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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第9回 紅葉するのはナゼ?

2016.11.11 更新

秋です。朝晩寒くなってきましたね。
秋といえばどんなものを思い浮かべますか? 栗ご飯、キノコ狩り、フルーツ。何かと食べ物がおいしくて幸せな気持ちになれる、食欲の秋でもありますね。
秋は野山が美しく色付きます。色とりどりの落ち葉が舞う、美しい紅葉の秋でもあります。楓に銀杏、木々が色付くさまは何とも風流なものです。
しかしよく考えると、なぜ木々は秋に紅葉するのでしょうか。もともと緑色だった葉っぱが、どういうわけか黄色や赤色に色付く……不思議ではありませんか? それになぜ赤色や黄色など、違った色になるのでしょう。不思議です。
今回は紅葉の科学についてお話したいと思います。

そもそもなぜ植物は緑色なのでしょうか。
それは、中に含まれるクロロフィル(葉緑素)が原因です。クロロフィルが緑色なので、植物は緑色に見えるのです。植物が光合成をするために必要なものなのですが、この「クロロフィル」と「光合成」が紅葉に深く関わってきます。

クロロフィルは時間とともに壊れてしまうものなので、植物の中で常に作られ続けています。しかし、秋が近付いて日照時間が少なくなり光合成をしにくくなってくると、クロロフィルを作り出しても光合成でエネルギーが得られにくくなります。そのため植物はクロロフィルを作るのをやめてしまいます。
新しいものが生まれないので、葉の中にあるクロロフィルは壊れてどんどん減っていきます。緑色のクロロフィルが葉の中からなくなると、中にあるほかの物質の色に変わっていきます。これが木々が紅葉する理由です。
しかし、紅葉の色はなぜ赤色と黄色なのでしょう。実は、赤色と黄色とで紅葉するメカニズムが違うのです。

◆黄色になるのはナゼ?
植物のクロロフィルが壊れると、葉緑体にもともと含まれていた黄色い物質(カロチンなど)が残るので、葉は黄色くなります。黄色は新しく生まれるのではなく、葉っぱの中にあったものの、クロロフィルの緑色に覆い隠されていたのですね。
ちなみに、秋にならずとも人工的に紅葉を作り出すことができます。葉に覆いをかぶせ、光合成ができない状態にしてクロロフィルを壊せば、秋にならずとも黄色く紅葉させられます。
これが黄色く色付く理由です。

◆赤色になるのはナゼ?
赤色に紅葉するメカニズムは、黄色に比べてちょっと複雑です。
植物がクロロフィルの生産を中止したころ、葉を落とすために、葉の根元と枝の間に「しきり」を作ります。このしきりによって、葉と枝との間の物質の流れが遮られます。
すると、光合成で作られた栄養は葉の中に留まります。この栄養が太陽の光で分解されると赤い物質に変化します。これが赤く紅葉する理由です。

光合成は化学反応です。化学反応は一般的に温度が高い方が起こりやすく、温度が低いと起こりにくくなります。光合成もやはり温度が低いと起こりにくくなります。秋になると気温が下がりますから、光合成の効率が悪くなるのです。
秋に近付くと気温の低下だけではなく、日照時間も短くなりますね。太陽高度が下がることで太陽光線の強度も弱くなります。すると、光合成で得られるエネルギーはどんどん少なくなっていくのです。
さらに、秋は空気が乾燥しますね。人間も肌が荒れたりしますが、植物も同じように影響を受けるのです。乾燥した空気は、葉から水分を奪っていきます。植物にとって水はとても大切ですから、奪われ続けると、やがて干からびて死んでしまいます。
植物にとって秋が近づくということを人間に例えるなら、お腹がすいているのにご飯が毎日食べられない状態です。
これは大問題です。そこで植物は、少しでも体の負担を小さくしようと努力します。体が大きければ大きいほどたくさんのエネルギーを必要としますから、葉を落としてエネルギーを節約しようとするのです。つまり、落葉は植物の冬じたくなのですね。
秋が近づくと、葉が生み出すエネルギーよりも、葉を維持するために必要なエネルギーの方が高くなってしまうので、落とした方が植物にとって楽なのです。
そのため、秋になると葉っぱを落とす準備をはじめるのです。

紅葉は植物の冬じたく。冬を越すための知恵がこんなにも美しいのは神秘的なことだと思いませんか。
ちなみに、冬じたくをするのは植物に限った話ではありません。
食欲の秋という言葉もあるくらいです。私たち人間も、寒く厳しい冬を越すために本能的に秋には食欲が増すようにできています。けれども私たちはだいぶ文明化されてきました。そのため冬に備える必要はなくなりつつあります。暖房で暖をとり、保温性の高い衣服に包まれた私たちは、本能に忠実に食べるとすぐに太ってしまいます。
とはいえ、秋は美味しいものが多いですから、楽しんで過ごしたいですね。

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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