キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

科学で毎日を楽しくしませんか? ブック・カバー
バックナンバー  1...2122232425...28 

第23回 伝説の生き物はいるの?

2017.12.11 更新

世の中には、空想なのか現実に存在するのか謎な生き物がたくさんいます。
ファンタジー映画やゲームでおなじみのドラゴンや、日常的な比喩などでも使われる天使や悪魔、日本の想像上の動物、河童やツチノコなど、様々です。それらを見たことがあるという人もいますし、真偽の程が定かではない、極めて怪しい過去の記録があったりもします。実際にそれらの伝説的生き物はいるのでしょうか。今回は、前回の宇宙人のお話に引き続き、科学の視点から、伝説の生き物はいるのか、もしくはいる可能性はあるのかというお話をしましょう。
『宇宙人はいるの?』では宇宙全体で存在のいかんを考えましたが、今回は記録や目撃情報があるのは地球上ですから、お話は宇宙に広げないことにしましょう。

まずはドラゴンから。西洋では、ドラゴンはトカゲに羽がついた生き物だそうです。羽で自由に空を飛び回り、炎を吐くそうです。物理的に考えると飛ぶことは到底不可能、炎も熱量の供給量を考えると現実性が皆無になるので、このあたりは置いておき、そのような形状の生物が存在しうるかについて議論します。
結論から言うと、ドラゴンが存在する可能性は限りなくゼロです。なぜかというと、生命の進化の過程の上で成り立たない生物だからです。
地球上にたくさん存在する生物は、はじめから今の姿ではありませんでした。長い時間をかけて、より原始的な生物から進化して今の姿になったのです。進化の理由は淘汰だったり環境の変化だったりと様々ですが、その結果、地球上には多種多様の生物が暮らしています。
さて、ドラゴンの姿形を考えると、おそらくこれはトカゲの親戚。ということは爬虫類でしょう。羽が2枚、そして前足が2本、さらに後足が2本ありますが、これは爬虫類である事実と矛盾してしまいます。
どういうことかは、手と足の合計数に注目しながら、生命の歴史をたどってみるとわかります。爬虫類は両生類から進化しました。両生類は魚類からの進化です。魚類が進化したとき、2枚の胸ヒレと2枚の腹ヒレが前足、後足に変わりました。ですから、すべての両生類の手足の合計数は4本になりました。爬虫類は両生類から進化していますから、やはりすべての爬虫類の手足の合計数は4本です。
ドラゴンは羽2、前足2、後足2ですね。手足の合計数が4本、それに羽が2枚です。一見矛盾していないようですが、そうではありません。羽とは簡単に都合よく生物に生えるものではないのです。
爬虫類から進化した鳥類は羽を持っていますが、その代わり前足がありません。羽は前足が進化した結果なのです。ですから、羽は手足と同じものとしてカウントすることになります。
すると、ドラゴンは羽2、前足2、後足2で、合計が6になってしまいます。両生類から進化したすべての生物は手や足の数が4本なので、これは爬虫類ではないということになるのです。
地球上には手足の合計数が6本の生物も確かに存在します。昆虫などがそうですが、爬虫類とは姿形があまりに異なります。また身体の大きさもあまりに違います。見間違えるはずもありません。これらの理由から、ドラゴンという生き物は生物学的に存在する可能性がほとんどないと考えられるのです。
ちなみに、蛇も爬虫類です。手足の合計数は0ですが、これは4本あった足が退化したためです。手足の数は、減ることはあっても増えることはないのです。

天使や悪魔の存在についても、ドラゴンと同様です。天使や悪魔は人間に近しい外見だそうです。飛ぶこともできるようですが、これもやはり重量的な問題から、物理学的に不可能なので、存在自体について議論しましょう。
天使や悪魔と人間との違いは羽が生えていることだそうです。私たち人間は哺乳類の一種です。哺乳類もまた両生類から進化しています。ですから、手や足の数の合計は4本のはずです。背中に2本の羽を生やせたら合計数は6本になりますから、哺乳類であるという事実と相反します。ですから、天使や悪魔も生物としての存在は、ほぼあり得ないと考えてよいのです。さらに、爬虫類から進化した鳥類にしか生えていない羽が、爬虫類の進化系ではない哺乳類についているというのは、進化の歴史を完全に無視しています。
「悪魔の証明」という言葉があります。困難な証明全般の比喩や、所有権の証明が困難なことの比喩として使われる言葉です。そもそも、悪魔の存在証明が困難なことから生まれた言葉なのでしょうが、生物学に対する理解が深まった現代からすれば、悪魔が存在しないのはほぼ自明です。ですから、時代遅れな言葉なのかもしれません。

世の中には他にもたくさんの伝説の生き物がいます。生命の進化、そして手や足の数から存在の可能性を考えてみると面白いです。日本の想像上の生物である河童や雪男などは、手足の数が4本ですから、存在を完全に否定することは難しくなってきます。まだ見つけていないだけで、日本の奥地のどこかでひっそりと暮らしているかもしれません。悪魔よりも河童の方が、存在する可能性が遥かに高いのです。ですから、「悪魔の証明」という言葉よりも、「河童の証明」という言葉に入れ替えた方が適切かもしれません。
目撃情報もあり、存在がささやかれている伝説の生き物、ツチノコも進化の歴史に反していないので、存在する可能性は十分あります。ちなみに、ツチノコを生け捕りにすれば、1億円の賞金をもらえるそうです(新潟県糸魚川市より)。伝説の生き物、ロマンがありますね。

バックナンバー  1...2122232425...28 

著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

ページトップへ