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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第4回 揚げ物をするとき出てくる泡はなに?

2016.06.30 更新

天ぷら、とんかつ、揚げ物。前回カロリーのお話をしましたが(第3回 カロリーってなに?)高カロリーだとわかっていても、揚げ物って無性に食べたくなるときがあるものです。
なぜなら、人間の体は、油を吸収すると幸せを感じるようにできているのです。ですから、高カロリーの揚げ物を食べたくなるのは、いわば本能なのですから、仕方ありませんね。

さて、今回はこの揚げ物についてのお話です。
揚げ物をするときは、油を使いますよね。天ぷら鍋やフライパンに油を入れ、熱してから食材を揚げます。油の温度は揚げるものによって多少違いますが、だいたい150~200度くらいが一般的です。
十分に熱した油に食材を投入すると、食材のまわりからブクブクと泡が出てきます。この泡って、いったい何者なのでしょうか? どうして油の中から突然、泡が現れるのでしょうか?

今回は、コロッケを例に出してご説明しましょう。(ちなみに、揚げ物なら、天ぷらでもとんかつでもカキフライでも同じ理屈です)。
油で揚げる前のコロッケの衣は、水っぽくて柔らかいです。それを、油に一度泳がせると、カリカリになりますよね。なぜかというと、油で揚げることで、水気がなくなっているのです。つまり、揚げ物をしたときに出てくる気泡の正体は、水が変化した水蒸気なのです。

水は100度になると、沸騰します。鍋でお湯を沸かすと、ぶくぶくと泡が出てくる、一度は目にしたことがあるのではないかと思います。
水は100度になると、水蒸気に変わります。揚げ物をする油の温度は150~200度ですから、水が水蒸気になるのに十分な温度なのです。
コロッケの表面は高い温度の油に触れるため、水分は油と同じ150~200度で熱せられます。そのため沸騰して水蒸気に変化します。水蒸気は気体、つまり泡ですから油より軽いため、ぶくぶくと浮き上がって鍋の外に逃げていきます。衣の中から水分が逃げていってしまったので、水気がなくなり、カリカリになる、という理屈です。

油を使った揚げ物の場合、コンロの炎の熱は鍋に伝わり、次いで油に伝わり、最終的にコロッケに伝わります。油があるからこそ、コロッケに熱を与えることができるのです。しかしその油はコロッケの衣の中に染み込んでしまいます。油は高カロリーですから、その油をたっぷり吸い取ったコロッケは高カロリーとなるのです。

コロッケを揚げるということは、つまり水分を飛ばすということです。水分を飛ばしさえすれば、生のコロッケは揚げたコロッケに変化します。ですから、手段としての油は絶対に必要なものではなく、他の方法でコロッケに熱を与えてあげることができれば、生のコロッケは揚げたコロッケに変化させることができます。
その方法のひとつとして、オーブンで焼くという手法があります。オーブンは内部の空気を熱するので、空気を使ってコロッケに熱を与えることができます。コロッケ表面にある水分は蒸発するのに十分な熱を与えられるので、表面から逃げ去っていきます。
熱を伝えていることには変わりはありませんから、結果として油で揚げたように表面がカリカリのコロッケを作ることができるのです。
この場合、コロッケの衣が吸うのは空気ですから、油で揚げたときのように衣は油を吸い込んでいません。そのため、油分のカロリーを減らすことができます。ですから、オーブン焼きのコロッケのほうが低カロリーと言えます。
と言っても、オーブンの場合と油の場合とは、まったく同じコロッケにはなりません。オーブン焼きのコロッケの場合、衣が油を吸っていないので、油を摂取することで本能的に誘発される幸福感は少なくなりますから、摂取カロリーの高低による良し悪しとはまた別の問題だと言えるでしょう。

油で揚げることで水分を飛ばす方法を使った食品が身近にあるのを知っていますか? インスタントラーメンです。
食べ物はなんでもそうですが、水分があると腐ってしまいます。食品保存料の発達した現代でも、水分の多い食品を長期間保存することは難しいです。
麺にはたっぷり水分が含まれていますから、やはり保存が難しいものでした。しかしながら、油で揚げることで水分を飛ばして乾燥させることで、長期間衛生的で安全に保存することができるようになりました。インスタントラーメンを開発したのが、安藤百福(あんどうももふく)さんという日清食品の創業者です。彼は奥さんが天ぷらを揚げているときに、油で乾燥させるアイディアを思いついたそうです。
油で揚げて水分を飛ばす方法を、瞬間油熱乾燥法といいます。とても奇抜な名前に聞こえますが、油を使った乾燥法は私たちの身の回りの生活にとても浸透しているのですよ。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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