キノノキ - kinonoki

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2018年 08月

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「不機嫌なナビ」(滝沢朱音)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

 義父の葬儀を終えたあと、なぜか妻はさっぱりとした顔をしていた。 「大丈夫かい、疲れただろう」  葬儀場を出て、助手席に座る妻にそう声をかけると、妻は首を横に振った。 「いいえ。あなたこそ……いろいろとありがとう」  や […]

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「視線」(梨子田歩未)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

「目は何色ですか?」  そう問われ、男はまばたきをした。  男は先生の顔に目をやるが、ろうそくが揺らめく薄暗い小部屋の中ではよく見えない。黒い壁に囲まれた部屋はどこか独房を思わせた。  先生は少し笑った。 「こう見えて私 […]

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「ともだち」(恵誕)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

 ぽとり、ぽとり。抱えた膝に涙が落ちる。  ふと、頬に「何か」があたるのを感じ目をあけた。  見ると、妖怪が口をとがらせ、ふー、ふー、とあたしの頬に息を吹きかけていた。  心臓がぎゅっと固くなる。  そしてまたひと粒、涙 […]

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「けんけん」(長野良映)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

 古林(こばやし)はベンチに腰を下ろした。かすみが隣にちょこんと座る。相当酔っていたが、夜風がほどよく当たって心地よかった。隣から甘い香りが漂ってくる。彼女は白く細い肩に紺のカーディガンを羽織り、微笑んでいる。光のオーラ […]

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「金縛(かなしば)の目」(行方行)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

 ──あいつは、いまなにを。  駅前のスクランブル交差点で躓いたとき、唐突に金縛のことを思い出した。  大学時代の友人のあだ名だ。  金縛は、大きな横断歩道の中央で、よく金縛りに遭った。みんなで歩いているとひとりだけ足を […]

世にも小さな ものがたり工場 表紙

2018年08月31日

「ある部屋」(髙山幸大)

世にも小さな ものがたり工場

ショートショート大賞優秀賞受賞者

 誰もいない部屋をじっと眺めている。  「本当に現れるのか?」  もう何時間待っただろうか。このライブ配信から目を離すことができず、僕はただただパソコンのモニターを見続けている。  カーテンから透ける街灯りでテーブルとイ […]

緑 表紙

2018年08月28日

第10回

小説

東 直子(ひがし・なおこ)

「あった、あった、見つけたよ。捨てられたんじゃなかった、物置きにおしこめられてただけだった」  佐和子が不必要になった物を、とりあえず庭の物置き小屋に入れていたことを思い出した青が、敬の部屋にあった炬燵机を探し出したのだ […]

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟 表紙

2018年08月24日

「ヒエンソウの兄弟」後編

小説

アネモネの姉妹 リコリスの兄弟

古内一絵(ふるうち かずえ)

 兄だ。  この原稿の作者は、四歳年上の兄、祐一だ。  三兄弟妹(きょうだい)の中で唯一の昭和生まれ。  ぎりぎりゆとり世代ではなく、勉強ばかりに精を出し、母に散々世話を焼かれ、受験戦争を勝ち抜き、外資系証券会社に就職を […]

今日、終わりの部屋から 表紙

2018年08月24日

「今日、終わりの部屋から」第四回

小説

今日、終わりの部屋から

王谷 晶

・101号 管理人室 飯塚寿夫 はいはい、はいはい。居ますよ居ますよ。……おーうなんだよ、また急だないつもセンちゃんは。え? いや用事なんてねえけどさ。ま、いいや上がんなよ。どうしたいここんとこマメに顔出すけど。茶飲み友 […]

縁もゆかりもあったのだ 表紙

2018年08月24日

メロンと郷愁

エッセイ

縁もゆかりもあったのだ

こだま

 夫と食の好みが合わない。絶望的に合わない。夫は私が好むトマトやナスなどの野菜料理全般を憎み、私は夫の大好物である焼肉や唐揚げといった油ものをあまり食べない。毎日の食卓に何を並べたらいいのか、わからないまま二〇年近く経っ […]

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