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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第20回 雨降りの日、走るのと歩くのはどっちが濡れないの?

2017.07.21 更新

梅雨明けですね。
これからの季節は急な雷雨なども多いです。雨は好きですか? 濡れるから嫌、じめじめするから苦手という人もいるかもしれませんが、私は雨が結構好きです。街の音がしとしとと落ちる雨音に紛れ、いつもと違う雰囲気を過ごすには良いものです。

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雨の日に傘を忘れて困ったことはありませんか? 私は子供のころから頻繁にやらかしています。困るのは大概、外出先で傘を持ってこなかったときに降り出した場合です。帰ろうと思って外に出たら本降りだったというパターン、何度か遭遇したことがあるのではないでしょうか。こんな場合、傘を買おうかどうか迷います。買うのも面倒ですし、買っても家にたまるだけ、少しもったいない気もします。それに雨に濡れる距離は大したことがないと分かっているときはなおさら買いたくありません。
そんな時は意を決して「濡れて帰るか!」となるわけですが、そんな時いつも疑問に思うことがあります。それは、歩いて帰った場合と、走って帰った場合、どちらが濡れないかということです。あなたも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。
走って帰った方が短い時間で済みますから濡れないような気がします。しかし実際に走って帰ってみると案外濡れてしまうものですから、やはり歩いて帰った方がよかった気もします。一体どちらが濡れないのでしょうか。
今回はその疑問を科学的に考察してみたいと思います。

普段の生活の中で意識することはありませんが、雨の中を移動する場合、2種類の濡れ方をしています。1つは、単位時間当たり空間に存在する自分の体の体積分に存在する雨粒の量です。もう少しわかりやすい表現をすると、立ち止まっているだけで濡れる雨の量です。
そしてもう1つが、移動することで空間に漂う雨粒に衝突して濡れる雨の量です。つまり走るなり歩くなりして移動することで、自ら雨に突っ込んで濡れる量です。
これらを別々に考え、合計することで、走るのと歩くのとではどちらが濡れないのか見当することができます。

数学的に検討するために、いくつかを定めなくてはいけません。
まず、降っている雨の量をR[g/m^3/s]と設定しましょう。時間当たりそして体積当たりの定量です。雨が強くなればなるほどRの値は大きくなります。
次に、雨の中を移動する人間の体積をV[m^3]としましょう。
人は雨の中を移動していますから、雨に向かって突っ込むことになります。雨に突っ込む面積をS[m^2]とします。
人間が移動する速度をv[m/s]、家までの距離をl[m]とします。これらを定めることで数学的に考えることができます。

単位時間当たり空間に存在する自分の体の体積分の雨粒の量は以下の式で表すことができます。

数式1

移動することで空間に漂う雨粒に衝突して濡れる雨の量は以下の式で表すことができます。

数式

この合計値が雨に濡れる総量なので、総量Wは、

数式

という結論を導くことができます。
速く走ること、ゆっくり歩くことで変わる数値はvです。これをvとWの関数に表すと、

関数

となります。Wは青の曲線です。これは、反比例の二次曲線です。
人間の歩く速度は時速4km程度です。走る速度は時速20km程度です。それぞれの速度で移動した場合でどれだけ濡れることになるのか図に落とし込んでみると、以下のようになります。

関数

このように、歩いた時の方が濡れる量がだいぶ多いことが分かります。
ですので、最初の疑問の結論としては、走った方が濡れない、というのが答えとなります。
しかし、速く移動すればするだけ濡れなくなるということは、頑張って全力疾走すれば濡れずに済むかというと、そういうわけではありません。
この図を確認してみると、時速15kmを超えたあたりから雨に濡れる量Wはほとんど変わらず、時速20kmでも40kmでもほぼ同じだけ濡れることが分かります。
つまり、時速15km以上を超えたあたりから、どんなに努力しても濡れる量に大きな違いは生まれないのです。世界最速の陸上選手が走っても、運動不足で悩んでいる男性が走っても大差はないのです。もっと極端な話をすると、時速100kmだろうと、1000kmだろうと、濡れる量は時速15kmの時と大差ありません。
なんとなく釈然としないものがありませんか。
どうしてこのようなことが起こるかというと、議論に用いた2種類の濡れ方に起因します。走ることで自ら雨に突っ込んで濡れる量、そして時間当たりで濡れる量の2つがありました。速く走れば走るほど雨に濡れる時間が短くなるので、時間当たりで濡れる量は少なくなります。しかしながら、移動する空間に存在する雨の量は速度に関係がありませんから、そこに突っ込んでいくことになるのです。そのため、どんなに速度を出しても空間にある雨の量分濡れてしまうことになるのです。

さて、結論です。外出先で雨に降られた場合、どうすればいいのか。科学的見解から言えることは、疲れない程度の速度で走って帰るのが吉ということです。しかし、走っても濡れることには変わりないので、カバンの中に折り畳み傘を忍ばせておくのが一番幸せです。
外出先で雨に降られたときはこのお話を思い出してみてください。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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