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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第25回 混ぜるな危険

2018.01.25 更新

台所洗剤やトイレ洗剤、漂白剤、カビ取り剤などに記載されている『混ぜるな危険』の文字。見ただけで、ちょっとドキッとしますよね。『混ぜるな危険』とある溶剤は警告通り、混ぜるととっても危険です。発生したガスを吸い込むと重い後遺症が残ったり、命を失ったりすることすらあります。実際に、何件もの死亡事故が起こっています。
混ぜないよう注意して使用していても、うっかり混ざってしまうこともあります。また、混ぜる行為をしていなくても危険なことすらあり、事故に遭うこともあるのです。
どうして『混ぜるな危険』の溶剤は、危険なのでしょうか? どのようにすると危険になるのでしょうか。それは化学を知ると見えてきます。今回は、『混ぜるな危険』の溶剤を安全に取り扱うための、化学のお話をしましょう。

洗剤は大きく分けて3種類あります。酸性洗剤と中性洗剤、そして塩素系洗剤。このうち、『混ぜるな危険』と記載があるのは、酸性と塩素系です。酸性同士の混ぜ合わせや塩素系同士の混ぜ合わせでは問題ないのですが、酸性と塩素系を混ぜ合わせると化学反応が起こり、毒ガスが発生します。これが警告にある、『混ぜるな危険』の組み合わせです。
発生する毒ガスの名前は、塩素ガスです。これは致死性のある毒ガスで、第一次世界大戦でも使用され、たくさんの死者を出しました。塩素ガスは緑がかった白煙で、強烈な刺激臭がするのが特徴です。
吸引すると、気道粘膜や肺、目の水分と反応して、塩酸が生成されます。ほんの少量の吸引であれば大事には至りませんが、大量に吸引すると大変です。塩酸は人体を焼き、ただれさせ、破壊します。塩素ガスによる事故は、想像しただけで身の毛がよだちます。塩酸によって呼吸器系の粘膜は全て焼けただれ、剝がれ出血します。吐血し肺が機能不全に陥り呼吸困難になり死に至ります。とてもむごたらしいものです。
このように危険な塩素ガスが発生するため、『混ぜるな危険』の溶剤を混ぜ合わせてはいけないのです。
ただ、『混ぜるな危険』の警告があることですから、世の中でときどき起こる塩素ガスによる事故は、故意に混ぜ合わせたことで発生するのではなく、偶発的に起こっているのではないかと想像できます。例えば、汚れ落としに塩素系溶剤を使用した後、流し切ったつもりでいて、次いで掃除に酸性溶剤を使用し、残留していた溶剤と化学反応が起こってしまうような事故が起こるのではないでしょうか。このようなことを避けるためには、塩素系溶剤や酸性溶剤を使用した後には、水で十分に流し切ることを徹底することが重要です。連続して異なる種類の溶剤を使用する際には、大量の水で十分流し切ってから次の溶剤を使用しましょう。

次いで、『混ぜなくても危険』なお話です。これはあまり知られていませんが、十分起こり得るので注意が必要です。先に述べた通り、酸性溶剤と塩素系溶剤を混ぜ合わせると、塩素ガスが発生して危険なのですが、実は塩素系溶剤は酸性溶剤と混ぜ合わせなくても塩素ガスが発生することがあるのです。
どのようなシーンで起こり得るかというと、例えば生ゴミを消臭するために塩素系溶剤をかける、などが想定できます。
どうして生ゴミに塩素系溶剤をかけることで毒ガスが発生するのかというと、塩素系溶剤は酸性溶剤だけではなく、酸性のものであれば反応するからです。つまり、生ゴミの中に酸性のものが含まれていた場合、塩素ガスを発生させる条件を満たすのです。
レモンや酢は酸性です。ですので、生ゴミに酸性の食材が相当量含まれている時に塩素系の溶剤をふりかけると、化学反応の条件を満たし、塩素ガスが発生します。同様に、塩素系溶剤で掃除をして、しっかりと流し切っていないうちに酢を捨てたりすると危険です。
ですので、生ゴミに塩素系溶剤をかけることはするべきではありません。
また、トイレで使用した塩素系の固形洗剤がトイレパイプの奥の方に残留していることを知らずに、トイレ掃除の際に酸性の汚れ落としを使用すると、塩素ガスが発生することもあり得ます。これは過去に死亡事故も起こっていますので、トイレの洗剤や汚れ落としなどは、塩素系と酸性のどちらかのみ、もしくは中性を使用するのが安全です。

危険な塩素ガスが発生してしまったら、どのような対策を取るべきでしょうか。
塩素ガスは強い刺激があり、色があるガスなので、発生すればすぐにわかります。発生したことに気づいたら、可能な限り息を吸わずに、迅速に換気を行って、その場から離れてください。体に不調を感じたら、すぐ病院に行くことをお勧めします。
塩素ガスは空気より重い性質があります。ですから、床に溜まりやすいです。小さなお子さんなどが身近にいたら、最優先で避難させてください。
特にトイレなど狭い場所での塩素ガスの吸引は危険です。トイレ掃除を行う際に、塩素ガスが発生し得る溶剤を使用する場合には、先から換気を行い、閉めきらずに作業すれば、重篤な状態になる可能性を減らすことができるでしょう。

『混ぜるな危険』は本当に危険ですので、十分に気をつけて取り扱ってくださいね。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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