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科学で毎日を楽しくしませんか?

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

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第10回 体温が36度なのに、36度のお風呂がぬるいのはなぜ?

2016.11.25 更新

寒くなって、お風呂が気持ちいい季節になってきましたね。今回はお風呂のお話をしたいと思います。
お風呂の温度は、人により好みがあるとは思いますが、だいたい40度くらいが気持ちよく感じるのではないでしょうか。ちょっと下がって37度くらいになると、「ぬるい、寒い」と感じてくるものです。
私たちの平均体温はおおよそ36度です。ですから、36~37度程度のお湯は体温と同じくらい。温度が同じなのに、なぜぬるく感じるのでしょうか?

熱は必ず高いところから低いところに移動する性質があります。ですから、温度が同じであれば、熱の移動は起こらないのです。しかし、36~37度くらいのお風呂に入ると寒く感じます。寒いということは、熱が奪われているのです。それは、熱の移動がある証拠です。なぜ、このようなことが起こるのでしょう。

この不思議の原因は「体温に対する認識の誤り」が根底にあります。
体温を計るとき、わきの下に体温計を挟みますね。そのため、【体温計で計った体温 = 体の温度】だと思ってしまいがちです。
しかし、体温計で計った温度は、あくまでわきの下の温度です。体の温度は場所によって違うのです。
体温計で計ったわきの下の温度と、手や足、頭やお腹の温度はそれぞれ異なり、お腹は34度、頭の先は33度ほど。体の中心から離れていくほど温度が下がっていきます。
最も遠い手足の温度は28度くらいです。28度なんてゾンビじゃないだろうか、と驚くかもしれません。しかし、冬の寒い日には手足はもっと冷たくなることだってあるのです。
人間の体の中で最も温度が高いのが、内臓や脳といった、いわゆる体の芯の部分で、温度は37~38度くらいに保たれています。どんなに暑くても寒くても変わることはありません。生命を維持するために重要な部分の適温が37~38度だからこそ、この温度に維持されているのです。
この体の芯と、体の芯以外の温度の違いが、お風呂のお湯を熱いと感じたり、ぬるいと感じたりすることに深く関係しています。

温かいお湯にゆっくり浸かると体の芯まで温まったと感じますね。この感覚は科学的にとても正しく、実際にその通りなのです。
熱は必ず高いところから低いところに移動し、そして、接しているものに伝わっていきます。
お風呂に入ると、まず体の表面が温められます。28度くらいしかなかった表面は、お湯の温度と同じ40度程度になっていきます。
長く浸かっていると、今度はお湯によって温められた体の表面が、体の内部を温めていきます。お風呂の熱が体の表面を介して、内部まで伝わるのです。37~38度程度だった体の内部も温められ、お湯の温度と同じ40度に近付いていきます。これが続くと、のぼせた状態になります。
体の芯の温度は37~38度が最適で、それ以上でも以下でも調子が悪くなります。長湯をして体を温め過ぎるとのぼせてしまいますが、これは風邪をひいて高熱を出した場合と同じような状態です。
ちなみに、体の芯の温度より少し高い、38~39度のお湯の場合、あまり温かいとも感じませんが、20分~30分と長時間浸かっているとのぼせてしまいます。これは体の芯よりもお湯の温度が高いためです。すこし高いだけでも、ゆっくり、しかし確実に体に熱が溜まってしまうのですね。

逆に、お湯の温度が36~37度以下の場合は、どうなるのでしょうか。
実際に浸かってみると、きっとぬるいと感じると思います。
水というものはとても熱を奪いやすい物質ですから、体の芯よりも温度が低い水の中に体全体を浸すと、体の芯から熱が奪われていきます。すると、体は奪われた分の熱を一生懸命作り出そうとします。しかし、水は熱を奪う能力が高いので、体が熱を作っても作っても奪われていきます。これが、ぬるい、冷たいと感じる原因です。

体温が36度なのに、36度のお風呂がぬるいのはなぜなのか。
その答えは、体温計で計った温度に対する誤解にありました。

ところで、「36度のお風呂」はぬるく感じますが、「36度の夏日」は我慢できないくらい暑く感じます。
同じ温度なのに、どうして空気と水で違ってくるのでしょうか? これは今回の説明とはまったくメカニズムが異なります。長くなってしまうので、次回お話ししましょう。
次回をお楽しみに!

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著者プロフィール

岩谷圭介(いわや・けいすけ)

民間初の日本国内における上空30kmの撮影に成功。その後も開発を進め日本一の打上げ回数・成功率・世界最高高度記録を樹立。世界最高水準の技術を確立する。国内様々なTV・新聞・雑誌に取り上げられCMや広告にも起用されている。 技術は独力により開発。始まりは大学4年の夏休み、海外のニュースサイトで見た1枚の写真だった。 個人レベルの資金と身の回りの素材を使って切り開いた宇宙開発『ふうせん宇宙撮影』を通じて宇宙を身近に感じてもらうこと、挑戦する気持ちを広げていくために活動している。著書に『宇宙を撮りたい、風船で。 世界一小さい僕の宇宙開発』がある。

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