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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第13回 空はどこまで空なの?

2017.01.23 更新

私は風船を使って宇宙を撮影しています。どういうことかというと、カメラを取り付けた風船を空気のほとんどない場所まで飛ばし、空気の影響を受けない環境で宇宙と地球とを撮影しているのです。
空気の影響のない場所とは、つまり宇宙と空との境界です。
さて、ふと疑問に思うことがあります。それは「空はどこからどこまでが空なのか?」ということです。
見上げればどこまでも広がっているのが、空です。そして空のもっと高くには、宇宙があります。青空の先に漆黒の宇宙が広がっているとは、なんとも不思議なことです。空はどこまでが空で、どこから先が宇宙になるのでしょうか?

宇宙と地球の境目はとても曖昧です。なぜなら、「ここから先が宇宙」という明確な境界線がないからです。
たとえば海や池との境目は水面だと誰もが答えますし、疑いようもありません。空気と水という確かな境界線があるからです。しかし空は、宇宙に近づくにつれてだんだん空気が薄くなっていくので、宇宙とは境目がなく曖昧です。しかし、空高く上がっていけば確かに宇宙に近付いていきます。
「空」と「宇宙」という言葉がありますから、連続しているとはいえ、二つは明確に分けられています。今回は、どこまでが空なのか考えてみたいと思います。

まず空といえば、雲ですね。では、雲があるところまでを空としてみてはどうでしょうか。
もっとも高い場所にできる雲は「すじ雲」と「飛行機雲」です。地上から大体10,000mくらいの高さにできる雲です。これより高い場所に雲はできません。
10,000mというと、旅客機が飛ぶ高さです。高度10,000mまで来ると、既に私たちの暮らす世界とだいぶ違います。旅客機の窓から上をのぞいてみてください。そこに見えるのは、深い紺色の空です。
10,000m程度の高さで空の象徴ともいえる青色がなくなってしまうのです。この高さを空というべきか怪しくなってきましたが、すじ雲や飛行機雲などの雲は発生するのですから、まだ空としておいてもよいのではないでしょうか。

空と言えば飛行機ですね。では、飛行機が飛べる高さまでを空としてみるのがよいのでしょうか。
飛行機は、空気中の酸素と燃料を混ぜて燃やしながら飛びます。また、空気の中を飛ぶことで揚力を得ているからこそ、空を飛ぶことができるのです。
一般的に使用されているジェット機は13,000m程度までしか上昇できませんが、自衛隊の戦闘機などは20,000mを超える高さまで一時的に上昇することができます。ロシアでは、戦闘機に乗って成層圏をフライトできる約45分のツアーを200万円ほどでおこなっているというのを何かで見たことがありますが、そのときに窓から見えていた景色は青い地球と黒い宇宙で、ほとんど空ではありませんでした。
私の知る限り、空気を燃焼させてもっとも高くまで飛ぶ飛行機は、アメリカの偵察機「ブラックバード」で、その高度は24,000m。パイロットは簡易な宇宙服を着て乗り込んでいます。パイロットの話によると、昼間でも肉眼で星が見えるそうです。
ロシアの戦闘機にしてもブラックバードにしても、このくらいの高さまで来ると、空かどうかがだいぶ怪しくなってきます。ですが、飛行機がぎりぎり飛べる高さなので、空といえば空かもしれません。しかし、見える景色は宇宙に近く、ここは空というより「空っぽい場所」といったところでしょうか。

では、「空っぽい場所」からさらに高く、雲もできず、飛行機も飛べず、空気がなくなるところ、高度おおよそ30,000mはどうでしょうか。空気がないのだから、このあたりで空から宇宙になるのでしょうか。上空30,000mは、バルーンであれば到達できる高さです。
数年前、巨大なバルーンを使用して、高度34,000mからスカイダイビングをする試みがありました。この試みでスカイダイビングをした人は、生身のまま時速1,000kmを超える速度まで加速してしまいました。飛行機は時速800kmから900kmで飛んでいますから、1,000kmなら飛行機よりも速いことになります。
これほどの速度まで加速できるのも、そして飛んだ人が無事であったことも、そこに空気がないからこそ実現できたことです。空気がほぼないので、空気の抵抗を受けることがなかったのです。
この30,000mから見える景色は、宇宙ステーションから見える景色とそれほど変わりません。しかしながら、この高さは宇宙ではないのです。というのは、ほぼ空気がないといっても、宇宙開発をすることを考えた場合、わずかにある薄い空気が邪魔をしてしまうからです。このあたりは宇宙ではなく「宇宙っぽい場所」といったところですね。

宇宙っぽい場所からもっと高く、高度400,000mくらいになると、薄い空気はありますが、宇宙開発ができるくらいの環境です。宇宙ステーションはおおよそこの高さを回っています。
人工衛星やステーションは新幹線の100倍くらいの猛烈な速度で飛んでいます。これだけの速度を出さないと引力に引かれて落っこちてしまうからです。空気があっては速度を出す邪魔になってしまいますから、宇宙開発のためには空気がほとんどない場所が必要なのです。
この高さまで来れば、宇宙といって問題なさそうです。ちなみに、NASAやJAXAは違う基準で100,000mより高い場所を宇宙としています。

このように考えてみると、私たちが「空」だと思っている高さは、かなり近いところまでなのですね。私たちが眺めている空が存在するのは、せいぜい10,000mまで。そこから先は空っぽい場所、宇宙っぽい場所、そして宇宙へと変わっていきます。
大空はどこまでも広がり、果てしないものと信じていたのに、その実、わずか10,000mほどという薄い世界だったのです。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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