キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

科学で毎日を楽しくしませんか? ブック・カバー
バックナンバー  1...1314151617...20 

第15回 白い息

2017.02.27 更新

2月も終わりに近づいてきましたが、まだしばらくは寒い日が続きますね。こんな時期はとりわけ春が待ち遠しくありませんか。今回は、寒い日にお馴染みの現象のお話をしたいと思います。
寒い日に息を吐くと、息が白くなりますよね。息を吐きだす度に、煙のような雲のようなもくもくが出てきます。これは、何でしょうか。
水蒸気でしょうか。いいえ、水蒸気ではないのです。

水蒸気は無色透明で、目で見ることができません。一方、寒い日に出てくる白い息は目で見て、「白い」と確認できます。見えるということは、水蒸気ではないのです。
白い息の正体は、「水滴」です。とても小さな水の粒です。息を吐きだすことで出現する水の粒を見ているのです。真冬に限らず年中息の中には水分が含まれていますが、他の季節にはほぼ見ることができません。どうして冬だけ見ることができるのでしょうか。それには、気温と湿度が関係しています。

私たちの体温は37度くらいで、真冬の外気に比べてずっと温度が高いです。吐く息はおおよそ体温と同じ程度まで温められていますから、非常に温かい空気なのです。
空気は水蒸気を溶かし込むことができます。空気に溶け込む水蒸気の量は、温度が高いほど、多くなる性質があります。逆に温度が低いと水蒸気をあまり溶かし込むことができません。
また、体の中は湿気が多く、体から出てくる温かい息には、とてもたくさんの水蒸気が溶け込んでいます。

寒い日に人が息を吐くと、水蒸気をたくさん含んだ温かい息が、外の冷たい空気に冷やされます。吐きだされた息は瞬時に温度が下がります。
冷たい空気に水蒸気はほとんど溶け込めません。ですから、温かい息の中に溶け込んでいた水蒸気の大部分は、水蒸気のままではいられなくなります。
水蒸気の状態でいられなくなると、水蒸気は状態を変えようとします。そして水に変わります。これを「凝縮」といいます。
凝縮が起きることによって、息の中に含まれていた水蒸気は、小さな水の粒、つまり水滴に変わります。この水滴が光を反射するので、人間の目に白い霧状となって映るのです。これこそが、白い息の正体です。
このように、白い息ができあがるためには、冷たい空気が必要で、おおよそ7℃を下回ると見えるようになるそうです。7℃となると低い気温ですから、暖かい季節には見ることができないのですね。
ちなみに、外気が冷たいと起こる現象なので、冬以外でも高い山の上など、気温が低いところに行けば、条件が揃えば見ることもできます。
白い息は、水が空気に溶け込むことができずに生まれるものなので、空気中の水蒸気量によって、見える、見えないが変わってきます。同じ気温でも、空気中の水蒸気量の少ない晴れの日よりも、空気中の水蒸気量の多い雨や雪の日の方が見えやすい傾向があり、気象条件がよければ気温13℃程度でも見えることもあるようです。

さて、この白い息、少しの間だけ存在したら消えていきますね。どこに消えてしまうのでしょうか。
消える先は、空気の中です。再び水蒸気になって、人の目に見えなくなるのです。このようなことが起こるわけもまた、冬の空気が関係しています。
冬は寝ている間にのどを痛めたり、インフルエンザが大流行したり、森林火災が起こったりします。これは空気が乾燥していることに原因があります。冬は空気がとても乾燥しているのです。乾燥している空気は、水分を奪って水蒸気として空気に溶け込ませてしまいます。これがのどを傷める原因です。
白い霧になった小さな水滴は、時間の経過とともに大量の乾燥した空気と混じり合うことになります。先ほど温度の低い空気はそれほど水蒸気を溶かし込むことができないと説明しましたが、量が多くなると話は変わってきます。大量の空気であれば、相応の量の水蒸気を溶かし込むことができます。
そのため、白い息の中に含まれる水滴は、乾燥した空気に取り込まれて水蒸気となり、空気に溶けてしまうのです。水が水蒸気になることを「蒸発」と言います。沸騰させると水は水蒸気になりますが、沸騰に必要な温度は100℃です。しかし、100℃でなくても蒸発は起こります。
身近な現象を挙げると、洗濯物は100℃にならなくても乾きます。北海道の真冬で気温が0℃以下でも多少乾くのです。雨が降った後の地面も100℃以下ですが、水たまりは消えてなくなります。このように、蒸発は低い温度でも起こるのです。
水は100℃にならないと水蒸気にはならないというのは誤解であって、沸騰と蒸発は別の現象なのです。
少し脱線しますが、沸騰と蒸発の違いを簡単に説明すると、沸騰も蒸発も水が水蒸気に変わること、気化(きか)することを指しますが、蒸発は液体の表面から起こる現象、沸騰は液体の内部からも気化する現象です。身近な例だと、コンロにかけたヤカンのお湯は100℃まで熱するとヤカンの底から泡が沢山出てきます。これが沸騰です。沸騰は100℃になると起こります(※1気圧の場合。富士山やエベレストのような高い山の上などでは沸騰する温度が変わります)。一方蒸発は何度でも起こります。沸騰と蒸発は似ているけれど別の現象なのです。

さて、白い息の話に戻しましょう。白い息の中に含まれている水滴は、水蒸気に変わり周囲の空気に溶け込んでしまいます。水蒸気は目に見えませんから、白い息は消えて見えなくなってしまうのです。
ちなみに、白い息ができる原理、消えていく原理は、私たちが毎日見上げている雲のできる原理、消える原理とまったく同じです。白い息はほんの一瞬できあがる雲のようなものなのです。
息を吐いて雲を作るなんて、ちょっと面白いですね。寒い日にぜひやってみてください。

バックナンバー  1...1314151617...20 

著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

ページトップへ