キノノキ - kinonoki

キノノキ - kinonoki:ナビゲーション

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟

古内一絵(ふるうち かずえ)

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟 ブック・カバー
バックナンバー  1...7891011 

ツリフネソウの姉弟~後篇~

2019.02.22 更新

 夜の皇居は黒い森だ。
 二月に入り暦の上では春を迎えたが、外は冷たい雨が降っている。
 ホテルのスイートルームのソファにもたれ、隼人は暗い森の向こうに居並ぶ高層ビル群を眺めていた。深夜零時を過ぎているのに、いくつかのフロアーはまだ煌々と明りがついている。
 働き方改革なんて、所詮は絵空事だよな――。
 テーブルの上の灰皿を引き寄せ、隼人は煙草に火をつけた。最近では全室禁煙のホテルが増え、喫煙のできる部屋を探すのも一苦労だ。特に外資系ホテルは喫煙者に厳しい。
 浴室からは、今夜の相手がシャワーを浴びる音が響いていた。
 三十代のときなら、大きな湯船に一緒に浸かるところまでお供したけれど、今はとてもそんな気分になれない。立ち上がって窓の傍までいってみたが、厚い雲に覆われた暗い空からは銀糸のような細い雨が降り続けているだけだった。
 やがて、女性が浴室から出てきたので、隼人は念のためリモコンでカーテンを閉めた。
「あ、煙草吸ってるし」
 一回り以上年下の女性は、濡れた髪をタオルでふきながら隼人を睨む。
「でね、紗都子さんてダサいんですよ。なんか、私のこと警戒してるのか、潮見さんは一人娘を可愛がってるからとか、家が新築だからとか、〝離婚できない情報〟を次から次へと吹き込んでくるんです」
 彼女は含み笑いしてドレッサーの前に座り、ドライヤーで長い髪を乾かし始めた。
「でも私、そういうの、全然気にしてませんから」
 まだなにか喋り続けているようだが、ドライヤーの立てる音で聞き取れないし、聞く気もない。隼人はテレビをつけて、スポーツニュースの音量を上げた。
 休日にまでメッセージを送ってくる紗都子のことは確かに鬱陶しく思っているが、彼女が普段はその紗都子に「先輩、先輩」と纏わりついていることも、隼人は知っている。
 以前、紗都子との都合が合わなかった晩に声をかけたところ、この後輩女性はあっさりと誘いに乗ってきた。以来、時折こうして逢引きを楽しむ仲になっている。
 二十代の弾むような肉体は、一時であれば、隼人の空虚を埋めてくれた。
 サッカーのハイライトを見るともなしに眺めていると、頭の片隅に追いやっていたはずの案件が暗雲のように湧いてくる。
 退院後、母の澄子に認知症の症状が現れているらしい。
〝私が引き取るしかないと思う。夫も納得してくれてるし〟
 電話口で、姉の苑子は淡々とそう告げた。
 元々こうした事態を見込んで、近くのアパートに住んでいたのだそうだ。
 しかし、義理の、しかも認知症を発症している母の引き取りを認めるとは、姉は良き配偶者に恵まれたと言えるだろう。
 もしそれが自分の妻の千鶴子だったら、そうやすやすと納得してくれるとは思えない。
 家族の介護に関しては、未だに圧倒的に女性の負担が大きいという面もあるのだろうけれど――。
 加えて、母と娘の間には、男の自分にはよく分からない不思議な関係性があるようにも思われる。ひょっとすると、娘は母に自分の行く末を重ね、母は娘に若き日の自分がかなえられなかった理想を求めるのかもしれない。
 父との共通項など求めたいとも思わない自分にとっては、どこまでも理解できない感情だ。
 ふと隼人は、今朝がた千鶴子から散々念を押されたことを思い出した。
 花言葉診断の作成者は、やはり娘の七海だったのだそうだ。
 七海自身、業者から打診があったことに、おおいに戸惑っているらしい。
〝でも、やりようによっては、絶対いい経験になるはずよ。上手くすれば研究レポートも書けるでしょうし。あの子、経済学部を志望してるんだから、それこそぴったりじゃない。どの道、大学は受験しないといけないんだし、内申にプラスになるならやるべきよ〟
 当の本人以上に千鶴子が躍起になって、隼人を焚きつけてきた。
 数々のタイアップを手掛けてきている自分なら、これくらいのことはすぐにまとめられる。だが、最近隼人の仕事も立て込み、七海とも充分に話をする時間もとれぬまま、結局は月を跨いでしまった。
 それに、この件に対し、隼人は今一乗り気になれない点がある。
 心のどこかに引っかかっている屈託に、しかし、隼人自身が失笑した。
 くだらない。
 花言葉診断なんて、ただのお遊びなのに。
 けれど偶発的に現れた診断の花言葉が、今尚隼人の胸を泡立たせる。
 ツリフネソウの花言葉は、「私に触らないでください」――。
「ちょっと、潮見さん、聞いてます?」
 突然、耳元で声をかけられ、隼人はぎくりとした。
 いつの間にか、バスローブを羽織った紗都子の後輩が隣に座っていた。シャンプーの香りと共に、若い肉感的な熱気が迫ってくる。
「ねえ、もう一度……」
 しなだれかかられそうになり、隼人は反射的に立ち上がった。
「悪い。俺、帰るわ」
 若い女性の顔に、呆気にとられた表情が浮かぶ。
「支払いは済ませとくから、君はチェックアウトまでゆっくりしているといいよ」
 小さな子供を相手にするように、隼人は女性の頭に手を置いた。
「俺、一人娘が可愛いし、家も新築でローンがあるから、帰らないとまずいんだよ」
 頭を一撫でして、踵を返す。
「……だっさ!」 
 背後で吐き捨てるような声が響いたが、隼人は振り返らなかった。
 ロビーで支払いを済ませ、タクシーを回してもらう。ラウンジのバーでは、自分同様不倫カップルと思われる歳の離れた男女が、ワイングラスを手に顔を寄せて囁き合っていた。
 表に出た瞬間、凍えるような寒さが頬を打つ。隼人はタクシーの後部座席に滑り込むと、行き先を告げて目蓋を閉じた。
 もうあの娘とは遊べないだろうが、別段、胸は痛まなかった。
 紗都子が彼女を牽制した理由とまったく同じではないが、隼人に離婚をするつもりはない。
 特に七海が成人するまでは、父親の役目を全うすべきだと考えている。浮気がばれて千鶴子と揉めたときも、最終的にはそう確認し合った。
 俺は、女に本気になって、家庭を壊した親父とは違うんだ――。
 それなのに、妻以外の女性を求めてしまう自分をとめるつもりもない。
 己の矛盾に突き当たるたび、隼人はいつも投げやりに思う。
 だって、そんなものだろうよ。
 自分は〝愛〟の暗示にかからない分、少しばかり正直なだけだ。
 反面、家庭を守るためなら、千鶴子に他の男がいても眼をつぶるつもりでいる。それが、できてしまった子供への、親の責任の取り方というものだろう。
 ならば、子の親への責任の取り方は――?
 認知症の症状が出ているという母のことが再び脳裏に浮かび、隼人は口元を引き締めた。
 この先病気が進行していけば、母は姉のことも自分のことも分からなくなってしまうのだろうか。金銭的な援助は無論請け負うとしても、今以上に年老い、朦朧としていく母と向き合う勇気が、隼人には持てそうにない。
「私に触らないでください」
 なぜかツリフネソウの花言葉が脳裏に浮かび、隼人は振り払うように首を振った。

 週末、隼人は助手席に娘の七海を乗せて、約一か月ぶりに東京と神奈川の境の町へ向かってセダンを走らせていた。
 浮気相手をホテルのスイートルームに残して深夜に帰宅した翌朝、認知症を発症している母の様子をどこかで見にいかなければならないだろうと千鶴子に話していたところ、それなら自分もいきたいと七海が言い出したのだ。
 受験直前の山掛けを一緒にやってほしいと、以前から、従弟(いとこ)の太一に頼まれていたらしい。
「ラインでやるより直接会って話した方が早いから、パパがいくなら、ついでに連れてってよ。おばあちゃんのお見舞いもできるし」
 朝食を食べながら、七海は快活にそう言った。
 七海の申し出は、隼人にとっても悪いものではなかった。率直に言えば、母の様子を見るのも、姉から状況を聞かされるのも、気が重い。だが七海が一緒なら、苑子もいつものように延々と嫌みを言うことはできないだろう。
 道中、日頃すれ違いの多い七海とゆっくり話すことだってできる。千鶴子もそう考えたのか、別段、七海の同行に異議を唱えようとはしなかった。
 今、七海は隼人の隣でスマートフォンをいじっている。きっと、太一とラインのやり取りをしているのだろう。
 少し俯いた白い横顔に、ストレートの長い黒髪がこぼれている。我が娘ながら、七海はなかなかの美少女だ。成績も優秀で、生徒会では役員を務め、担任の話によればクラスでの人望も厚いらしい。
 その上、出来の悪い従弟の面倒まで見るというのだから、七海は自慢の娘に値する。
 休日の十六号線は相変わらず渋滞していたが、隣に七海がいるせいか、隼人は先月のような苛立ちは覚えなかった。
「太一の奴、中三にもなって、相変わらず七海に甘えてるんだな」
 声をかけると、七海が顔を上げた。
「なんか太一君、今、大変みたいなの。おばあちゃんの具合、あまりよくないんでしょう?」
「ああ……」 
 隼人は前を見たままで応じる。
 七海ははっきりと言葉にしなかったが、一人息子の初めての受験直前にいきなり病気の母を迎えることになった姉の家は、恐らくかなり混乱しているに違いない。
「だったら、山掛けくらい、一緒にやってあげようかなって思って」
「七海は優しいな」
「そんなことないよ。それに、私、そういうの、結構得意だから」
 確かに七海は、幼い頃から少し勘の鋭いところがあった。
 頭の良さだとばかり思っていたが、ひょっとすると、それだけではないのかもしれない。
 信号でとまった際、隼人は七海の横顔をまじまじと眺めてみる。ふと、七海のスマートフォンの画面にツイッターのタイムラインが見えた。
「そう言えば、ツイッターで流行ってる花言葉診断の作成者、七海だったんだってな」
 いい機会だと思い、隼人は切り出してみる。
「ママから聞いたの?」
 画面をタップしていた指先を、七海はぴたりととめた。
「そうだよ。ママ、凄く驚いてたぞ」
「そう」
 七海はふいと横を向く。その頬に、珍しく暗い影が差した気がした。
「でも、ママもよくやるよな。アカウントの特定なんて、正直、アウトだろう」
 隼人は気を回したつもりだったが、七海はなんでもないように首を横に振る。
「そうでもない。そんなの、友達同士でもやってるから」
「そうなのか」
「そうだよ」
 娘の物分かりのよさに、隼人はいささか拍子抜けした。そんな隼人をちらりと見て、七海が少し低い声でつけ加える。
「だから、皆、鍵つきの裏アカ持つんだもの」
 鍵つきの裏アカ――承認者にしかツイートが表示されない、非公開アカウントのことだ。
 それでは、七海も裏アカを持っているのだろうか。
 隼人は尋ねてみたくなったが、七海からすれば、その詮索のほうがよっぽど「アウト」なのかもしれない。
「なかなかよくできた診断じゃないか」
 代わりに、隼人は千鶴子に課せられた本題に入ることにした。
「パパもハッシュタグ見てみたけど、利用者の数も大変なものだしな。たいしたもんだよ」
「本当?」
 隼人の称賛に、七海がいつもの明るい表情を見せる。
「本当だとも。コンテンツを生める人間は強いぞ」
 それは、隼人の本音だった。
 長年代理店で仕事をしていると、本当にそう思うのだ。一見、どんなに遊び半分なものであっても、なにかを生み出せる人間は強い。
 単に金銭を回しているだけの、自分たちのようなスノッブな連中とは違う。
 無からなにかを生み出せる人間は、組織に頼らず、一人で生きていける。
 それこそが真の力だ。
 この世で本当に信じられるのは、己の才覚だけなのだから。
「でもあれ、色々な本で調べたことを、適当にまとめただけだけど」
「それを編纂って言うんだよ。編纂だって立派なコンテンツだ。七海がいなければ、本の資料は診断にもならなかったし、あんなに大勢の人たちに利用されることだってなかった訳だろう?」
「それは、そうだけど……」
 いささか所在無げな七海の背中を押すように、隼人は頷いてみせた。
「コンテンツを生み出せるようになれば、どこへいっても生きていけるぞ」
「そうなれば、パパも安心?」
「そうだな。七海には、自立した人間になってもらいたいからな」
 千鶴子のように、陰でこそこそ人の詮索ばかりしている、つまらない女じゃなくて――。
「七海、生花店からオファーのリプライが入っていただろう。あれ、パパが間に入ってまとめてやろうか」
「いいの?」
 七海の声が思いのほか興奮したように響いたので、隼人は我知らず嬉しくなった。
「ああ、もちろんだよ。パパはタイアップのプロだぞ」
 この件に関しては、千鶴子ばかりが乗り気だったはずなのに、いつの間にか隼人の中の拘泥も消えていく。
 でもそれは、千鶴子のように、七海の内申を気にしてのことではない。七海にもっと広い世界を見てほしいと感じたからだ。
 大手広告代理店に新卒入社し、上司や顧客の受けもよく、仕事を卒なくこなす自分が、陰で女たちから〝優良物件〟と呼ばれていたことを隼人は知っていた。
 七海には、打算尽くで自分に近づいてくる女たちのようにはなってほしくない。絶対に、自分のような男と結婚してほしくない。
〝ステータス〟なんかとは無関係の場所で、自由に羽ばたいていってほしい。
「七海、ママみたいにはなるなよ」
 思わず口に出して告げていた。
 七海はハッと眼を見張り、それから黙って静かに微笑んだ。
 
 有料駐車場に車をとめて、姉のアパートを訪ねたとき、隼人は心底、七海に同行してもらってよかったと感じた。
 もし自分一人だったら、十分といられずに、逃げ帰ってしまったかもしれない。
 休日も営業があるという、町の小さな不動産会社に勤める義兄はいなかった。それでも、隼人が暮らす一軒家に比べるとアパートは狭く、玄関先でも、居間でも、どの部屋に入っても人との距離が近い。
 案内された畳敷きの部屋で、母の澄子は炬燵に入ってぼんやりとしていた。
「お母さん、隼人と七海ちゃんがきてくれたよ」
 苑子が声をかけても、澄子は曖昧に頷いただけで、大音量でかかっているテレビから眼を離そうとはしなかった。唯一反応があったのは、隼人が手土産に持ってきた、シュークリームを見たときだけだ。
 すぐさまシュークリームに手を伸ばした澄子を、苑子ももう、止めようとはしなかった。たった一か月でこんなに変わってしまうのかと、隼人はなんだか恐ろしくなる。
 むしゃぶりつくようにシュークリームを食べている母から、隼人は思わず眼をそらした。
「お母さん、ずっとあんな感じなの?」
 七海が太一の部屋にいってしまったので、隼人は居間で苑子と向き合った。
「今日はあんまり調子がよくないみたい。具合がいいときは、いきなり思い出話とか始めたりするんだけど」
 お茶を淹れながら、苑子が頷く。
「あんたがくるから、少しはカンフル剤になるんじゃないかと思ったんだけどね」
 隼人には、母が自分を認識したのかどうかさえ分からなかった。
「俺じゃ、無理なんじゃないの」
 気づくと、投げやりに告げていた。自分の声が酷く暗く響いたことに、隼人自身がハッとする。
「どうして? 昔からお母さんは、あんたのこととなると、途端に眼の色が変わったもんだけど」
 苑子が湯呑みをテーブルに置いたが、茶渋が染みついたそれを、隼人は手にする気になれなかった。
 ガスストーブの置かれた居間は、天井が低く息苦しい。ストーブの上には、よれよれの洗濯物がいくつも吊るされていた。
「お母さんはね、あの家を出たとき、本当は私のことも連れていきたくはなかったのよ」
 溜め息交じりに苑子が漏らす。
「でも、私はあんたみたいにうまくやれなかったから」
 隼人は黙って、湯気を立てる湯呑みを眺めた。
「あんたは、私と違って、物分かりのいい子だったものね……」
 お茶を啜り、苑子が隼人を見つめる。
「今日は、七海ちゃんにまできてもらっちゃって悪かったわね。わざわざ、うちのバカ息子のためなんかに」
「いや、七海がきたいって言ったんだよ」
「七海ちゃんも、本当にいい子よね」
 苑子の口元に、自嘲めいた笑みがのぼった。
「私の場合は自業自得だけど、太一にだけは、時々悪いことをしているような気分になる。子供って、生まれてくる家を選べないもんね」
「治療費のことだけど……」
 隼人が言いかけると、苑子が強く首を横に振った。
「今更、あんたを当てにするつもりなんかないから」
「でも、大変なんだろ」
「それじゃ、お母さんを、あんたの新築に引き取れるって言うの?」
 苑子に見据えられ、隼人は言葉に詰まる。
「でしょ? だから、気にしないで。お母さんのことは、私がなんとかする」
 言い切られ、隼人は唇を引き結んだ。
 結局は同じじゃないか。
 胸の奥底から、黒い不快感が湧いてくる。
 つまらない意地を張り、慰謝料も養育費も受け取らなかった愚かな母のせいで、散々苦労をしたくせに、姉もまた同じ轍を踏もうとしている。
 甲斐性なしの男と結婚し、こんなボロアパートで暮らしているくせに――。
 いつしか隼人は、毛玉だらけのくたびれたセーターを着ている姉を冷たく睥睨していた。
「そんな眼で見ないでよ」
 苑子がふっと苦笑する。
「あんたは呆れているかもしれないけれど、これは私が選んだことだから」
 ならば、好きにすればいい。
 隼人は姉から眼をそらした。
 わざわざ苦労を背負い込みたがる気持ちなんて分からない。
 そもそも他人の気持ちなんて、分かりうるとも思っていない。
 だったら自分は、差し出された要望や提案を、できる限り飲むだけだ。
「隼人はさ、一度も私を〝お姉ちゃん〟って呼んでくれたことがなかったよね」
 苑子の言葉に、隼人は小さく息を呑む。姉がそれに気づいていたとは思わなかった。
「お姉ちゃんらしいこと、なんにもしてあげられなかった私が、一番悪いんだろうけど……」
 今まで見たことのない寂し気な表情で、苑子がこちらを見ていた。
「隼人と一緒にいると、自分がどんどんバカみたいに思えてきて、正直、たまらなかった」
 隼人は、いい子だね――。
 物心ついたときからそう言われた。
 父からも、母からも、再婚相手からも。
「お父さんとお母さんが……、私が世界で一番大好きだった二人があんなことになっても、あんたはケロッとしてたもんね。こんなに悲しいのが自分だけなのかって思うと、やりきれなかったよ」
 責めるような姉の口調に、隼人は視線を伏せる。
 それでは、姉と一緒になって、自分が泣いたり騒いだりしたところで、事態はなにか変わっただろうか。
「隼人は小さいときから物分かりがよかったけど、でも、それって本当は、誰にも関心がなかったからなんじゃないの? お母さんと私が家を出たときだって、あんたは涙一つ見せなかったもんね」
 眼を据わらせて、苑子が続ける。
「ここにだって、単に仕方なくきてるだけでしょう? あんたにとっては、自分のも含めて、家族なんてただの世間的な義務でしかないんじゃないの?」
 矢継ぎ早にぶつけられた問いに、隼人は答えようとしなかった。どこを探しても、答えなど見つからないと知っていたからだ。
 ガスストーブが立てる微かな音だけが、狭い居間の中に響く。
「……せめて、否定くらいしなさいよ」
 長い沈黙の後、根負けしたように苑子が呟いた。
「お母さんがあんたのことを分からなくなったら、もう本当に、気を使わなくていいよ」
 心底、そう思っているのだろう。
 姉の眼差しに、いつもの子供じみた僻みの色は浮かんでいなかった。
「大丈夫。覚悟はできてるから」
 吹っ切れたように、苑子がさばさばと告げる。
「私はね、昔から、自分には弟(きょうだい)なんて、いないものだと思っていたよ」
 隼人は最後まで、なにも言葉を返すことができなかった。
 結局手をつけなかった湯呑みが、いつの間にか冷たくなっている。
「じゃあ、俺、そろそろいくよ」
 立ち上がった隼人を、苑子も引き留めようとはしなかった。
 居間を出た瞬間、廊下に立っていた七海とぶつかりそうになる。
 聞かれてたのか――?
 一瞬、冷やりとしたが、七海は屈託のない表情で隼人を見上げた。
「パパ、私のほうはもう終わったよ」
 七海の背後で、太一がぼんやりとしている。相変わらず体が小さく、髪もぼさぼさで、身も心も弱そうだ。七海と並んでいると、文字通り月とスッポンだった。
「太一君、受験、頑張れよ」
 形だけ声をかけ、隼人は七海と一緒に姉のアパートを後にすることにした。
 帰りがけに様子を見にいった母は、早々に寝床に入ってしまっていた。
 夕暮れ時の鎌倉街道を走りながら、隼人は頭の片隅で、もうこの町にくることはないのではないかと考えた。
〝あんたにとっては、自分のも含めて、家族なんてただの世間的な義務でしかないんじゃないの?〟
 まだ耳の奥に、姉の詰問が残っているようだった。
「ねえ、パパ。あの公園に寄っていこうよ」
 助手席でスマートフォンをタップしていた七海が、唐突に声をあげる。
「ほら、高台にある、景色のいい公園」
 咄嗟に返事ができなかった隼人に、七海は畳みかけてきた。
「よく覚えてるな」
 思わず隼人は、感嘆の声を漏らす。七海を公園に連れていったのは、もう随分と昔のはずだ。
「覚えてるよ」
 スマートフォンを上着のポケットに突っ込み、七海が笑みを見せる。
「だって、パパ、あの場所好きでしょう?」
 七海の勘の鋭さに、再び冷やりとした。隼人自身が端から拒絶している他人の気持ちに、七海は妙に敏(さと)いところがある。
 だからこそ、ああも人の気持ちをとらえる診断を作れたのかもしれない。
 ふと隼人は、あの診断に作成者である七海の名前を入れたら、どんな結果が出るだろうと思いを巡らせた。
「あそこから夕焼け見たら、綺麗そう」
「そうだな」
 隼人は七海の提案に従い、一方通行の細い道に入っていった。
 駐車場に車をとめて外に出ると、強い北風が吹いていた。
「結構、寒いんじゃないのか」
 隼人は声をかけたが、七海は弾むような足取りで、急な階段をどんどん上っていく。コートの襟を掻き合わせ、隼人もその後に続いた。
 階段を上りきり、高台に立つと、想像以上の光景が眼の前に広がっていた。
「わあ、すごい!」
 七海が柵から身を乗り出す。
 風が強く、よく晴れた冬の日の夕景は美しい。澄んだ空気の中、丹沢山地の山並みが、残照に映えてくっきりとその輪郭を浮き立たせていた。
 手前の丘には寒さに震える鉄塔が居並び、麓の団地の窓に明かりが灯り始めている。この窓の奥に、昔の母と姉のような家族が身を寄せ合って暮らしている様子を、隼人は密かに思い浮かべた。
 自分は結局、その中に入ることは最後までできなかった。
 虚しい思いが、隼人の心の表面を撫でていく。
 頭上の空は群青なのに、山並みを浮き立たせる夕映えは燃えるように赤い。二つの色が拮抗し、推移していく西の空に、小さなジェット機がライトを点滅させながら静かに飛んでいた。
「ねえ、パパ、あっちにはスカイツリーが見えるよ」
 七海が北の方角を指さす。
 残照の消えかけた空の下に、マッチ棒のようなスカイツリーと、星屑を散らしたような都心の明かりが見えた。
「そっちは崖が急だから、気をつけろよ」
 北風に髪をなぶられながら、隼人はコートのポケットから煙草を取り出す。何度かライターのフリントホイールを弾いたが、風にあおられ、なかなか火がつかなかった。
 ようやく火がつき、煙草を吸い込む。
 微かな苦みを伴う煙が、空っぽの胸の奥を満たしてくれた。
 健康に気を使っているはずの自分が煙草をやめられないのは、埋めずにはいられない空白と、吐き出さずにはいられない鬱屈が、同じ場所に溜まっているからかもしれない。
 何気なく視線を上げ、隼人は凍りついた。
 いつの間にか、七海が朽ちかけた柵を乗り越えている。
「七海、なにやってるんだ」
 大声で叫んだ隼人を、七海が振り返る。その頬に、ちらりと悲し気な笑みが浮かんだ。
 両腕を広げた七海の長い黒髪が、大きく翻る。
「七海っ!」
 隼人の眼の前から、七海の姿が消えた。

 集中治療室の前のベンチで、隼人は祈るように両手を握りしめていた。
 硬く閉ざされた鉄扉の上に、手術中の赤いランプが点灯している。母が入院していた病院をこんな形で再訪することになるとは、夢にも思っていなかった。
 電話で医師の指示に従いながら、崖の下に落ちた七海を後部座席に乗せて、隼人は必死で車を走らせた。そのほうが、救急車を待つよりも早かった。
 緊急手術が始まってから、既に一時間近くが経つ。
 やがて、廊下を走る音が響き、髪を振り乱した千鶴子が現れた。
「七海は、無事なのっ?」
 ベンチから立ち上がった隼人の腕を、千鶴子が凄い力でつかんでくる。化粧気のない千鶴子の顔は、血の気が引いて真っ青だった。
 崖の下に横たわっていた七海はほとんど外傷がなかったが、その後の検査で、大腿骨の複雑骨折と、脳内出血を起こしていることが分かった。今は脳内に溜まった血液を抜くための外科手術が行われている。
 隼人の説明に、千鶴子は顔をひきつらせた。
「どうしてこんなことになったのよっ!」
 力一杯胸を殴られる。
「どうしてっ!」
 隼人自身、どうしてこんなことになってしまったのか分からない。
「事故だ、よ……。公園の柵が腐っていて、そこから、誤って落ちた……」
 言いかけて口を噤む。
 最後に見た七海の口元に悲し気な笑みが浮かんでいたことを思い返し、隼人は茫然とした。
 一体なぜ、こんなことになってしまったのだろう。
 力なくベンチに腰を下ろした隼人を前に、千鶴子もそれ以上のことを聞いてこようとはしなかった。ただ、ベンチに並んで腰掛け、祈るような気持ちで手術が終わるのを待ち続ける。
 隼人も千鶴子も、どちらも口をきかなかった。
 じりじりとする時間がようやく終わり、手術中の赤いランプが消えると、真っ先に千鶴子が立ち上がる。隼人も急いで後に続いて病室に入った。
 たくさんの管をつけられた七海は、パーティションの向こうで眠っている。
命に別状はないという主治医からの言葉を聞いた瞬間、千鶴子が膝から崩れ落ちた。隼人は咄嗟に手を伸ばしたが、千鶴子はそれにすがろうとはしなかった。
 七海が眼を覚ますまで、隼人は千鶴子と共に待合室で待機することになった。夜の待合室はがらんとしていて、非常階段の緑のライトが妙に眼に染みる。
「ねえ」
 缶コーヒーを買っていくと、千鶴子が蒼ざめた面(おもて)を上げた。
「私たち、もう別れましょう」
 乾いた声で告げられ、隼人は一瞬言葉に詰まる。
「……そんなこと、今、話すことじゃないだろう」
「今だからよ!」
 隼人を遮り、千鶴子が大声をあげた。
 こんなふうに激昂する千鶴子を見るのは初めてのことだ。気圧されながらも、隼人は缶コーヒーをテーブルの上に置く。
「せめて、七海が成人するまでは夫婦でいようって、二人で決めたじゃないか」
「あなた、まだなんにも分かってないのね」
 缶コーヒーを押しやって、千鶴子が溜め息をついた。その頬に、今まで見たことのない冷めた笑みが浮かぶ。
「夫婦って、そんなふうに決めてなるものじゃないでしょう」
 今更そんなことを言い出す千鶴子のことが、隼人は理解できなかった。
 無言で立ち尽くす隼人を前に、千鶴子は諦めたように首を横に振る。
「やっぱり、あなたには分からないのね」
 なにをだ――。
 じわりと隼人の中で、暗いものが頭を持ち上げる。
 散々俺を値踏みしてきたくせに。ステータスで俺を選んだくせに。
 そのお前が、今更なにを語るのか。
「私に子供ができたとき、偶然だって言ったけど、あれ、嘘だから」
 だが次に千鶴子の口から放たれた言葉に、隼人は耳を疑った。
 唖然とする隼人に、千鶴子が寂しい笑みを向ける。
「私、あなたのコンドームに、全部針で穴をあけたんだよ。それが功を奏したのかどうかはよく分からないけど、私、決して偶然妊娠したわけじゃないから。どうしてもあなたと結婚したくて、必死だったの」
 隼人はにわかに、千鶴子の言葉を信じることができなかった。
 それだって、自分が〝優良物件〟だったからではないのか。
「女にとって出産はそれほど甘いものじゃないよ。私は本当に命がけだったの。あなたにとっては、みっともない話でしょ。一生、打ち明けるつもりはなかったんだけれどね……」
 千鶴子が立ち上がり、そっと隼人の手を握る。
「七海が花言葉診断なんかをやって、あんなにフォロワーを集めていた理由が、私には分かる。あの子は私と一緒よ」
 隼人の手を握る千鶴子の指に力がこもった。
「あなたに執着している限り、私はあの子の母になれなかった」
 痛いほど握っていた指が、はらりと解ける。
「でも、今回のことでよく分かった。私にとって、一番大事なのはあの子。あなたじゃない。もうこれ以上、あの子に寂しい思いはさせない」
 千鶴子は真剣な眼差しで、きっぱりと告げた。
「七海は私が引き取ります」
「ちょっと待てよ」
 思わず声を荒らげる。
「どうして、そんなことになるんだよ。こういうときこそ、俺たちが力を合わせて……」
「事故じゃないでしょう!」
 千鶴子に遮られ、隼人は言葉を失った。
「あの公園、私もあなたと一緒にいったことあるもの。あんなところ、わざとじゃないと落ちたりしない。事故じゃ、ないよね」
 念を押され、全身から血の気が引いていく。
 そうだ――。事故では、なかった。
 夕景を背に、七海は両腕を広げて自ら後方に倒れていった。
 眼の前に、長い黒髪が翻る。
 隼人は両手で顔を覆った。
「母親をバカにしている父親を、娘が本気で信じるとでも思った?」
 千鶴子の声が、まったく知らない女のように響く。隼人は顔から手を外すことができなかった。
〝自分をバカにしている男からの金は要らない〟
 そう言って、家を出ていった母。
 自分は知らぬうちに、家庭を壊した父と同じことを、千鶴子や七海にしていたのか。
「あなたはずっと、私の夫でも、七海の父でもなかったから」
 千鶴子が静かに続ける。
 隼人は顔を覆ったまま、ずるずるとその場にうずくまった。どのくらいそうしていたのか分からない。また、新しい患者が担ぎ込まれたのか、しんとした待合室の向こうで、救急車のサイレンが聞こえていた。
 やがて細い指先が、隼人の肩にかけられた。
「とりあえず、私がここに残るから、あなたは一旦家に帰ってあの子の着替えを持ってきてくれる? あの子の部屋の箪笥の一番上の抽斗に入ってるものを、そのまま持ってきて。私、あんまり慌てて、なにも持たずにここへきちゃったから」
 顔を上げれば、千鶴子が冷静な眼差しで自分を見ていた。
 かろうじて頷き、隼人は立ち上がる。
 表へ出ると、痺れるような寒さが全身を打った。北風に向かい、隼人は暗い駐車場を歩く。
 なにかが足元をよぎった気がした。眼を凝らせば、己の黒い影法師が揺れている。
 天頂に、冴え冴えとした上弦の月がのぼり、その光によって影ができているのだった。
 お前のなにがいけなかったのか。
 月明かりが生んだ影法師が、無言で問いかけてくる。
 弟(きょうだい)などいなかったと語った姉。
 夫でも、父でもなかったと告げた妻。
 分かるものか。分かられてたまるか――。
 隼人の脳裏に、夕闇に紛れていく鉄塔の姿が浮かぶ。決して互いに近づけず、ただ孤独に立ち尽くす。
〝あんたにとっては、自分のも含めて、家族なんてただの世間的な義務でしかないんじゃないの?〟
 姉の声が、再び耳の奥で木霊する。
 だって、仕方がないじゃないか。
 自分は姉とは違う。
 物心がついたときから、父と母は既に言い争ってばかりいた。
 隼人には、仲が良かったときの両親の記憶がない。苑子が壊れてしまったと嘆き悲しむ家族の形を、そもそも隼人は覚えていない。
 初めから壊れかけていたものが失われたところで、姉と同じように嘆くことなどできなかった。
 それに、あのとき自分を置いていったのは、母と姉のほうだったじゃないか。
 置いていくなと、泣いて縋ればよかったのか。
 それを拒んでいたのは、当の母だったのに――。
 訪ねていくたびに母が自分を大歓迎してくれたのは、捨てた自覚があるからだ。
 隼人は幼いながらに母の心を読んで、その要望を受け入れた。
〝いい子だね〟〝いい子だね〟
 それは大人たちにとっての〝都合がいい子〟という意味だ。
 あのときから自分は、誰にも寄り添えない鉄塔になった。
 家族なんて、血がつながっているだけの他人だと思わなければ、到底やってこられなかった。
 でも、七海だけは――。
〝七海が花言葉診断なんかをやって、あんなにフォロワーを集めていた理由が、私には分かる〟
 千鶴子の声が甦り、隼人は思わずポケットに手を入れた。
 スマートフォンの電源を入れ、夢中で花言葉診断のハッシュタグをたどる。
 七海はなにを思って、こんな診断を作っていたのだろう。千鶴子が分かるといった理由が、この中にあるのだろうか。隼人は思いつき、七海の名前を入力してみた。
 現れた診断結果に眼を見張る。
 ツリフネソウ――「私に触らないでください」。
 診断はランダムで、毎日結果は変わるはずだ。けれど、こんな偶然があるだろうか。
 震える指先で、隼人は自分の名前を入力した。
 ツリフネソウ――「私に触らないでください」。
 最後に千鶴子の名前でも試してみた。
 ツリフネソウ――「私に触らないでください」。
 隼人の唇から、白い息が漏れる。
 何度試してみても、結果は同じだった。
 偶然なんかじゃない。
家族全員の名前の診断結果を、七海はそう固定していたのだ。
〝莢一杯に種を溜め込むツリフネソウは、少し触(ふ)れられただけで爆(は)ぜてしまう。属名のimpatiensは、ラテン語の「耐えられない(inpatient)」という意味に由来する……〟
 解説の隣に添付されているのは、硝子細工のように繊細な花の画像だった。細い茎の先、小さな船を思わせる花は、頼りなく宙に浮いている。
 薄いピンク色の花弁は、七海が自分のアイコンに使っていたのと同じものだ。
 いつしか、隼人の身体ががくがくと震え出した。
 幼い頃の己と同様に、七海もまた、口に出せない思いを心のどこかにずっと溜め込んできたということなのか。
 七海はきっと、今日の姉の詰問を聞いていたに違いない。
否、それ以前に、七海の成人までの時間を「長い」と考えていた父親の本音を、敏い心でひりひりと感じていたのかもしれない。
〝属名のimpatiensは、ラテン語の「耐えられない」という意味に由来する……〟
 小さな莢一杯にパンパンになるまで溜め込まれた種が、ある日突然、些細な接触で爆ぜるように、七海の身体は隼人の眼の前で落ちていった。
「私に触らないでください」――。
 診断を繰り返すうちに、隼人の瞳に熱い涙が湧いた。
 初めて気づいた。
 鉄塔と鉄塔の間をかろうじてつないでいた電線には、こんなにも激しく苦しい血潮の如くの感情が流れていたのだと。
 己の心に蓋をするあまり、隼人は人の心の声を聞くこともできなくなっていた。
 自分を捨てた母の前でも流れなかった涙が、次から次へと溢れ、ぼたぼたと暗い地面に散っていく。
「七海……」
 嗚咽と共に、かすれた声が漏れた。
 冷たい月明かりに照らされ、隼人は一人、いつまでも泣き続けた。

                第五話「ツリフネソウの姉弟」完
                最終話「カリフォルニアポピーの義妹」に続く

 
 

バックナンバー  1...7891011 

作品について

著者プロフィール

古内一絵(ふるうち かずえ)

1966年東京都生まれ。日本大学卒。映画会社勤務ののち、2010年『快晴フライング』で第5回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、11年に同作でデビュー。2017年『フラダン』で第6回JBBY賞(文学作品部門)を受賞。
主な著作に『マカン・マラン - 二十三時の夜食カフェ』、『十六夜荘ノート』、『キネマトグラフィカ』などがある。

作品概要

兄弟姉妹――。それは、一番近くにいる謎。
書店員から圧倒的支持を受ける作家による、人間の内面を描き切る連作短編。

おすすめ作品

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟

カリフォルニアポピーの義妹(前篇)

古内一絵(ふるうち かずえ)

悪夢か現か幻か

第12回 ハンカチーフ

堀真潮(ほりましお)

悪夢か現か幻か

第11回 公園の少女

堀真潮(ほりましお)

悪夢か現か幻か

第10回 苺狩り

堀真潮(ほりましお)

ページトップへ