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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第18回 古いパソコンの不経済

2017.04.10 更新

古いパソコンはなにをするにしても時間がかかり、動作がもっさりとしていて、扱っていてストレスがたまるものですね。反応が遅いためにボタンを二度押ししてしまったり、そのせいで間違った操作になってやり直しをしなくてはならなくなったりして、無駄な作業が増えてしまいますから、さらにストレスがかかります。
このように古いパソコンを使うことはとてもストレスですが、それだけではなく、実はとても不経済なのです。古いものを大事に使うのが不経済なんて少し不思議に思われるかもしれません。

数字だけだと味気なく実感がわかないので、働き盛りのサラリーマン、Aさんを想定してみることにします。
Aさんは入社8年目、30歳のサラリーマンです。会社の経理処理に携わる事務作業をし、正社員として働いています。労働時間は8時間、月の労働日数は21.5日、パソコンを毎日仕事で使います。入力や書類作成がメインですから、Aさんは会社にいる時間のほとんどをパソコンの前で過ごします。
朝9時に出社してみんなに挨拶をし、Aさんはまずパソコンを起動します。仕事の相棒ともいえるこのパソコンが少し困りもので、だいぶ古いために動作が遅いのです。電源を入れると、ランプがついてカリカリ音を出し、やたら考えているふうですが、なかなか起動しません。結局立ち上がるまで2分かかってしまいました。
Aさんが入力する会計ソフトも古いパソコンではなかなかスムーズに動きません。入力するごとに若干1秒ほどですがタイムラグがあり、Aさんは微妙にストレスを感じています。毎日100件ほどデータを入力しなくてはいけませんから、困ったものです。
メールの処理や請求書、見積書のファイル作成にはもっと時間がかかります。ソフトが立ち上がるまで数秒、書き出しで数十秒、平均で10秒程度でしょうか。こんな作業を毎日50回ほど行わなくてはいけませんから、うんざりしてしまいます。
一度社長にパソコンを新調してほしいと相談しましたが、お金がもったいないから使える限りは使い続けてほしいといわれてしまいました。
遅いパソコンと格闘しながら夕方6時、Aさんの1日は終わり、帰宅します。明日も明後日もまたこのパソコンと向き合う仕事が待っています。
Aさんのパソコンは極端に遅いというわけではありませんが、やはりわずかでも動作の遅いパソコンはストレスフルなものです。

さて、Aさんにとって、どの程度の不経済が生まれているのか計算してみましょう。
まずパソコンの起動に2分費やしています。これは年間に直すと8.6時間にもなり、労働日数に直すと1.1日分に相当します。
会計ソフトは1日100秒で年間7時間、メールや書類作成の業務中のパソコンの遅延では1日500秒で年間36時間もの無駄が生じています。これらの合計は労働日数に直すと5.4日分に相当します。
小さな数字のようですが、塵も積もれば、です。Aさんは遅いパソコンのために、年間52時間、6.5日分の労働時間を無駄にしているのです。これは相当な損失です。遅いパソコンはこんなにも生産性を低下させているのです。

無駄にしているのは時間だけではありません。会社はAさんにお給料を払って働いてもらっていますから、この生産性の低下による企業の損失も考えなくてはなりません。
2016年の30~34歳の正社員の平均時給は1859円なので、これをベースにAさんのケースの損失額を計算してみましょう。
会社は人を雇う場合、給料の他に1人当たり給料と同額ほどの金額を負担しています。それは、雇用保険や厚生年金、福利厚生にまつわる費用、そしてオフィスの家賃や光熱費諸々に関する費用だったりします。
というわけなので、Aさんの時間を無駄にすると、会社としては1時間当たり1859円の倍、つまり3718円の無駄を出していることになるのです。会社が無駄にしている費用は、年間で、19万円となります。19万円あれば、相当良いパソコンを買ってもおつりがくるほどです。これほどの不経済を古いパソコンは生み出しているのです。もし、新しいものに替えずに、延々とお古を使い続ければ、19万円の不経済は毎年のしかかります。替えたとしても、向こう数年は使うことができるでしょうし、いずれ動作が遅くなれば、また替えればよい話です。
このような効率を求められる機械の場合はどんどん更新した方が実は経済的なのです。新しいものにどんどん更新して、生産性を上げる方向で考えた方が会社としてはプラスなのです。古いものを大事に使う精神は立派ではあるのですが、かえってお金がもったいないことをしているのですね。日々の小さな損失はなかなか目に付きません。そして、延々と蝕み続けますから、厄介です。

パソコンのイライラは気持ちの問題だけではないのです。能率を下げ、生産性を落とし、競争力を削ぎます。もし会社のパソコンが遅くて困っていたら、この記事を社長さんや決裁権を持つ人に見せて、「替えた方がお得ですよ」と説得してみてはいかがでしょうか。イライラも解消され、仕事の能率も生産性も上がるに違いありません。自営業やフリーランスの方もぜひ、検討してみてはいかがでしょうか。
ちなみに家庭のパソコンの場合は、使用時間が短いこと、加えて仕事に利用せず、通常使用の範囲であれば問題ないことから、買い替えない方がお得です。申し訳ありませんが、この記事で奥さんまで説得するのは難しそうです。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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