まれて困っていた。それで、花村を引き取ってくれ、と自分に頭を下げた。
 それなのに、沢崎が黒幕ってこと?
「花村とできていたのは、権藤ではなく沢崎。権藤がしつこく花村に絡んだのも、それを知っていたからよ。花村が清潔な女じゃないと思っていたから、自分が手を出してもいける、と思ったんでしょうね」
 突き放したように言う岡村。
「それで、花村に、権藤部長を訴えるように沢崎さんが言ったってこと?」
「花村を口説くとき、権藤が沢崎との関係をタネに脅したらしいから逆襲に出たってことだけど、同時に権藤がいなくなれば、沢崎が昇進するチャンスでもあったわけだし。それで権藤を訴えるようにそそのかしたのよ」
「それは……ほんとうなの?」
「ほんとうよ。私は権藤部長から直接聞いたからね。さすがに、ほかの人間は知らないみたいだけど」
 岡村は紫煙を口から吐き出した。いつもなら気になる煙草の煙も、ショックで気持ちが固まっている駒子にはどうでもよかった。
「沢崎の目論見では権藤部長が飛ばされ、後釜に自分が座る気だったんでしょうね。だけど、現実には権藤部長がそのまま残留。実際にやっちゃったわけじゃないし、それだけ今の社長は権藤を買っていたってことでもあるし。それで沢崎は花村の処遇に困ってしまったのよ。自分が部長になれば花村のことをかばってやれるけど、権藤が残留している以上それはかなわないし、それどころか権藤にどういう逆襲をされるかわからない。それであなたに押し付けたってわけ」
「そういう……ことだったの」
 ほかの課長たちはそれを知っていたのだろうか? 自分だけが何も知らないお人よしだったのだろうか。
「だけど……沢崎さんはそのままのポジションに残ったのね。権藤さんはよくそれを許しているのね」
「そりゃ、沢崎の仕事の能力を買っているからよ。花村の存在は沢崎の弱みでもあるし、追い出そうと思えばいつでもできる、それより利用した方がいいって思ってるのよ」
 そういうことか。だとしたら、権藤部長は自分が思っていたよりもっとしたたかだ。
「頼みもしないのに花村がスパイじみた真似をして、私にあなたのことをいろいろ御注進してくれたのも、そういうことがあったから。あなたは潔癖だから、自分が沢崎に利用されたことを知ったら、怒って追い出されるだろう、って思ってるみたい。それで、万一の時のための保険として、私に近づいたのよ」
 花村がスパイ。
 自分のことを、いろいろ岡村に訴えていた。
 今日聞いたことのなかでも、駒子にはその事実がいちばん重かった。
「それで、あなたは花村を引き取るつもりなの?」
「それもいいかもね。弱みも握っているから、私の言うとおりに動いてくれるでしょうし。高橋よりは使えそうだし」
「高橋くんの代わりに、係長にするつもり?」
「とんでもない。そこまで優遇するつもりはないわ。私の場合、沢崎よりも権藤部長といい関係でいたいからね。こっちに来たいって言うんなら受け入れるけど、だからって甘やかすつもりはないわ」
「そうなの」 
 だとすると、花村が岡村の部下になっても、いい目にはあわないだろう。自分を裏切っていた部下だ。そこで辛い思いをすればいい。
 それはそうなのだが。
「ね、悪い話じゃないでしょ? お互い期待外れの部下を手放すチャンスだし。ね、そうしましょうよ」
 岡村の目が、きらりと光った。まるで、獲物を狙う鷹の目のようだった。

「それで、駒子さんはどう返事したの?」
 達彦が駒子に尋ねた。家に帰って、駒子は今日聞いたことを打ち明けていた。
「ちょっと考えさせてくれって。聞いたことがすごくショックだったし、まだ気持ちの整理ができていないから」
「そうだよね。ほんと、人は見掛けによらないね。沢崎さんって昔いっしょに仕事したことあるけど、そんな嫌な人じゃなかったよ。俺ら、フリーの人間に対しても親切だったし。権藤さんよりもよほど仕事はしやすかったけどな」
「まさか、権藤さんと三角関係だとはねえ」
 駒子は溜息を吐く。そういう噂話が嫌いで、自分は聞かないようにしていた。彼らの関係をみんなは知っていたのだろうか。だから、花村を引き取るのを拒んだのだろうか。
「沢崎さんって、奥さんいるんでしょ?」
「そうだけど、何年も前に別居して、いまは離婚調停中のはずよ。だから、ほかの女性に心惹かれても無理はないとは思うんだけどね。それがこんなことになるとはねえ」
 駒子は、薄くなった頭頂部が見えるほど自分に頭を下げた沢崎のことを思い出した。
 あの頭に、私は哀れを感じたのだ。
  それで、花村をなんとかしてやろう、と強く思ったのだ。
 それが原因で、自分は『名誉男性』という不名誉な言われ方をすることになったのだけど。
「何より情けないのは、そこまでしたのに、花村さんが私のことを信用していなかったってことよね。自分よりも岡村さんの方が頼りになるって思ってたってこと。彼女こそ、使えないって思った部下はすっぱり切り捨ててしまうタイプだというのにね」
「おそらく、気の弱い子なんだろうね。だから、会社内で生き残るために、必死なんじゃないの?」
「それはそうかもしれないけど……」
 だからって、世話になっている上司を裏切るような真似をするなんて。
「たぶん、駒子さんがフェアな人間だから、不安になったんだろうね」
「フェアだから、不安?」
 駒子には意味がわからなかった。達彦は、小さな子どもを見守るようなやさしい目で駒子をみつめている。
「駒子さんは自分についてきた花村さんも、ほかの部下も差別せず扱っていただろう?」
「もちろん、そうよ。だって、みんな等しく部下だもん」
「それが心配だったんじゃないかなあ」
「どういうこと?」
「男の部下だったらそれでいいけど、女の人って、自分だけ特別って思ってほしいってとこがあるじゃない。自分は異動してまで忠誠心をみせたのに、駒子さんはそうでない部下と変わらない扱いをする。それが不満っていうか」
「そうなのかなあ」
 職場でえこひいきをしないのはいいことじゃないだろうか。
「花村さんは自分のことをもっと親密に扱ってほしかったんだよ。『あなただけは特別よ』って、駒子さんに言ってほしかったんだよ」
「無理無理、私、そういうことを部下に言えるタイプじゃないから」
「そこが駒子さんのいいところだと思うけど、花村さんから見ればドライな上司、自分のことを評価してくれない、って思っていたんだろうね」
 駒子ははっとした。岡村に言われた言葉を思い出したのだ。
『だって、花村自身が言っていたわよ。あなたは花村のことを信用してないんじゃないか、って』
 それは、そういうことだったのか。
「そんなことはない。いまの部署ではいちばん頼りになる部下だと思っていたのに」
「だったら、それを言えばよかったんだ。そうすれば、彼女は安心して駒子さんに尽くしたと思うよ」
「そうかなあ」
「そうだと思うよ。ある種の女の人って、そういうところで動くから」
 ある意味、それが正しいのだろう。自分が男社会で闘ってきたというなら、達彦もPTAやらご近所の会合やらで女社会と格闘してきた。おんなごころは駒子よりわかっているかもしれない。
「それで、駒子さんはどうするつもり? 花村さんのことが嫌いになったから、自分のとこから追い出すの?」
「そういう言い方って、ないんじゃないの? そりゃ、いままでみたいに信頼はできないし、このまま置いておくっていうのもしゃくな気がするし……」
 だけど、花村の力が欲しいのも事実だった。先日、彼女はいい提案をしてきた。社長から言われた、レインボーホールを使ったイベントについての提案だ。それを実行できれば、新しいビジネスの突破口になるかもしれない。だから、頑張って実現しよう、という話をしたばかりだったのに。
「決めるのは駒子さんだ。高橋くんとのトレードを受けるのもよし、断るのもよし。よく考えて結論を出すんだよ」
「うん、わかってる」
 駒子は大きくうなずいた。

 翌日、駒子は朝いちばんに岡村に声を掛けた。
「ちょっと話したいことがあるのだけど、会議室に来られない? そんなに時間は掛からないから」
 岡村はすぐに事情を察したようだ。
「いいわ。どこの会議室?」
「A会議室を押さえてある」
「じゃあ、先に行って。一本電話を掛けたら、すぐ行くから」
「了解」
 駒子が先に会議室に入って座っていると、岡村が何も持たずに入ってきた。
「昨日の話よね。どうするつもり?」
「高橋くんの件は、ありがたくお受けします。そちらでは働きどころがないみたいだけど、うちでなら頑張れると思うから」
 それは予想どおりだったのだろう。岡村はにやっと笑った。
「そうよね。お互いの利害が一致するわね。それで、花村のことは?」
「花村は、困ります。うちには有用な人材だから」
 岡村の眉がぴくりと動いた。
「ほんとに? あなたを裏切って、私にあなたの行動を逐一報告してくれるような子なのよ」
「もちろん、今後はそれをやめてもらいます。それが昇進の条件です」
「昇進?」
「花村さんをうちの課長に推薦しようと思うんです」
「本気?」
「ええ、もちろん」
 岡村は驚いたように眉をいっぱいに上げ、しばらくじっと駒子の顔を見ていたが、声を立てて笑い出した。
「あなた、ほんとお人よしよね。裏切り者の部下を、取り立てようとするなんて」
「そこは、権藤さんのやり方を見習おうと思う」
「権藤さんのやり方?」
 岡村は笑うのをやめて、真顔になった。
「権藤さんは、自分を売ったとわかっている沢崎さんを自分の部署に置いている。沢崎さんが使える部下だからよね。使える部下は自分のところにおいて、使えるだけ使う、それは正しいと思う。花村さんは得難い部下です。いまのうちの状況では、彼女ほどの人材はなかなか得られない。だから、働いてもらうんです」
「そう。……煙草吸ってもいいかしら」
 駒子の返事を聞かずに岡村は立ち上がり、会議室の隅に置かれている灰皿を持って来た。そして、スーツのポケットから煙草を出し、ライターで火をつけた。
 駒子はじっと岡村の返事を待っている。言うだけのことは言ったのだ。
「あなたも少しはしたたかになったわね。……いいわ、あなたがそこまで言うんなら、花村はそっちでなんとかすれば。正直、新企画のことがなければ、花村のことは私も考えなかったから」
「新企画?」
「レインボーホールを使ったビジネスのことよ。花村がうちにくれば、それをうちでやってもらおうと思っていたのだけどね」
 花村は、それを手土産に、岡村のところに行こうとしていたのか。
「それは……うちでやるわ」
「そう、それがいいわ」
 岡村があっさり言う。
「え、いいの?」
 駒子は驚いて岡村の顔を見た。
「何? 私があなたの仕事を無理に取り上げて、自分の手柄にするとでも思ったの?」
「いえ、そういう訳じゃ……」
「社長から、あなたがやれと言われたことだし、あなたはあなたでそれなりの実績を上げなきゃいけないし。それを無理に取り上げようとは思わないわ。私はそんなことしなくても、自分の売り上げは立てられるから」
「岡村さん……」
 駒子がまぶしいものを見るように岡村を見た。
 岡村のその強気がうらやましい。
 そんな駒子の気持ちを見透かしたのか、岡村が苛立った声を出す。
「あなたも、ちょっとはしたたかになったのかと思ったら、そうでもないのね。あのね、ちゃんと覚悟を決めなさい。あなたはこの会社で初めて次長になった女のひとりなのよ。成功することを期待される存在なのよ」
「成功されることを期待される存在?」
「そりゃそうよ。我々の成功がなければ、この会社で女が上がっていくことはない。体質も変わらない。我々は試されているのよ」
「それはわかっているけど……。なんで私が? って思うし、私にそれだけの力があるのかどうか……」
「だから、覚悟がないって言うのよ。理由はなんであれ選ばれたのは事実なんだから、それだけの資格があるってことなのよ。男だったら、そんなことは絶対に言わない。会社でずっと働き続けるという覚悟があるから、昇進もその道筋のひとつと思っている」
 覚悟がない。確かにそうだ。岡村にあって自分にはないのは、その覚悟かもしれない。自分は正直次長のままでいいと思っている。そちらの方が面倒が少ないんじゃないか、と思っている。
「実際に次長や部長になっている人間を見なさい。みんなそんなに優秀な人間かしら? 自分の方ができるのに、と思う人もいっぱいいない?」
「ええ、それは……まあ」
「いつまでもそういう人間に見下されるのは、私は嫌だわ。私とあなたを競わせて、優秀な方を部長にしてあげるなんて、どれだけ人を馬鹿しているのよ。ほんと、男どもの考えることときたら、へどが出る」
 それまで溜めていたものを吐き出すように岡村は話し続ける。そんなふうに思っていたとは。駒子は驚きのあまり口もきけない。
「でもまあ、これもチャンスだわ。私はこの会社でのし上がってみせる。だけど、私が上がるためには、あなたも上がらなきゃダメなの。同じ女性というだけで、あなたのすることは私の評価にも影響してくるから。上層部に女が増えないと、男どもは変わらないから。だから、もっと頑張りなさいよ。ちゃんと覚悟を決めなさいよ。自分の小さな幸せに満足していないで、少しはほかの女たちのことも考えてよ!」
 岡村の激しい言葉に圧倒され、駒子はただ息を詰めて聞き入るばかりだった。

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著者プロフィール

碧野圭(あおの・けい)

愛知県生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。フリーライター、出版社勤務を経て、2006年『辞めない理由』で作家としてデビュー。
他の著書に、ベストセラーとなりドラマ化された『書店ガール』シリーズ、『銀盤のトレース』シリーズ、『全部抱きしめて』『半熟AD』『菜の花食堂のささやかな事件簿』等多数がある。

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